所沢の航空記念公園の一角にある所沢市民文化センター「アークホール」で15時からの開演。桜が開花して初めての週末ということもあり、車で出かけたのだが、大変な渋滞で予定していたより1時間以上もかかってしまった。疲れた…(^^;)。
でも、疲れた原因は車の運転だけではなかった。それは…
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当日のプログラムはパルティータを順番に2曲ずつという3部構成であった。
なので、最初に1番と2番。なのだが、出だしから「あれっ?」という感じ。
期待が大きかったせいか、なんだか音が普通(のピアニストの音?)だし、音楽の流れがぎこちない。しかもときどき変なルバート?(テンポが揺らぐ…)をする。
全体としては、それなりに音量も出ているし、音楽も流れて行くのだが「淀み」のようなものを感じるし、今ひとつ気持ちがついていかないのだ…。
事件が起きたのは第2番の最終曲 "Capriccio"。曲が終わらない…。私は、そのときはなんか一瞬止まった?(間があいた)かなと思っただけだったのだが…。
で、終わったあとで、カミさんが「ハラハラした…無限の繰り返しで終わらないんじゃないかと思った」という。リフシッツ さん、どうも繰り返しをバッハの指定以上に弾いてしまったらしい…(^^;)。
「BACH は踊る」というポスターの言葉の「踊る」がちょっと踊り方を間違えてないのかな〜というのが1番・2番の印象であった。
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ところが、である。今度はあまり期待せずに聴き始めた3番がなかなかいい。私自身、あまり耳に馴染んでいない3番だったが「あれっ?こんなにいい曲だったっけ…」と思ったほど引き込まれる。
1・2番と違って、変なテンポの揺れもなく、音楽が実に心地よく流れて行く。音色も良くなり、ベヒシュタインの豊かな低音もいい感じになってきた。
そして、よく知っている4番。これは名演と言っていいくらいの出来。
私の好きな "Allemande" もとてもいいし、少し前に私も練習した "Aria" と "Sarabande" も本当に良かった。とくに "Sarabande" は別の曲に聴こえた。これまでに聴いたどのピアニストの演奏よりも美しかった。
1・2番を弾いた同じピアニストとは思えないほどの豹変…。
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あとで思ったのは、1・2番では相当緊張していて調子が出なかったのかも?ということ。
そう思うと、変なテンポの揺らぎやぎこちなさは、そう弾きたかったわけではなく、本当に指がもつれたりして、それをリカバリしようとした結果だったのかも知れない…。
ベテラン(42歳くらい)ピアニストで、バッハのスペシャリストと言われるリフシッツ でも、そんなことがあるのか…と、あとで妙に感心してしまった。
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それと、途中までは、ややペダルが多すぎるかな?とか、音がもう少しクリアに際立ってほしいと思いながら聴いていたのだが、3番・4番を聴いているうちに、それは解釈の違いなのでは?と思い始めた。
リフシッツ は、それぞれの声部の旋律を際立たせた上で、それを組み合わせたいのではなく、音の響きのまとまりとしてそれを材料にして音楽を組み立てようとしているのでは?ということである。ハーモニーで音楽を作っていくと言ってもいいのかもしれない。
結果としては、それはそれで説得力のある美しい音楽になっていたと思う。
実は、この日はそのあとに用事が入っていたので、5番・6番は聴くことができなかったのだが、3番・4番を聴いたあとでは、本当に後ろ髪を引かれる思いであった。
それにしても、1・2番も3・4番も別の意味で緊張して聴いていたので、こんなに気疲れしたリサイタルは初めてだったかも知れない…(^^;)。
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おまけ。家に帰って確認したら、今回のリフシッツ の来日はかなりの過密スケジュールだと分かった。10日ほどの間にバッハのピアノ曲の大部分、それもピアノ協奏曲全曲の弾き振りを含むのだからすごい。
しかも、この日は前日にフランス組曲全曲を弾いての翌日。疲れもあったのかも…。
3月21日:イギリス組曲全曲(紀尾井ホール)
3月24日:フランス組曲全曲(フィリアホール)
3月25日:パルティータ全曲(アークホール)
3月30日/ 4月1日:協奏曲全曲(東京文化会館)
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おまけその2。…というわけで、なんだか落ち着かない「踊るBACH」だったので、リフシッツ の演奏のイメージがよく分からずに終わったかもしれない。
NAXOS で探したらいくつか面白そうなCDがあったので、一度落ち着いて聴いてみようと思っている…。
Bach, J.S.: Goldberg Variation
J.S. バッハ:フーガの技法 BWV1080 他
J.S. バッハ:音楽の捧げもの、前奏曲とフーガ《聖アン》(リフシッツ編) 、フレスコバルディ/トッカータ集
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