少し前の話題だが、ピリスさん(マリア・ジョアン・ピレシュ)が世界文化賞の授賞式のために来日して、音楽に関するいい話を色々としてくれた。
その記事を書こうかとあれこれ思案していたら、最近、今年のギルモア音楽祭でのピリスさんの演奏音源(↓)が期間限定(12月31日まで)で公開された。
これを聴きながら少しだけ書いてみたいと思う。
♪ A Holiday Gift: Maria João Pires’ Stunning 2024 Festival Performance
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✏️世界文化賞受賞、マリア・ジョアン・ピレシュが語る「芸術家と社会」(ぶらあぼ)
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【関連記事】
《ピリスさん「高松宮殿下記念世界文化賞」受賞、おめでとう!♪》
ちなみにギルモアでのプログラムは下記。
- W.A. Mozart, Sonata No. 10 in C Major, K. 330
- C. Debussy, Suite Bergamasque
- W.A. Mozart, Sonata No. 13 in B-flat Major, K. 333
- C. Debussy, Pour le piano
- Encore: Arabesque Nº1 (Debussy)
ピリスさんが受賞した「高松宮殿下記念世界文化賞」と授賞式関連(合同記者会見と個別懇親会)の記事は下記。
✏️世界文化賞受賞、マリア・ジョアン・ピレシュが語る「芸術家と社会」(ぶらあぼ)
✏️「音楽はテクニック以前に学ぶべきことがある」レパートリーの限界を逆手に取るピアニスト、マリア・ジョアン・ピレシュ【世界文化賞】(FNNプライムオンライン)
上の記事で紹介されているピリスさんの言葉で印象に残ったことをいくつか…。
「多くの人は想像力を恐れています。想像力は変化も意味するからです。わたしたちの人生は変化しています。想像力は、誰にも損害を与えなければ常に100%前向きです。なぜなら想像力によって現実の人生を見つけることができる、本当のインスピレーションの源を見つけることができる、本当の意味で真の愛の源を見つけることができるからです」
人生は(常に)変化している。その中で「現実の人生」を見つけるためには「想像力」が必要。…こういうふうに「想像力」を考えたことはほとんどなかったように思う。
私のような定年生活の穏便な?人生も(たぶん)刻々と変化しているのだろう。その中で「想像力」をどれだけ使っているか、一度考えてみるかな…。
「現在、芸術は美術館やコンサートホールなどの閉ざされた空間の中に限定されてしまっていますが、より広く、社会全体に浸透させることがアーティストの使命だと考えています。残念ながら、今、若手の芸術家の多くは“競争(コンペティション)”によってエネルギーが枯渇し、十分に社会とのつながりを持てていない状況です」
「例えば、病院に行き、そこにいる患者と関わりを持って彼らの“苦痛”を知ること。痛みや苦しみ、争いなど、きれいごとばかりではない現実の一面に目を向けることが大切だと思います」
「演奏の場をコンサートホールに限定していると、『自分は多くの人々に喜びを与えている』という感覚に陥りがちですが、それは単なる幻想にすぎません。自らの社会の中での立ち位置を知って、“与える”だけでなく“もらう”こと――他者と対話をし、学ぶこと――の喜びを味わい、活動のバランスを取ること」
私が一部の若手ピアニストたちの演奏に感じる「物足りなさ」「内容の空虚さ」みたいなことは、こういう人生経験みたいなものの不足から来ているのかも知れない。
本当にいい演奏はその人の人間性や人格を感じるものだと思っている。それは「他者と対話をし、学ぶこと」で時間をかけて醸成されるもの…なのかも。
「コンクールばかり経験してきたピアニストは、まるでロボットのような演奏をしていると感じています。コンペティションのためだけに準備や演奏をする……結果、創造性やイマジネーション、そして作曲家に対する敬意は失われ、統一された弾き方だけが残ります。そうした人は、真の意味で楽譜を読むことができず、音楽のエッセンスを理解することもできません」
これを読んだとき、よくぞ言ってくれた!…と思った。そう、私が物足りなさを感じていた演奏は「ロボット」(か「生成 AI」)による演奏に近いものだったのだ。
でも、ピアニストを責める気はまったくない。むしろ問題なのは、そういう演奏やピアニストを高く評価するクラシック音楽界。もっと直接的に言えば「審査員」の皆さんだと思う。
最近のコンペティションの結果には、残念ながら、納得できないものが多い。
「私は、みんながただ一つ、幸せになることが必要だと考えています。それだけでいいのです。幸せになるために何かをするのか、しないのか。ここ(ベルガイシュ芸術センター)はそのために作られた場所なんです。人を傷つけることなく、環境を傷つけることなく、動物を傷つけることなく、何かを傷つけることなく、幸せを生み出すための想像力と、何かを考えるところです。いまより少しでもよくなるような世界を自分たちの想像力で創造する~そのためにベルガイシュ芸術センターは作られたものです」
音楽家(演奏家)に必要なもう一つのものが「哲学」というか「人生観」だと思う。ピリスさんの言葉がなんと美しいことか ♪
そして、ギルモア音楽祭、アンコールの「アラベスク第1番」も実に美しい ♪ 昔練習したことのある曲だが、こんなふうに弾けたらどんなに幸せだろう…(^^;)。
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