※出典:「ピアノ音楽史事典」
(千蔵八郎、春秋社、1996年)
第8章 ドビュッシーの出現と20世紀はじめのピアノ音楽
第9章 20世紀のピアノ音楽
終章 ピアノ音楽の歴史は終わったのか?
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20世紀のピアノ音楽〔2〕
2つの大戦の谷間の時期(1918〜1945)■ 概説
「新音楽 Neue Musik」という言葉は 1920-30年の音楽動向を表すものとして、主にドイツで使われた。伝統的な作曲技法から脱して新しい音楽を創るためには、急進的・実験的な手法が必要と考えられていた。
そのなかには、シェーンベルクの12音音楽やストラヴィンスキーのバーバリックな音楽、あるいはフランス6人組、ヒンデミット、アイヴズなどが含まれる。
一方で、1920年代のストラヴィンスキーの作品に見られる「新古典主義」の動きもあった。これは後期ロマン派の主情的な音楽への反発であり、バロックの対位法などが使われることもある。
同じような考え方はフランス6人組にもあり、印象主義の曖昧さに反対して、音楽に簡素さと明確さを求めた。ピアノ作品に限れば、ミヨー、タイユフェール、プーランクの3人が中心である。
「新即物主義」も、表現主義に対する反発から生まれた(元来は美術用語)が、こちらはむしろ演奏面について、19世紀の恣意的な演奏に反対する姿勢を表すことが多い。「原作に対する忠実な演奏」という意味である。ピアニストでは、シュナーベル、バックハウス、ギーゼキングなどがその代表である。
この時期のソ連(ロシア)では「社会主義レアリズム」という芸術上の「原則が規定」されていた。芸術は個人よりも社会に属すべきという考え方を前提とし、民族主義と社会主義の結合、自然主義や形式主義に対する批判、典型の尊重などが標榜された。注目すべき作曲家としてはプロコフィエフがいる。
ドイツではヒンデミットが重要である。多様な作品を書いたが、特徴的なのは古典舞曲を当時のポピュラー音楽のスタイルに置き換えた《ピアノ組曲 1922年》である。また、音の組織化について独自の理論を展開した。
また、ジャズと交響的音楽を融合した、アメリカのガーシュウィンも忘れてはならない。
■ 主な作曲家とピアノ作品
ミヨー(1892-1974)
・ブラジルの思い出 Op.67
・スカラムーシュ Op.165b(2台のピアノ)
プーランク(1899-1963)
・常動曲
・8つのノクターン
・フランス組曲
・村人たち(子どものための小曲集)
・連弾のためのソナタ
・2台のピアノのためのソナタ
ヒンデミット(1895-1963)
・ソナタ 第1番《マイン川》
・ソナタ 第2番
・ソナタ 第3番
・ルードゥス・トナリス
・2台のピアノのためのソナタ
プロコフィエフ(1891-1953)
・ソナタ 第1番 Op.1
・ソナタ 第2番 Op.14
・ソナタ 第3番 Op.28
・ソナタ 第4番 Op.29
・ソナタ 第5番 Op.38(改訂番号 Op.135)
・ソナタ 第6番 Op.82
・ソナタ 第7番 Op.83
→彼の全作品中もっとも有名
→彼の全作品中もっとも有名
・ソナタ 第8番 Op.84
・ソナタ 第9番 Op.103
・悪魔的暗示 Op.4-4
・トッカータ Op.11
・子どものための音楽 Op.65
・ピアノ協奏曲 第2番 Op.16
・ピアノ協奏曲 第3番 Op.26
ガーシュウィン(1898-1937)
・3つのプレリュード
・ラプソディ・イン・ブルー
・ピアノ協奏曲 ヘ調