2016年2月27日土曜日

三題噺?暗譜の必殺技、ロシアのピアノ楽派、日本のピアニスト

図書館で「音楽の友」2月号をパラパラ見ていて、隣にあった1月号の表紙(↓)に気づいて「あれッ?」と思った。特集が「世界の名ピアニストたちの挑戦」となっているのに読んだ記憶がない…。

特集自体は、ツィメルマンなどのインタビュー記事以外は、年代別のピアニストが並べてあったり、今年来日予定のピアニストが並べてあったりで、それほど面白くなかったのだが、その他の記事でちょっと興味を惹かれたものがあったので軽くご紹介。





一つ目は指揮者の山田和樹さんの連載記事「私的音楽論考」から。

「2016年の挑戦」の一つとして、オーケストラにおける暗譜演奏にチャレンジする、という話なのだが、そこにピアノのとっておきの暗譜法が書いてある。芸大の副科ピアノのレッスンで教わったとのこと。

やり方は「最初の小節を弾いた後、手を膝の上に置き、次の小節は頭の中だけでイメージする。そして次の小節は普通に弾いて…」を繰り返す。最初は奇数小節だけ弾く、次に偶数小節だけ弾く。

これが、山田さんによると驚くほど効果があるらしい。一度試してみる価値はありそうだ。

ちなみに、2月21日放送の「題名のない音楽会」で、山田和樹指揮横浜シンフォニエッタの暗譜演奏を聴いたのだが、気のせいか活き活きした音楽に聴こえて驚いたばかりであった。


二つ目は「反田恭平がミハイル・ヴォスクレセンスキーと語り合う」という記事。モスクワ音楽院に留学中の反田恭平くんが、師事しているヴォスクレセンスキー先生と対談したものである。

そこで、この先生が、モスクワ音楽院におけるロシアン・ピアニズムの流れと4つの楽派を説明してくれているのが分かりやすい。

「モスクワ音楽院には4つのピアノ楽派があります。イグムノフは50年以上教え、オボーリン、グリンベルク、フリエールを輩出…。ゴリデンヴェイゼルの弟子にはベルマンとバシキロフが…。私はオボーリン門下なので、イグムノフ楽派と言えるでしょう。」

「その後、フェインベルクが独自の楽派を形成し、さらに20年代にゲンリヒ・ネイガウスが現れてリヒテルとギレリスを育てました。現教授陣ではドレンスキーがネイガウス、メルジャーノフ(故人)がフェインベルク、私がイグムノフ学派を伝えています。」

つまり、イグムノフ、ゴリデンヴェイゼル、フェインベルク、ネイガウスという4つの楽派があり、系譜からいうと反田くんはイグムノフ楽派ということになるようだ。楽派の違いは分かりませんが…(^^;)。

* イグムノフ→オボーリン→ヴォスクレセンスキー→反田恭平

ヴォスクレセンスキー先生によると、「圧倒的な巨人はリヒテル、ギレリス。一世代後にベルマン、バシキロフ、ヴィルサラーゼなど優れたピアニストもいるが、この2大巨匠を超える者は出ていません」ということで、モスクワ音楽院の目標は「リヒテル、ギレリスを超える巨匠を産み出すこと」だそうだ。


余談になるが、つい先日レコードの山から掘り出したラザール・ベルマンの名前があって、ちょっと嬉しかった。

また、以前ご紹介した『ロシア・ピアニズムの贈り物』の著者、原田英代さんはメルジャーノフ門下なのでフェインベルク楽派ということになる。

【参考記事】


三つ目は、中村紘子さんの連載「ピアニストだって冒険する」から。「新春初妄言」ということで、いつも以上に言いたい放題? というより、日本からなかなかいいピアニストが出ないことへの嘆き…かな?

まず、フィギュアスケート界のスーパースター羽生結弦くんの話があって、「日本のピアノ界にも彼のようなスーパースターが出ないものかしら」という期待が述べられる。

…のだが、すぐに「あたりを見渡しても、どうやらそんな若者のいる気配はない」と言い切ってしまう。我々一般人ならいざ知らず、日本のピアノ界を熟知している中村紘子さんの周りに、「気配」さえないというのは由々しき事態かもしれない。

さらに、「ここ数年、我が国のクラシック界は総体的に、この社会の変化のなかで、段々と影が薄くなってきているような不安を感じて仕方がない」と続く。


クラシック界(とくに日本)の低迷は我々でも感じていることではあるが、中にいる人たちは社会での発言力が下がっている、と感じておられるようだ。日本が「銭ゲバ」状態になり、「格差」社会のなかで心身ともに貧しくなっているのが一つの原因だろうか?

最近目覚ましい活躍をしているのは、チョ・ソンジンはじめ韓国勢だ。その韓国との比較で、日本人は「基本的には、ハングリーでないことが一番の問題なのかもしれない」とあっさり結論づけられる。

また、日本の若手ピアニストに対しては、「国際的な競争に勝てるような資質をもった男子はほとんどゼロ、女子は精神的に幼く『成熟』よりも『カワイイ』を目指すようになってしまった…」と手厳しい。

読みながら、やっぱりそうかと頷きながら、ふと思った。門外漢の邪推でしかないのだが、こういう状況になった責任の一端は書いているご本人(とその周辺?)にもあるのでは…?(浜松国際ピアノアカデミーなどで頑張っておられるのは知ってますが…)


…と、とりとめもないピアノ三題噺でした…。



【関連記事】
《ロシア・ピアニズム:ピアニストの系譜(2)》

《「ロシア・ピアニズムの贈り物」》(一覧)


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