中村紘子さんの最後のエッセイ集『ピアニストだって冒険する』を読みながら、一瞬「目がテンに」なってしまった。それは、次のくだりを読んだとき…。
「これはピアノ部門に参加した或る西欧の審査員が漏らした話だが、今年(2015年)のピアノ部門の最終結果を嫌ったゲルギエフは、表彰式当日になって他の審査員に断りもなく独断で順位を変えてしまったそうである。その時は、ロシア人以外の外国人審査員の大部分は既に本国に向けて帰ってしまっていた。もしかしたら、予選の間にもいろいろとあったのかもしれない」
「しかし、独裁者が牛耳れば、もうそのコンクールは公正とはいえなくなる。しかも今回のその結果は『まるでモスクワ音楽院の校内コンクールみたい』とも評価された」
…と続く。
えっ!?
じゃあ、本当の1位はロシア人以外だった?
下記が「公式」?の最終結果なので、2位のジョージ・リー君(米国)か4位のリュカ・ドゥバルグ君(フランス)だったかも知れない、ということ…??
1位:ドミトリ・マスレーエフ ロシア
2位:ルーカス・ゲニューシャス ロシア
ジョージ・リー USA
3位:セルゲイ・レドキン ロシア
ダニール・ハリトーノフ ロシア
4位:リュカ・ドゥバルグ フランス
個人的には、途中からルカ君(リュカ・ドゥバルグ)の大ファンになったこともあり、また1位のマスレーエフ君の演奏にあまり魅力を感じなかったこともあり、この結果には何か釈然としないものを感じていた。
コンクールのあとでも、一部の審査員から、リュカ・ドゥバルグを称賛するようなコメントが出たり、結果に対する煮え切らない言い訳のような記事が出たりした(下記参考)ところを見ると、中村紘子さんの聞いた話もまんざらウソではないような気もする。
→《チャイコン(ピアノ部門)その後…》
「ピアノ部門のファイナリストには、4人の exciting なピアニストがいた。そのうちの一人は際立っていた。しかし、優勝したのはその4人以外のピアニストであった」
「多くの人が、ルカ・ドゥバルグこそ『最も輝いている才能』だと考えた」
…といっても、別に「正式な最終結果」(「歴史」にはコレしか残らない…)に難クセをつける気持ちはまったくないし、ゲルギエフが「独断で順位を変えた」という話が本当かどうかもあまり興味はない。ありそうな話だとは思うが…(^^;)。
実はこのチャイコンは、生まれて初めて聴く(ネットを通して…)ピアノコンクールであった。まったくの個人的な好みでいろんなピアニストの演奏をああだこうだと言いながら聴く体験は実に楽しかった ♪
たしかに、ファイナルは「モスクワ音楽院の校内コンクールみたい」というのは素人の私でも感じたのだが、しかし改めてロシア・ピアニズムのすごさを楽しませてもらった、という意味では本当に面白かった。
結果が自分の予想(期待)と違ったことも、自分自身の鑑賞能力の不足あるいは好みの問題だと思うし、そもそも芸術に順位は付けられないとも、心のどこかでは考えている。
ただ、本当に真剣に、ある意味人生をかけてコンクールに臨んでいるコンテスタントたちのことを考えると、「不正」や「政治」や「大人たちの都合」はコンクールに持ち込まないでほしいとは思う。
それにしても、この中村紘子さんの文章は2015年に雑誌掲載されているはずなのだが、なんで「騒ぎ」にならなかったのだろうか?
もしかして関係者の間では「公然の秘密」だったのか?さすがに、大御所ゲルギエフに逆らう人は業界人にはいなかったということなのか?
この『ピアニストだって冒険する』にも、プーチン、ゲルギエフ、マツーエフの名前が並んで出てきたりする…(^^;)。
いずれにしても、その後のジョージ・リー、リュカ・ドゥバルグの活躍(↓)を見れば、1位かどうかはどうでもいいような気もしてくる。
おまけ:中村紘子さんの『ピアニストだって冒険する』は面白かったので、近々「感想文」を書く予定。乞うご期待!?
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