2022年3月6日日曜日

随想:ウクライナと国際ピアノコンクールなど

ウクライナでのロシア軍の暴挙は目に余るものとなっている。世界的な大惨事を起こしかねない原発攻撃を行い、一般市民の住む住居や学校、病院まで爆破しているようだ。

一刻も早く、この戦火が収まることを祈る。

そんな状況の中で、ヴァン・クライバーンとブゾーニの国際ピアノコンクールが相次いでロシア人ピアニストの参加を認める声明を出した。




クライバーン国際ピアノコンクール(6月本選)の予備予選が今日から始まる。ビデオ審査で選ばれた 72人のピアニストが、30人の枠を目指して米国フォートワースで演奏する。

この中には 15人のロシア出身ピアニスト(韓国の 16人に次ぐ多さ)が含まれていて、その参加を歓迎する声明(↓)になっている。

✏️Today, the Cliburn releases the following official statement:(Facebook)

上の図はその声明の冒頭。日本語訳はこの記事(↓)に載っている。



一部を引用すると、

ロシアによるウクライナへの侵攻は非難されるべきものであり、心を痛めるものだ。我々はこの残虐な行為に断固として反対し、非難する。第16回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールに応募したロシア出身のピアニストは、ロシア政府の役人ではない。また参加を国家が支援するものでもない

…という理由で、ロシア人ピアニストの参加を認める…という内容だ。

声明の中で引用されている応募者からの言葉(↓)通りになるといいのだが…。

音楽が平和と愛の使者であるための機会を与えてくれることを祈ります


個人資格で参加するピアニストには何の罪もないので、この判断はいいと思うのだが、MCS Young Artists ブログの記事に書いてあったこと(↓)もちょっと気になる…。

ロシア人が仮に優勝して自国で英雄視されるようなことになったら?本人が望む望まないに関わらず政治利用されることになったら?

思えば、冷戦下で国威発揚のために始まった第1回のチャイコフスキーコンクールで、ロシア(当時はソ連)の思惑が外れてアメリカ人のヴァン・クライバーンが優勝し、当時の米国ではある意味「政治利用」されたのだった。

そういう経緯で始まったクライバーン国際ピアノコンクール、今回はどうなる…?

参考✏️2022 Cliburn Competition Screening Auditions(公式サイト)


クライバーンに続いて、ブゾーニ国際ピアノコンクールからも声明が出された。


こちらは今募集中なので、ウクライナ、ロシア、ベラルーシからの応募を促す内容となっている。こういう文章(↓)で始まっている。

ウクライナでの戦争の憎しみと悲しみを言葉で表すことはできない。70年以上も前、ブソーニコンクールは、第二次世界大戦の傷を癒し、疎遠な国と文化の橋を架けることを求める平和プロジェクトとして考えられた

原文(↓)を引用しておく。



国内では、6月に予定されている仙台国際コンクールにも、ロシア人コンペチタが数人(ピアノ部門にもヴァイオリン部門にも)いるが、そのまま参加するようだ。

こちらは、とくに何の「声明」もなく淡々と?当然のように?進んでいる。日本らしいと言えばそうかも知れない。

いずれにしても、音楽界は、ロシアとベラルーシの選手を出場禁止としたパラリンピックなどのスポーツ界とは異なる判断をしたことになる。


ちなみに、同じく 6月に開催予定の第1回ラフマニノフ国際コンクールであるが、少し前に募集の締め切りが 1ヶ月延期されたのに続いて、今度は参加費用が無料になったようだ。

よほど応募者が少ないのか…(^^;)?



もう一つ、ウクライナ関連(戦争と音楽の関係)のニュース。

世界中でキャンセルや契約解除にあっているゲルギエフだが、イタリアのアマルフィ海岸で夏に開催される Ravello Festival という音楽祭では、予定通り指揮をするようだ。


開催者の言い訳?は「政治的側面ではなく文化・芸術的な側面を評価すべき…」(原文は下記)ということらしいが、ゲルギエフの「政治的側面」はかなり強い印象なのだが…?

"What we have to evaluate today is the cultural and artistic profile and not the political aspects."


それにしても、早く戦争が終結してウクライナに平和が戻れば…と願う。

誰かが言っていた言葉を思い出した。

「疫病(コロナ禍)と侵略戦争って、今は中世じゃないのに…」



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