今日から《鍵盤音楽史:現代》スタート。1人目は、アーロン・コープランド(Aaron Copland, 米, 1900-1990)。
20世紀アメリカを代表する作曲家・ピアニスト。ジャズを取り入れたり、晩年には12音技法を取り入れたりと作風は変遷しているが、素朴な民謡を取り入れた管弦楽曲「エル・サロン・メヒコ」や「ビリー・ザ・キッド」「アパラチアの春」などのバレエ音楽が有名。
アーロン・コープランドは、ニューヨーク州ブルックリンでユダヤ系ロシア移民の息子として生まれた。14歳で本格的にピアノを習い始め、15歳で作曲家を志す。
1921年、21歳のときにパリに留学しナディア・ブーランジェの弟子となる。パリ留学中にはジャズの要素を取り入れた曲を多く書いていたが、次第に一般大衆と現代音楽の隔たりを意識するようになる。
1924年に帰国して「アメリカ的」音楽を模索。1932年のメキシコ訪問をきっかけに作られた管弦楽曲「エル・サロン・メヒコ」(1936)が出世作となる。以後、アメリカ民謡などを取材・研究し、これを取り入れた簡明な作風を打ち立てる。
その中でも、「ビリー・ザ・キッド」(1938)、「ロデオ」(1942)、「アパラチアの春」(1944)などのバレエ音楽が、コープランドのスタイルとして確立された作品といえる。「アパラチアの春」は 1944年にピューリツァー賞を受賞している。
その後、再び純音楽的作品に戻り、十二音技法を用いるなど曲折の後、晩年は非常に寡作となった。
コープランドのピアノ作品一覧表(年代順)に、イベントを入れてみた。
- 楽興の時:1917
- ワルツ・カプリス:1918
- 特徴的な舞曲:1918(4手/Orch)
- 3つのソネット:1918-20
- 猫とねずみ:1920
- ムード - 3つのスケッチ:1920-21 [Jazz]
- ピアノソナタ ト長調:1920-21
※1921(21歳)〜1924 パリ留学、ナディア・ブーランジェに師事、ジャズの要素
※1924 ニューヨークに戻る、各地を旅行し民謡など取り入れる
※1932 メキシコ訪問まで「アメリカ的音楽」を模索し、アメリカ民謡など研究するも、ドイツ風の難しい音楽は受け入れられず - パッサカリア:1921-22
- 2つのブルース:1926 [Jazz]
- ピアノ協奏曲:1926 [Jazz]
- ピアノ変奏曲:1930(『管弦楽のための変奏曲』の原曲) [Jazz]
※1932 メキシコ訪問〜1936「エル・サロン・メヒコ」完成
→バーンスタインによるピアノ編曲
※その後「ビリー・ザ・キッド」(1938)、「ロデオ」(1942)、「アパラチアの春」(1944)などのバレエ音楽で、コープランドのスタイルを確立
※また「二十日鼠と人間」(1939)などの映画音楽も10作品ほどある - 2つの子供の小品:1935
- 『ビリー・ザ・キッド』組曲:1938(2pf、バレエより編曲)
- ピアノソナタ:1939-41
- キューバ舞曲:1942(4手)
- 『われらの町』からの3つの小品:1944
- 真夏の夜想曲:1947/1977改訂
- 真昼の思想:1947
- 4つのピアノ・ブルース:1948頃 [Jazz]
- ピアノ幻想曲:1955-57
- 田舎道を下って:1962(後に管弦楽編曲)
- ロデオ:1962(バレエより編曲)
- ダンス・パネルズ:1965(バレエより編曲)
- 夕べのそよ風:1966
- ハリスコの踊り:1967(2pf)
- 夜ごとの思想 - アイヴズに敬意:1972
- 宣言:1973(未完)
- 青春の舞曲:?(2pf、バレエ『グローグ』より)
コープランドのピアノ作品には、「現代音楽」的なもの、ジャズ的要素を含むもの、アメリカ音楽や各地の民謡を取り入れたもの…など多様性に富んでいる。
主要作品としては、「ピアノ協奏曲」「ピアノ変奏曲」「ピアノソナタ(1941)」「ピアノ幻想曲」などが挙げられることが多いようである。
これらは、聴き応えはあるものの、「現代音楽」的な傾向が強く、個人的にはあまり好みではないかも知れない…(^^;)?
(ピアノ:コープランド)
なお、トリフォノフが 2020年のリサイタルプログラムにコープランドの「ピアノ変奏曲」を取り入れている。
そのときの音源(↓)。
比較的気に入った作品としては、ロマン派の曲のような「ピアノソナタ ト長調(1921)」があるが、ピアノ音楽としての新鮮味はあまりないかも知れない。
現代曲風な作品の中では、パリ留学中の作品「パッサカリア」が比較的好きかも…♪
あと、「エル・サロン・メヒコ」のバーンスタインによるピアノ編曲版も、やや騒々しさはあるものの、エネルギッシュと言ってもいいかも知れず、それなりに聴けた。
「猫とねずみ」(滑稽なスケルツォ)という曲もちょっと面白いかも…♪
ピアノ作品以外では「アパラチアの春」(Appalachian Spring)が気に入った ♪
バレエ版の原曲は、ピアノを含む 13人の小管弦楽作品で 14の楽章からなっている。コープランドはのちに(1945年)8曲からなるオーケストラ用組曲に編曲している。
この中の第7曲「シェイカー教徒の賛美歌による変奏曲」が有名で、CMなどでも使われたようだ。素朴で美しい曲だ。"The Simple Gift" という名でも呼ばれる。
ピアノ編曲版もある。これもいい感じだ ♪
上のピアノ版の編曲者は書いてないが、2007年にブライアン・スタンリー(Bryan Stanley)という北米のピアニスト&作曲家が編曲した楽譜(↓)が出版されている。
(Boosey & Hawkes)
以上の主な出典は下記。
✏️アーロン・コープランド(Wikipedia)
✏️コープランドの楽曲一覧(Wikipedia)
✏️もっとも「アメリカ的」な作曲家、コープランドが魅せられたメキシコのナイトクラブの風景(J-CASTトレンド)
✏️アメリカ開拓民の暮らしを描き、大戦中に発表されたバレエの傑作《アパラチアの春》(ONTOMO)
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