2024年5月28日火曜日

J.S.バッハ「音楽の捧げもの」とは

「J.S.バッハの全鍵盤作品を聴く」プロジェクト、次の作品は「音楽の捧げもの」なのだが、調べてみるとこれが一筋縄ではいかないことが分かった。知らなかった…(^^;)。

単なる曲集ではなく、4楽章からなる「トリオソナタ」と 2曲のフーガ(リチェルカーレ)、そして 10曲の色々なカノンが含まれている。曲順も使用楽器もあまり決まってない。「鍵盤作品」(チェンバロで弾く or 弾けるもの)は 4曲しかない。

ということで、今日はお気に入り演奏の探索の前に「音楽の捧げもの」とは…という記事を書いてみたい。まぁ、概略ではあるが…(^^;)。




バッハは 1747年 5月にフリードリヒII世(フリードリヒ大王)の宮廷を訪ねた際、大王より以下のようなハ短調のテーマを与えられ、その場で即興演奏を行なった。




そして、2〜3カ月後に追加で作曲した作品を含め、4楽章のトリオ・ソナタ(BWV1078/3)、3声(BWV1078/1)と 6声(BWV1078/2)の 2つのリチェルカーレ(フーガ)、10曲のカノン(BWV1078/4)をまとめて「音楽の捧げもの」として出版し、大王に献呈した。

曲の規模から言って、中心となるものはトリオ・ソナタと 2つのリチェルカーレということになるのだろう。


「音楽の捧げもの」はまとまった作品として、通して演奏されるものとして構想されたのか、またそうだとすると曲の順番はどうあるべきなのか、確かな説はないようだ。

楽器編成についても「トリオソナタ」の「フルート、ヴァイオリン、通奏低音」以外にはほとんど指定がない。「2つのヴァイオリンによる…」と指定されたカノン(BWV1078/4b)もあるが、もちろん他の楽器でも演奏可能だ。チェンバロ 1台で演奏可能な 4曲は、2つのリチェルカーレと 2つのカノン(BWV1079/4a, 4i)である。


下記に曲の一覧を示す。順番は「新バッハ全集」に従っている。

「:」の後は名盤の一つとして定評のある『💿バッハ:音楽の捧げもの /クイケン・アンサンブル』の使用楽器を示している。Cemb=チェンバロ、Fl=フラウト・トラヴェルソ、Vn=ヴァイオリン、Va=ヴィオラ・ダ・ガンバ。( )の中は通常の楽器編成。

  1. 3声のリチェルカーレ BWV 1078/1:Cemb
  2. 王の主題による無窮カノン BWV 1078/4g:Fl, Vn, Va
  3. 2声の逆行カノン BWV 1078/4a:Cemb
  4. 2つのヴァイオリンによる同度のカノン BWV 1078/4b:Cenb, Vn(Vn ×2)
  5. 2声の反行カノン BWV 1078/4c:Cemb, Fl
  6. 2声の反行の拡大によるカノン BWV 1078/4d:Cemb, Va
  7. 2声の螺旋カノン BWV 1078/4e:Cemb, Vn
  8. 5度のフーガ・カノニカ BWV 1078/4f:Cemb, Fl
  9. 6声のリチェルカーレ BWV 1078/2:Cemb, Fl, Vn, Va(Cemb)
  10. 2声のカノン BWV 1078/4i:Cemb
  11. 4声のカノン BWV 1078/4k:Cemb
  12. フルート、ヴァイオリン、通奏低音のためのトリオ・ソナタ(4楽章) BWV 1078/3:Cemb, Fl, Vn, Va(Cemb, Fl, Vn)
  13. 無窮カノン BWV 1078/4h:Cemb, Fl, Vn, Va(Cemb, Fl, Vn)

トリオソナタの構成は「Largo / Allegro / Andante / Allegro」。


この作品については多くの「名盤」があるようで、ネット上に紹介記事もいくつかある。(例えば→✏️バッハ / 音楽の捧げ物 BWV 1079)。

…ので、解説や比較はそちらにお任せするとして、複数の記事で評価が高かった「クイケン・アンサンブル」版をご紹介しておく。1回聴いただけではあるがなかなか上品な演奏で個人的にも気に入ったものである。

まとめて聴くにはこちら(↓)、


曲ごとに聴くにはこちら(↓)、アルバムの音源がオススメだ。




あと、オランダ・バッハ協会の音源は映像にも凝っていて、各声部の演奏の様子が分かって面白い。もちろん、演奏も素晴らしい ♪



ピアノによる演奏はほとんどないが、少し変わったものとして、コンスタンチン・リフシッツ(Konstantin Lifschitz、ウクライナ、1976 - )が、2008年(録音は 2005年)に全曲をピアノで演奏した CD をリリースしている。これがなかなか素晴らしい ♪

トリオソナタといくつかのカノンは 2台ピアノで、本人が多重録音しているようだ。編曲者の名前が書いてないので、もしかするとリフシッツ本人の編曲かも知れない。

曲順は「新バッハ全集」とは一部異なるようだ。


以下蛇足…。

参考にしている『バッハの鍵盤音楽』(→紹介記事)という本の順番(目次)で言うと、次は第17章の「《クラヴィーア練習曲集 第3部》および《同 第4部》」なのだが、第3部はオルガン曲集で第4部は「ゴルトベルク変奏曲」である。

で、「ゴルトベルク」は一番最初に記事(↓)を書いているので「済」。

《Bach.KB.BWV988:ゴルトベルクの名演奏沢山!自分の好みが分かってきた ♪》


…ということで、次は第18章の「《音楽の捧げもの》および《フーガの技法》」ということになる。ここに含まれる作品は下記。

  1. BWV1079/1 3声のリチェルカーレ
  2. BWV1079/2 6声のリチェルカーレ
  3. BWV1079/4a 2声の逆行カノン
  4. BWV1079/4i 2声のカノン(謎カノン)

  5. BWV1080 フーガの技法


出典:

📘『バッハの鍵盤音楽』(小学館、2001年、デイヴィッド・シューレンバーグ 著)

✏️音楽の捧げもの(Wikipedia)

✏️バッハ :音楽の捧げもの BWV 1079(PTNAピアノ曲事典)

✏️バッハ / 音楽の捧げ物 BWV 1079(フェブラリーのCD迷路)





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