2022年9月18日日曜日

クライバーン国際ピアノコンクールの委嘱ピアノ曲を聴く ♪

少し前から委嘱された現代ピアノ曲に、個人的に関心を持ち始めている。

今年の第16回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールでも、スティーブン・ハフの "Fanfare Toccata"(のケイト・リウの演奏)が気に入った ♪

クライバーンでは、1962年の第1回から委嘱作品を課題曲に入れるのが一つの伝統になっているようだ。最近の作品をいくつか聴いてみたが、なかなか面白い ♪


2017年の委嘱曲:アムラン Toccata on "L'homme armé"


新しい順に、今年のコンクールから聴いてみようと思う。

2022年第16回(イム・ユンチャン)の作曲家はスティーブン・ハフ。左記の( )内にはその年の優勝者を参考のために入れてある(以下同様)。

Stephen Hough: Fanfare Toccata

ピアノ:ケイト・リウ


2017年第15回(ソヌ・イエゴン)はマルカンドレ・アムラン。

Marc-André Hamelin: Toccata on "L'homme armé"

ピアノ:マルカンドレ・アムラン


2013年第14回(ヴァディム・ホロデンコ)はクリストファー・テオファニディス(1967-)という作曲家。

Christopher Theofanidis: Birichino

ピアノ:Jayson Gillham


2009年第13回( 辻井伸行、チャン・ハオチェン)は 4人の作曲家の 4作品が委嘱作品としてセミファイナルで演奏された。

実は、第11〜13回については "American Composers Invitational" 方式?というのが採用されて、4〜5曲の委嘱作品(↓)が課題曲となっている(後述)。

Mason Bates: White Lies for Lomax
Derek Bermel: Turning
Daron Hagen: Suite for Piano
John Musto: Improvisation and Fugue

下記は辻井伸行くんの演奏。とてもいい曲・演奏だと思う ♪

ピアノ:辻井伸行


2005年第12回(アレクサンダー・コブリン)は次の 5作曲家 5作品。

Sebastian Currier: Scarlatti Cadences + Brainstorm
Jennifer Higdon: Secret & Glass Gardens
Daniel Kellogg: scarlet thread
Jan Krzywicki: Nocturnals for solo piano
Ruth Schonthal: Sonata quasi un’improvvisazione

下記は、委嘱作品のベストパフォーマンス賞の演奏。この曲もちょっといい感じ ♪

ピアノ:Joyce Yang


2001年第11回(スタニスラフ・ユデニッチ、オルガ・ケルン)は下記の 4人。

C.Curtis-Smith: Four Etudes
Lowell Liebermann: Three Impromptus
James Mobberley: Give 'em Hell!
Judith Lang Zaimont: Impronta Digitale

この中で唯一知っている名前が Lowell Liebermann

ピアノ:David Korevaar


1997年第10回(ジョン・ナカマツ)は、最近名前を知ったウィリアム・ボルコム。


William Bolcom: Nine Bagatelles

ピアノ:Soyeon Lee

さて、この委嘱作品を課題曲にするというのは、第1回からずっと続いているようだが、やり方は少しずつ変わっている。簡単にまとめるとこんな感じ(↓)。

  • 1962 # 1〜1997 #10:1作曲家 1作品、セミファイナルの課題曲
  • 2001 #11〜2009 #13:5人の作曲家の作品をコンペチタが選ぶ、セミファイナルの課題曲
  • 2013 #14:1作曲家 1作品、セミファイナルの課題曲
  • 2017 #15〜:1作曲家 1作品、作曲家も審査員に、プレリミナリーの課題曲

出典は下記サイトにある "COMPETITION PROGRAM BOOK" の 60ページ。

✏️2017 CLIBURN COMPETITION(公式サイト)


…で、2001年から2009年までの 3回については、ジョン・コリリアーノの提案をきっかけに "American Composers Invitational" 方式?というのが採用された。

これは、40人ほどの作曲家を招待し、応募作品の中から 5作品を選んで、事前にコンペチタ全員に楽譜を送って 1曲をセミファイナルで演奏する曲として選んでもらう…というやり方。

1人のコンペチタにも選んで貰えなかった作品は脱落ということになる。実際に演奏してもらえるのは、その曲を選んだコンペチタがセミファイナルに残った場合…となる。


つまり、ピアノコンクールの裏で?もう一つの作曲コンクールが行われているような形なのだが、ほとんど表には出てこない。もう少し、情報を出してもいいと思うのだが…。

たまたま見つけたこの記事(↓)には、2005年第12回の様子が少し書かれている。


コンペチタ 35人全員が選んだ数が多い順ではこうなっている(↓)。
  1. Ruth Schonthal: Sonata quasi un’improvvisazione 13人
  2. Sebastian Currier: Scarlatti Cadences + Brainstorm 10人
  3. Jennifer Higdon: Secret & Glass Gardens 7人
  4. Daniel Kellogg: scarlet thread 4人
  5. Jan Krzywicki: Nocturnals for solo piano 1人

でも、セミファイナルで実際に演奏された回数(人数)でいくと…
  1. Sebastian Currier: Scarlatti Cadences + Brainstorm 5人
  2. Ruth Schonthal: Sonata quasi un’improvvisazione 3人
  3. Jennifer Higdon: Secret & Glass Gardens 2人
  4. Daniel Kellogg: scarlet thread 2人
  5. Jan Krzywicki: Nocturnals for solo piano 0人
…となって、Sebastian Currier の逆転優勝?となった。


こういう形(委嘱)で出来立てのピアノ曲が聴けるのはとてもいいと思う。

もっと多くの国際ピアノコンクールが、課題曲の「委嘱」とか「作曲コンクール」のようなものの同時開催を行なって、現代ピアノ曲の新しい「レパートリー」がどんどん増えていくと、クラシックピアノ界?ももっと活気付くのではないか?…などと素人の勝手な妄想が膨らんでしまった…(^^;)。


以下、まだ聴いていない 1993年以前の委嘱作品も含めた一覧表。ご参考まで。太字(リンク)は《鍵盤音楽史:現代》で取り上げている作曲家。


1962 Lee Hoiby: Capriccio on Five Notes
1966 Willard Straight: Structure for Piano
1969 Norman Della Joio: Capriccio on the Interval of a Second
1973 Aaron Copland: Night Thoughts (Homage to Ives)
1977 Samuel Barber: Ballade
1981 Leonard Bernstein: Touches
1985 John Corigliano: Fantasia on an Ostinato
1989 William Schuman: Chester – Variations for Piano
1993 Morton Gould: Ghost Waltzes
1997 William Bolcom: Nine Bagatelles

2001 C.Curtis-Smith: Four Etudes
2001 Lowell Liebermann: Three Impromptus
2001 James Mobberley: Give 'em Hell!
2001 Judith Lang Zaimont: Impronta Digitale

2005 Sebastian Currier: Scarlatti Cadences + Brainstorm
2005 Jennifer Higdon: Secret & Glass Gardens
2005 Daniel Kellogg: scarlet thread
2005 Jan Krzywicki: Nocturnals for solo piano
2005 Ruth Schonthal: Sonata quasi un’improvvisazione

2009 Mason Bates: White Lies for Lomax
2009 Derek Bermel: Turning
2009 Daron Hagen: Suite for Piano
2009 John Musto: Improvisation & Fugue

2013 Christopher Theofanidis: Birichino
2017 Marc-André Hamelin: Toccata on "L'homme armé"
2022 Stephen Hough: Fanfare Toccata



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