ゲルハルト・マンテル (著), 久保田 慶一 (翻訳)
音楽之友社 (2011/11/12)
13.ズレのある演奏をしよう
138
演奏では「正しいか、まちがっているか」を問題にしてはいけません。楽譜は、強弱、リズム、アーティキュレーション、テンポなどすべてのパラメーターについて、どう演奏するべきかを記しているわけではないのですから…
142
演奏者というのは、楽譜には当然存在する不正確さを、瞬間々々に、演奏の確かさへと変換させていかなくてはならないのです。
14.演奏につながりを持たせよう
143
音楽は時間の芸術であり、記憶や期待との相互作用です。
144
「大きなライン」というのは、私たちが過去に聴いたものと現在聴いているものとを結びつけることによって得られるのです。
ここで感じられる線は実際の音の連続ではありません。…大きなラインが感じられるということは、曲の部分々々がしっかりと結ばれて筋道が通っていると感じられることなのです。
筋道を通す、つまり説得力を持たせるためには、曲を素材に分割しなくてはなりません。
演奏者に求められることは、この筋道を意識することでしょう。これによって聴者は素晴らしい演説を聞いたときのように、ひとつひとつの音ではなくむしろ全体でわかったと感じるでしょう。こうして音楽の共感とも呼べるような精神的そして感情的な経験が生まれるのです。
演奏には演説と似たような要素があります。主張、問いかけ、証明、まとめなどです。
154
急なクレッシェンドは「今」を強調しますし、ゆっくりとしたクレッシェンドは「未来」を示唆します。
157
演奏者が曲の構造をどれだけ戻って、あるいは先まで見通せるか、つまり記憶したり想像したりできるかは、音楽的な才能によるのでしょう。しかしこの能力には誤りをいかに恐れないかという能力も含まれるのです。練習で大きな範囲を見通すには、細部の不正確さに目をつむらなくてはなりません。
158
演奏者たるものはいつもふたつの時間の流れを意識していなくてはなりません。つまり演奏者の意識の根底に流れる「長い時間の流れ」と「短い時間の流れ」です。
…山登りをする人が自分の足元ではなく、前方の道を見るように。
15.音楽をイメージしてみよう
165
「書かれてある通りに」演奏するのではなく、なぜそのように書かれてあるのかが、人が聴いてわかるように演奏することが大切である…
171
私たちは音楽を言葉で説明するよりはるか以前に、すでにその音楽を聴いていて何かを感じ取り、それがいいか悪いかの判断をしています。
16.表現とコミュニケーション
176
…表現するには、他人に何かを伝えるために必要な強さ、明晰さ、説得力、情熱などが備わっていなくてはなりません。
日常的な表現から芸術的表現へ向かうには大きな一歩が必要です。(※ためらわずに)
176
…表現するには、他人に何かを伝えるために必要な強さ、明晰さ、説得力、情熱などが備わっていなくてはなりません。
日常的な表現から芸術的表現へ向かうには大きな一歩が必要です。(※ためらわずに)
179
問いかけをして初めてイメージが湧いてきます。演奏というのは決して何もないところから生まれるものではない…。
イメージには流派の掟などは必要ありません。「やっていいですか?」という問いかけだけは、絶対にしてはいけません。…実際に(※演奏)する人はあなたしかいないからです。
180
イメージは何かひとつの決まったものではなく、練習を通して生まれ成長するのです。イメージはいつも流動的です。
189
緊張が変化するところでは注意も喚起されます。
191
意識して瞬間的に緊張してみるのはリラックスするための手段でもあります。
192
演奏中にどのような動きをするかですが、「今動く」という瞬間の直前に心を緊張させておかなくてはなりません。…
この「今動く」という瞬間をうまくコントロールするためにはテンポ操作が大切です。
195 演奏中の動き
どんな動きも感情を表現します。この意味で動きは感情表現であると言えます。
196
曲の中に新しい要素を発見すれば、身体感覚も新しくなります。音楽的に成長することは、同時に身体感覚の成長でもあるのです。
音楽のイメージでもって動きがコントロールできればしめたものです。反対に何か特別な態度や動きをやっつけでしてみたり、格好をつけたりして、音楽の歪んだイメージを演奏に移してしまいますと、その人らしさも表れませんし、演奏者としてのモラルも問われてしまいます。
17.自分らしい演奏を求めて
213
学習したかどうかは身体で感じることはできません。…結果でしか判断できません。脳に回路が固定されるのは、練習でできるようになってからかなりの時間が経ってからです。…新しく獲得した行動が…無意識にそして自動的に演奏に生かされるようになるためには、しばしば年単位の時間が必要です。
新たに習得した行動を半永久的に維持するためには、それを強化してやることが必要です。これには言葉が重要になります。言葉というのは私たちをとても励ましてくれます。…どんなふうにしたいのかを、練習のときに独り言でもいいから言ってみるのもいいでしょう。
213
学習したかどうかは身体で感じることはできません。…結果でしか判断できません。脳に回路が固定されるのは、練習でできるようになってからかなりの時間が経ってからです。…新しく獲得した行動が…無意識にそして自動的に演奏に生かされるようになるためには、しばしば年単位の時間が必要です。
新たに習得した行動を半永久的に維持するためには、それを強化してやることが必要です。これには言葉が重要になります。言葉というのは私たちをとても励ましてくれます。…どんなふうにしたいのかを、練習のときに独り言でもいいから言ってみるのもいいでしょう。
214
頭で考えていた演奏を形にしていくにあたっては、まず全体を通した後に数秒間待って、今の練習内容を記憶することが大切です。終わってすぐに次の演奏を始めますと、しようとしている演奏と今聴いたばかりの演奏、さらに次の演奏とがオーバーラップしてしまい、干渉し合ってしまうからです。そうなると何をどのように演奏したいかがわからなくなってしまうのです。
【完】
【関連記事】
《7分で読めるピアノの本(7):チェロと室内楽からピアノへのアドバイス》
0 件のコメント:
コメントを投稿