《鍵盤音楽史:現代》 7人目の作曲家は、サミュエル・バーバー(Samuel Barber, 米, 1910-1981)。優れたピアニスト、声楽家(バリトン)でもあった。
私自身は、「弦楽のためのアダージョ」(Adagio for Strings)が有名な現代作曲家…くらいの知識しかなかった。しかし、意外にも「現代音楽」要素は少なく、伝統的な作風で、新ロマン主義に分類されているそうだ。
サミュエル・バーバーは、米ペンシルヴェニア州に生まれ、6歳でピアノを、7歳で作曲を始めた。1924年、14歳でカーティス音楽院に入学。ロザリオ・スカレロに作曲を学んだ。
1936年にイタリアに留学し、同地で「弦楽四重奏曲第1番ロ短調」を作曲。のちに、この第2楽章が「弦楽のためのアダージョ」として広く親しまれることになる。
1947年、チェロ協奏曲がニューヨーク批評家協会賞を受賞。1957年のオペラ「ヴァネッサ」と 1962年のピアノ協奏曲でピュリッツァー賞を受賞。
同世代のコープランドやカーターなどとは違ってモダニズムや実験的姿勢に走らず、和声法や楽式においてかなり伝統に従っている。
バーバーの作品は豊かな旋律が特徴的で、新ロマン主義に分類され、同じくイタリアに留学した米国の作曲家ハワード・ハンソンと並んで「最後のロマンティスト」と評される。
ただし、「ヴァイオリン協奏曲」のフィナーレにおける無調や、「ピアノ・ソナタ」の中間楽章における12音など、現代的な要素も見られる。
ピアノソロ作品(とピアノ協奏曲)を年代順に並べてみた。ピアノソロ以外はグレーの文字にしてある。(出典:Wikipedia など)
- メロディ (1917)
- ラルゴ (1918)
- 子守歌 (1919)
- 3つのスケッチ (1923)
- ファンタジー (1924)
- カリヨンのための組曲 (1924)
- メイン・ストリート (1926頃)
- 2声-3声のフーガ (1927)
- 間奏曲 I(ジャンヌのために)(1931)
- 遠足(ピクニック)Op.20 (1942~44)
- ピアノ・ソナタ 変ホ短調 Op.26 (1949)
- 組曲 思い出(スーヴェニール)Op.28 (1951):ソロ、4手
- 夜想曲(ジョン・フィールドを讃えて)Op.33 (1959)
- ピアノ協奏曲 Op.38 (1961~1962)
- バラード Op.46 (1977)
ちなみに、シャーマー社というところから『バーバー : ピアノ作品全集』(2010年)という楽譜が出ているが、その収録曲は下記。
- 遠足 Op.20
- ピアノ・ソナタ 変ホ短調 Op.26
- 思い出 Op.28
- ノクターン Op.33
- バラード Op.46
- 間奏曲 第1番 (遺作)
以下、YouTube で聴いた音源の主なもの。
「遠足(ピクニック)Op.20」
ポリリズムなどが多用されていてちょっと面白い。第3曲などは美しいのだが「7:8」のポリリズムは弾けそうもない…(^^;)。下記の 4曲からなる。( )の中は「28段階難易度」。
- Un poco allegro(22)
- In slow blues tempo(19)
- Allegretto(24)
- Allegro molto(24)
「ピアノソナタ 変ホ短調 Op.26」
「現代音楽」的だが、最終楽章のフーガはちょっと面白い ♪ ピアノはケネス・ブロバーグ。2017年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール(2位入賞)での演奏。
「思い出(スーヴェニール)Op.28」(4手)
バーバー自身が友達との楽しみのために書いたピアノ連弾曲を、本人がオーケストラ用のバレエ組曲(オーケストラ版)としてまとめ、のちにそれがピアノソロ用、ピアノ連弾用に編曲された。ピアノ連弾のレパートリーとしてそれなりに人気があるようだ。
ワルツ、ショティッシュ(スコットランド舞踊)、パ・ド・ドゥ、トゥー・ステップ、ためらいのタンゴ、ギャロップ の 6曲からなる。
「夜想曲(ジョン・フィールドを讃えて)Op.33」
トリフォノフの『Chopin Evocations』という CD(ショパンの二つのピアノ協奏曲を中心にそこから「喚起」された作品を集めた2枚組CD)に収められている。
さすがトリフォノフ!素晴らしい解釈・演奏だと思う。美しい ♪
「バラード Op.46」
1977年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールのために委嘱された曲のようだ。聴き応えがあっていい感じなのだが、課題曲だけあってかなり難しそう…。
「ピアノ協奏曲」
正直なところよく分からない…(^^;)。ピアノは初演も行った John Browning。George Szell 指揮の Cleveland Orchestra の演奏。
ここからは有名な「弦楽のためのアダージョ」関連の音源。
「弦楽四重奏曲 Op.11」(1936)
「弦楽のためのアダージョ」の原曲(第2楽章)。他の楽章もなかなかいいと思う ♪
「弦楽のためのアダージョ」
グスターボ・ドゥダメル指揮ウィーンフィルの演奏。美しい ♪
「アニュス・デイ」
「弦楽のためのアダージョ」のバーバー本人による合唱曲への編曲(1967)。
「弦楽のためのアダージョ/ ピアノソロ版」
やはり、弦楽合奏に比べると物足りない。ピアノは keisuke nakagoshi という人。
それから、歌曲もたくさん作っていて、「英語圏出身の歌手にとっては古典的なレパートリーとなっている」そうだ。本人が歌った録音(↓)も残っている ♪
作詞 Matthew Arnold、作曲 Samuel Barber。で、何と!この美しいバリトンはバーバー自身…(^^)♪ 伴奏は Curtis String Quartet。
参考:『あるピアニストの一生』の田所先生のご意見。『バーバーピアノアルバム』(全音)に収録されている曲についての難易度と解説がある。
ピアノソナタについては、「20世紀のアメリカ音楽の最高峰ともされる作品。とくに終楽章は傑作と言われている」とのこと。難易度はもちろん最高の「28」で「プロ用」。
「ピクニック」の 4曲については、「上級の生徒をお持ちの先生ならば持っていると役に立ちます。…新しもの好きの生徒に使えます」と書いてある。
私も「新しもの好き」なのだが、この 4曲(難易度 19〜24)はちょっと無理かも。
出典:✏️ピアノ教材研究/ バーバー(あるピアニストの一生)
主な参考記事は下記。
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