ハオチェン・チャン。少し前のねもねも舎の記事に、「エイブリー・フィッシャー・キャリア・グラント2017にハオチェン・チャンが選出」というのがあり、ちょっと気になっていたピアニストである。
辻井伸行クンが優勝したヴァン・クライバーン・コンクールで最年少(19歳)の同率1位だったことはこの記事で知った。
今回、『ヴァンクライバーン 国際ピアノコンクール 』という本を読んで、その中のインタビューで好感度が上がったこともあり、聴いてみることにした。
ハオチェン・チャンのインタビューから
ピアノを始めた動機からして面白い。
母親が、アメリカの雑誌「リーダーズダイジェスト」(懐かしい…♪)の記事で「ピアノを弾くとIQが上がる」というのを読んで、アップライトピアノを買ってきた。…というのがきっかけ。それが3歳9カ月の時。
とくに音楽家の家系ではない。父親は日本語の通訳、母親はコンピュータ・エンジニア。
で、5歳のとき(たった2年で!)、バッハの《二声のインヴェンション》全曲とモーツァルトとハイドンのソナタでリサイタル・デビュー。
10歳のとき、中国人で初めてショパンコンクールで優勝したユンディー・リーのニュースを聞いて、さっそくユンディーの先生に習うために深圳に行く。4年間をそこで勉強する。
なんというか、たぶん母親の行動力がすごかったのだろう…?
14歳でフィラデルフィアのカーティス音楽院に合格するのだが、カーティスを選んだ理由も面白い。
「学生全員に全額奨学金が支給されるし、在籍中ずっと自分のアパートでスタインウェイのグランドピアノが使えるし、週3〜4回もの演奏機会が与えられるし、毎週コンサート・チケットがもらえるし、…」
ちなみに、ジュリアードはオーディションのときにトップをとった人だけに、1年間だけ奨学金が出るそうだ。
カーティスでは、ラン・ランやユジャ・ワンを指導したゲイリー・グラフマンについて研鑽を積む。
ラン・ランのことを聞かれて…。
「ラン・ランの演奏の多くはとても好きです。彼のスタイルは特徴的で演奏はとても面白いと思います。…演奏の多くはとても独特なので、真似をしようとも思わないし、解釈については賛成しない部分も多いけれど…」と微妙な発言。
まぁ、なかなかいい感じの好青年(少年?…このとき19歳)という印象だ。
いくつかの演奏を聴いて…ヤナーチェクがいい ♪
まず YouTube で見つけたベートーヴェンのソナタ21番。2014年9月の演奏。
疾走する「ワルトシュタイン」は悪くはないのだが、全体的にちょっと軽い、というか、この人の特長といわれている「ブリリアントな音」が一人歩き(上滑り?)している感じ…? 音はきれい。
まぁ、正直なところ「発展途上」の演奏かな?と思った。
次に、本人サイトの "video" のページにあった音源をいくつか聴いたのだが、それほどピンと来るものはなかった。
ただ、初CDのプロモーション動画にあったヤナーチェクが気になったので、NAXOSで探してみた。
すると、今年(2017年)の2月に出たばかりのCD『Schumann・Liszt・Janacek・Brahms: Works For Piano (SACD)』があった。
収録曲は、シューマンの「子供の情景」、リストのバラード第2番、ヤナーチェクのピアノソナタ第1番「1905年10月1日の街角で」、ブラームスの3つの間奏曲 Op.117。
シューマンとブラームスはきれいに弾いているが、まぁ普通かな…? リストは曲自体があまり好きではないので…。
で、ヤナーチェクのピアノソナタ「1905年10月1日の街角で」変ホ短調がなかなかいい ♪
この曲は、記憶にある限り1回くらいしか聴いたことがなく、そのときはあまり印象に残らなかったのだが、今回は聴き入ってしまって、2度3度と聴いてしまった。
シリアスな哀しい内容を持つこの作品を、美しいピアノの音が昇華させているような演奏だと感じた。
19歳でヴァン・クライバーン・コンクールで優勝してから7年経ち、26歳になったハオチェン・チャン、今後の進化・活躍に期待したい ♪
ちなみに、6月に来日するようだ。
【関連記事】
《ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールについて(読書メモ)》
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