《鍵盤音楽史:現代》 35人目の作曲家は、ペトリス・ヴァスクス(Pēteris Vasks, ラトビア, 1946-)。
2年ほど前に初めて聴いて(↓)ちょっと気に入った作曲家。
ペトリス・ヴァスクスはラトビアの作曲家。Pēteris Vasks はラトビア語の発音では「ペーテリス・ワスクス」に近いそうだが、日本での表記は「ペトリス・ヴァスクス」が多いようなので、後者を使うことにする。
ヴァスクスは、1946年にラトビアのバプテスト教会の牧師の家に生まれた。コントラバス奏者としてラトビアのいくつかのオーケストラで演奏した後、隣国リトアニアのビリニュスの国立音楽大学で作曲を学んでいる。
1990年代になって、ギドン・クレーメルがワスクスの作品を認めた頃から世界に名を知られるようになる。これまでに、1996年にウィーンのヘルダー賞、1997年にヴァイオリン協奏曲「遠き光」(1996-1997)でラトビア音楽大賞を受賞している。
ヴァスクスの作品は、初期はヴィトルト・ルトスワフスキ、クシシュトフ・ペンデレツキ、ジョージ・クラムらの「偶然性」の実験に負うところが多かったと言われている。
ただその後の作品は、ラトビア民謡の要素を取り入れたり、抒情的な旋律とそれを支える力強い和声などの特徴を持つ聴きやすいものとなっている。
また、テーマとしてはラトビアの美しい自然、そして自然破壊などの環境問題に関するもの、「天使の眼差し」やミサ曲などの宗教的なものなどが含まれる。ヴァスクスの次の言葉には、彼の、音楽に対する基本姿勢が表現されていると思われる。
"Most people today no longer possess beliefs, love and ideals. The spiritual dimension has been lost. My intention is to provide food for the soul and this is what I preach in my works." (Pēteris Vasks)
3つの交響曲、ヴァイオリンやチェロなどの協奏曲 9曲(残念ながらピアノはない)、6つの弦楽四重奏曲、その他多くのオーケストラ作品、室内楽、器楽ソロ曲、声楽・合唱曲など多くの作品がある。
- 1974: Music for two pianos
- 1976: Cycle
- 1977: In Memoriam for two pianos
- 1977: Toccata for two pianos
- 1978: Eine kleine Nachtmusik (A Little Night Music)
- 1980: Kantāte (Cantata) for harpsichord
- 1980: Baltā ainava (White landscape)★
- 1981: Rudens mūzika (Autumn Music)★
- 1992: Izdegušās zemes ainavas (Landscapes of the burnt-out earth), fantasy for piano
- 1995: Pavasara mūzika (Quasi una sonata) (Spring Music)★
- 2008: Zaļā ainava (Green landscape)★
- 2009: Vasaras vakara mūzika (Music for a summer evening)
- 2012: Latviešu deja (Latvian Dance)
- 2021: Dzeguzes Balss (Cuckoo‘s Voice) Spring elegy
★この 4曲は "Die Gadalaiki (The Seasons)" としてまとめられている
室内楽、ピアノを含むオーケストラ作品は下記。
- 1982 Vēstījums (The Message) for orchestra with percussion and two pianos
- 1985: Episodi e canto perpetuo for violin, cello, and piano
- 2011: Pianotrio Plainscapes for violin, cello, and piano
- 2001: Piano quartet for piano, viola, cello, and piano
YouTube にあるピアノ作品を中心に聴いた。聴き飽きない「いい音楽」に沢山出会えた ♪
内部奏法を含むやや前衛的?な曲。4楽章からなる。"II. Nocturne: Calmato" は美しい。ピアニストは Reinis Zarins。
単旋律を中心とした静謐な音楽。ピアニストは Vestard Shimkus。
途中で、上の "White Scenery" と次の 3曲は「四季」としてまとめられていて、演奏機会・録音も多いということを知った。いくつかの演奏を聴いて一番気に入ったのは Marcel Worms というピアニストの演奏。4曲の中では「春」が一番好きかも ♪
元の CD は下記。
「四季」の 4曲以外にこの曲(↓)も収録されている。
何かを訴えるようなやや激しい作品。
この曲(↑)はコロナ禍の中でヴァスクスが、ラトビアのピアニスト、レイニス・ザリンシュ(Reinis Zariņš、1985-)のために書き下ろした作品(この録音が世界初演)。作曲中にCOVID-19に感染したヴァスクスの病いの苦しみと治癒への祈りが込められている。
その他、聴いた作品。
ハープシコード:Aina Kalnciema
ピアノ:Joel Fan(上記のピアノによる演奏)
ピアノ:Diāna Zandberga
ピアノ協奏曲ではないが、ピアノ2台を含むオーケストラ曲(↓)。やや映画音楽的な印象もあるが割と好きな音楽である。
("The Message" for orchestra with percussion and two pianos)
ヴァスクスの名を世界に知らしめたという、ギドン・クレーメルに献呈されたヴァイオリンと弦楽オーケストラによる二つの作品も聴いてみた。なかなかいい曲だと思う。とくに "Lonely Angel" は好きな作品だ ♪
♪ Concerto for Violin and String Orchestra "Tala gaisma"(Distant Light)
演奏:Gidon Kremer、Kremerata Baltica
演奏:Daniel Rowland、Stift Festival Orchestra
主な参考記事は下記。
✏️ペトリス・ヴァスクス(Wikipedia)
✏️PĒTERIS VASKS(Schott Music)
✏️PĒTERIS VASKS 作品リスト(NAXOS)
0 件のコメント:
コメントを投稿