名伯楽として知られる偉大なロシアのピアニスト、ドミトリー・バシキーロフ(Dmitri Bashkirov)が 3月7日に 89歳で亡くなった。
✏️【訃報】ドミトリー・バシキーロフ(1931-2021)、偉大なるピアノ教師(MCS Young Artists)
上の写真は 2020年2月8日にウィーンの Musikverein で行われたマスタークラスの一場面。ショパンのノクターンを演奏した後に生徒に向かって話をしているところ。元の動画は下記。
このとき 88歳のはずだが、元気な様子がうかがえる。
ジョージアのトビリシ出身。トビリシではエリソ・ヴィルサラーゼの祖母アナスタシア・ヴィルサラーゼに学び、モスクワ音楽院(正式名称:チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院)ではゴリデンヴェイゼルに師事する。
母校のモスクワ音楽院の教授を長く務め、晩年にはマドリッドのソフィア王妃高等音楽院の教授も務めた。門下生には有名なピアニストが名を連ねている(↓)。
アルカディ・ヴォロドス、ダン・タイ・ソン、ドミトリー・アレクセーエフ、ペーター・レーゼル、ダヴィッド・フレイ、キリル・ゲルシュタイン、デニス・コジュヒン、エレーヌ・グリモー、ニコライ・デミデンコ、等
ちなみに、娘さんのエレーナ・バシュキロワはピアニストで、元はギドン・クレーメルの奥様、今はダニエル・バレンボイム夫人。
2016年に読んだ「音楽の友」の記事によると、モスクワ音楽院には「イグムノフ、ゴリデンヴェイゼル、フェインベルク、ネイガウス」という 4つのピアノ楽派があるそうだ。
バシキーロフはゴリデンヴェイゼル楽派に属するということになるのだろう。以前読んだ『ピアニストの系譜: その血脈を追う』(↓)に載っていた「系譜図」を確認してみた。
こうして見ると、ドミトリー・バシキーロフは伝統ある(由緒正しい)ロシア・ピアニズムをしっかりと後世に残す役割を果たした偉大なピアニスト&教師であったことが分かる。
ご冥福をお祈りする。
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