2018年3月22日木曜日

クリスチャン・レオッタ:イタリアのベートーヴェン弾き…

クリスチャン・レオッタ(Christian Leotta)、「ベートーヴェンのスペシャリスト」という定評のあるイタリアのピアニスト。

ベートーヴェンのピアノソナタ全曲演奏会を何度もやっていて、CDの全集も出している。日本では京都のALTI芸術劇場というところで2016年に全曲演奏会をやったらしい。




そのALTI芸術劇場では、今年の春と冬に分けて「シューベルト・プロジェクト」というのを予定しているようだ(↓)。

✏️クリスチャン・レオッタ シューベルトプロジェクト

このページのプロフィールから少し引用すると…。

イタリア、カターニア生まれ。ミラノのG.ヴェルディ音楽院のマリオ・パトゥッツィのもとで学んだ後、コモ湖のテオ・リーヴェン国際ピアノ財団及びオクスフォードのテューレックバッハ研究財団で学ぶ

2002年モントリオールにて、若干22才でベートーヴェンのピアノ・ソナタ全32曲を披露 … 以後、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会を、世界の主要都市で21回成功させ、2004年イタリア共和国大統領より功労賞を授けられる

2008年から2014年にかけてアトマ・クラシック社より、ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全32曲の2枚組合計5枚のCDをリリースし、『現代の最も優れたベートーヴェン弾きの一人』『今まで世に出た一連の中で最も卓越した作品』と国際的に評された


最近、こういう褒め言葉を並べた評論やプロフィールはあまり信用しないことにしているのだが、さてどうだろう…。


とりあえず、YouTube にある音源を聴いてみた。


 Christian Leotta plays Beethoven's Piano Sonata No. 23 Op. 57 "Appassionata" (Full)

ベートーヴェンのピアノソナタ第23番「熱情」。イタリアのベルガモで2014年に行われた音楽祭での演奏のようだ。

第1楽章の出だしを聴いて、やや硬質なくっきりした音はいい感じかな?と思って聴いていた。…のだが、しばらくするとちょっとしつこいかな?と思い始めた。

その感じは第2楽章に入ってますます強くなる。たぶん、音色がそれほど多彩ではないのではないか?やや無骨な印象で、音に艶がなくてあまり面白くない。

全部の音が均等に近いからなのか、速いパッセージでときどきギクシャクした感じを受ける。第3楽章も音楽のうねりが感じられない、結果、表面的な音しか聴こえてこない。


ちょっとした「残念感」を感じながら、気を取り直して?もう1曲聴いてみた。

Christian Leotta plays Beethoven's Piano Sonata No. 10, Op. 14 No. 2 (Full)

同じ音楽祭での演奏で、ピアノソナタ第10番。

この感じは何なのだろう? いい感じだなぁと思って聴いていると、その先の展開がない、ずっと同じ料理を食べさせられている感じ。

お皿(楽章など)が変われば味付け(音色とかタッチとか)が変わって欲しいのだが、同じような響きがずっと耳に付いて回る感じ。「熱情」ソナタと同じ印象だ。


NAXOS にベートーヴェンのソナタのCDが揃っていた。というか、それしかない。

4月にピリス さんのオール・ベートーヴェン(シューベルトの予定が「テンペスト」に曲目変更されたので結果的にそうなった…)のリサイタルを聴きに行くので、その時のプログラムと同じ8番・17番・32番を聴いてみた。

ちなみに、クリスチャン・レオッタも 3/23にほぼ同じプログラムのリサイタルをやることになっている。ピリス さんのプログラムに 21番《ワルトシュタイン》を加えた構成だ。


一つ一つの感想は割愛するが、気になるのはときおり音楽が前に進んでいかない感じがすること。推進力がないというのか、たどたどしい感じさえすることがある。

聴き始めはちょっと期待したが、結果的にはどうも好みの演奏(好みのベートーヴェン?)ではないようだ。


おまけ。聴き終わったあとに MIKIKI のインタビュー記事(2015.01.09)を見つけた。なかなかいいことを言っている。

…解釈の基本は『慌てず騒がず、すべての声部を克明に浮かび上がらせ、ベートーヴェンの豊かな歌心を強靭なリズム、確かなテクニックの支えで最大限に伝える』姿勢…

 「ショウビジネスの発想が芸術の多くの部分を破壊し、音楽をただの“文化的ノイズ”に堕落させた

(現代流行の)『メカニカルでブリリアント、万事に猛スピード』の対極にある『よりソフトに、ゆっくりと弾く』奏法を身につけた。レオッタはベートーヴェンを弾くたび、自らに問いかける。『真のアダージョが弾けているか?』と


個人的な感想としては「強靭なリズム、確かなテクニック」はその通りだと思うが、「ベートーヴェンの豊かな歌心」が今ひとつ聴こえてこない気がするし、「真のアダージョ」に音楽としての説得力が感じられないように思う…。

「ショウビジネスの発想…」はまったくその通りだと思う。



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