これが実によかった、期待以上に素晴らしかった♪ まったく新しい平均律を聴かせてもらったという感じで少し興奮してしまったかも…(^^;)。
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聴いたのはこの音源(↓)。エルプフィルハーモニー・ハンブルク (Elbphilharmonie Hamburg) から、4月17日にライブ配信されたもののようだ。
追記@2024/04/06:この動画は削除されたようなのでアルバム全曲の音源と差し替えた。
曲目はバッハの「平均律クラヴィーア曲集第2巻」からの「抜粋」となっていて、1月にリリースされたこの CD(↓)とまったく同じになっている。
「抜粋」と書かれているが、むしろアンデルシェフスキが 12曲を選んで再構築した「平均律組曲」?のようなものだと考えた方がいいと思う。
その曲順はこうなっている(↓)。
- 第1番ハ長調 BWV870
- 第12番ヘ短調 BWV881
- 第17番変イ長調 BWV886
- 第8番嬰ニ短調 BWV877
- 第11番ヘ長調 BWV880
- 第22番変ロ短調 BWV891
- 第7番変ホ長調 BWV876
- 第16番ト短調 BWV885
- 第9番ホ長調 BWV878
- 第18番嬰ト短調 BWV887
- 第23番ロ長調 BWV892
- 第24番ロ短調 BWV893
まずは聴きながら、そして聴いたあとでカミさんと感想を話す中で思ったこと・感じたことを思いつくまま書いてみたい。
まず、聴き始めてすぐに感じたことは、音楽が生きているという感じ。アンデルシェフスキのバネの効いた力強いタッチから繰り出されるピアノの音が実に生き生きとしていて、どの旋律も思う存分に歌われている印象。
ロマン的というよりは、よく響くフォルテから実に柔らかいピアニッシモまで、音色のパレットという意味でも強弱という意味でも、本当に幅広いダイナミックな歌声を感じた。
とても「器楽的」な曲だと思っていた私にとって、この「歌い方」はちょっとしたカルチャーショックであった。
もちろん、これまでにもロマン派的な演奏(リヒテルとか…)はあったはずだが、それとは一線を画した「歌い方」だと思う。
バッハの対位法における各声部の存在ははっきりとしていて、それぞれがそれぞれの色合いやアーティキュレーションでしっかり自己主張というか、歌っていて、全体としての曲を実に見事に構築しているという感じ。
アンデルシェフスキがやっていることは、バッハの残した楽譜からその一番いい姿を紡ぎ出すために、現代ピアノの持つ可能性を余すところなく引き出すことなのかも…?
なんと言っても聴いてすぐに引き込まれる力を持つピアノの響き、いつまでも聴いていたいと思わせる音楽の流れはとても素晴らしいと思う…(^^)♪
「抜粋」というより、むしろアンデルシェフスキが 12曲を選んで再構築した「平均律組曲」?のようなものと書いたが、実は本人がそう語っているのだ。
CD の紹介記事に引用された言葉をそのまま引用すると…。
「私は、時には重要な関係に基づいて、時にはコントラストに基づいて、自分の主観的な選択のシーケンスに作品をまとめることに決めました。この特定の順序の背後にある考え方は、サイクルを示唆するドラマの感覚を作り出すことです。12人のキャラクターが互いに会話し、互いにミラーリングします」
ちょっと分かりにくいのだが、いくつかの海外の解説記事から読み解くと…。
アンデルシェフスキが悩んでいたことの一つは、平均律クラヴィーア曲集というのは、リサイタルのプログラムに相応しいものなのかどうか?ということだった。
また、バッハの 2巻の曲集の順番は必ずしも「情緒的・音楽的な必然性」によって並べられたものではないので、曲集の通りの順番で演奏することには抵抗があったようだ。
そこで、アンデルシェフスキが出した答えが今回の「12曲を選んで並べ替え」「全体が一つのサイクルを構成するようなドラマを作り出す」という試みである。
その選択と並べ方は彼の主観によるのだが、調性の関係や、曲同士がお互いに惹きつけ合うようなコントラスト(厳粛さと目の覚めるような明るさ…等)などを考慮しているそうだ。
「一つのサイクルを構成するようなドラマを作り出す」という試み(↓)は、ここ二日間で 3回ほど全体を聴き通した限りでは、成功しているように思われる。
"The idea of playing these works in this specific order is to create a sense of drama suggestive of a cycle: 12 characters conversing, mirroring each other."
シューマンの「謝肉祭」や「クライスレリアーナ」などの「ピアノピースによるサイクル」作品と比べている解説記事もあるが、そこまではよく分からない…(^^;)。
"a Bachian equivalent to one of Schumann’s cycles of piano pieces, a baroque Carnaval or Kreisleriana"
ここまでの主な出典記事は下記。日本語の記事は見当たらなかった。
✏️Bach: 12 Preludes and Fugues from The Well-Tempered Clavier II review – wilfully immaculate(The Guardian)
✏️JS Bach: The Well-Tempered Clavier, Book II (Anderszewski)(Classical Music)
✏️Review: Bach – Well-Tempered Clavier, Book II (Excerpts) – Piotr Anderszewski(THE CLASSIC REVIEW)
それにしても、これほど画期的な試みと素晴らしい演奏に対して、日本語の記事がほとんど見つからないのは本当に残念なことだ。私が見つけられてないだけかも知れないが…。
大袈裟にいうと、グレン・グールドが「ゴルトベルク変奏曲」でバッハの音楽(演奏)の新しい可能性を示したように、アンデルシェフスキの今回の取り組みは「平均律クラヴィーア曲集」の新しい可能性を開くものかも知れないのに…。
まぁ、個人的な、勝手な妄想なので…ご容赦の程…(^^;)。
おまけ。今年 11月にアンデルシェフスキが来日することになっているようだ。しかも、リサイタルの方は今回の「平均律クラヴィーア曲集」だ ♪
生で聴きたいけど、さすがに 11月にはコロナも収まっているか…(^^;)?
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