※出典:「ピアノ音楽史事典」
(千蔵八郎、春秋社、1996年)
第8章 ドビュッシーの出現と20世紀はじめのピアノ音楽
第9章 20世紀のピアノ音楽
終章 ピアノ音楽の歴史は終わったのか?
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20世紀のピアノ音楽〔3〕
20世紀後半の時代(1945〜)■ 概説
20世紀初頭にはシェーンベルク等による新しい音楽の試みが行われたが、20世紀の後半には2回目の実験が始まったと言ってよい。テープ録音や電子音などこれまでにない素材が使われたのが特徴のひとつである。自然音などを使ったミュージック・コンクレートや人工的な音素材による電子音楽が作られた。また、ジョン・ケージのプリペアド・ピアノも、ピアノの音のいくつかを変化させることで、新しい音楽(楽器)を創り出す試みである。
しかし、従来からの手法で書かれた音楽もある。例えば、ラフマニノフやストラヴィンスキー、あるいはプロコフィエフに続く世代のカバレフスキーやハチャトゥリャン、ショスタコーヴィチなどは、新しい語法を使用していても、上記のような実験的手法はほとんど使っていない。
それはフランス6人組に続くメシアンなどにも言えることである。メシアンはシェーンベルク的なセリエル音楽を作っているが、とくに実験的なものとは言えない。
その他、この時期の注目すべき作曲家としては、メシアンより10年ほどあとのデュティユー、さらに若い世代のブーレーズ、コープランド、バーバー、シュトックハウゼン、ベリオなどがいる。
■ 主な作曲家とピアノ作品
カバレフスキー(1904-1987)
・ピアノ・ソナタ 第3番 Op.46
・ソナチネ 第1番 Op.13-1
・子どものための30のピアノ小曲集 Op.27
ハチャトゥリャン(1903-1978)
・トッカータ
・ピアノ協奏曲 変ニ長調
ショスタコーヴィチ(1906-1975)
・ピアノ・ソナタ 第2番 Op.61
・24のプレリュードとフーガ Op.87
・ピアノ協奏曲 第2番 Op.102
コープランド(1900-1990)
・ピアノ・ソナタ
バーバー(1910-1981)
・ピアノ・ソナタ 変ホ短調 Op.26
メシアン(1908-1992)
・みどり児イエスにそそぐ20のまなざし
・2台のピアノのための《アーメンの幻影》
デュティユー(1916-2013)
・ピアノ・ソナタ
ブーレーズ(1925- )
・ピアノ・ソナタ 第2番
・2台のピアノのための《ストルクチュール》
ベリオ(1925- )
・ピアノのためのアンコール
(水のピアノ、土のピアノ、火のピアノ)
シュトックハウゼン(1928-2007)
・ピアノ曲 第6番
ケージ(1912-1992)
・プリペアド・ピアノのための《ソナタとインタリュード》