アレクサンドル・ラビノヴィチ=バラコフスキー(Alexandre Rabinovitch-Barakovsky)は、1945年3月30日ロシア(ソ連)生まれ、スイス在住の作曲家・指揮者・ピアニスト。紹介文として分かりやすいのは、これ(↓)かも知れない。…と言いながら、私はアルゲリッチとのデュオは「知らぬ人」だったのだが…(^^;)。
「アレクサンドル・ラビノヴィチ=バラコフスキーと聞いてあまりピンとこなくても、かつてアルゲリッチとのピアノ・デュオで数々の名盤を世に出したあのラビノヴィチといえば、知らぬ人はいないでしょう。彼の本業は作曲家で、旧ソ連のミニマル・ミュージックの元祖と目されています」
これは、『アレクサンドル・ラビノヴィチ=バラコフスキー作品集』という、彼の代表作を4枚にまとめたCD(↓)の解説にあったもの。
そのほか、ファン・サイト(RABINOVITCH-BARAKOVSKY FAN SITE)というのがあって、その "THE COMPOSER" というページに詳しい紹介文(英文)がある。
そこには、作風として "Minimalist", "neo-romantic", "neo-tonal", "repetitive" や "spirituality and compassion" といった言葉が並んでいる。とくにミニマリズムの世界では草分け的存在らしく、“La Belle musique n.3” (1977) というのがオーケストラでミニマルをやった最初の作品とのこと。
ファン・サイトの "SELECTED WORKS" に主な作品が載っているが、ソロ・ピアノ曲は、2009年の "3 Manas for amplified piano or amplified electric piano" くらいしか見当たらない。
ピアノを使った曲(室内楽や2台ピアノの協奏曲など)はあるが、特徴的なのは、ピアノがすべて "amplified piano" となっていること。チェロやフルートなど他の楽器も、ほとんど "amplified" だ。
"amplified piano" というのは、マイクを使って音を増幅しスピーカーで鳴らすわけだが、そもそも音量のあるピアノなどの場合は「増幅」というより、音質・音響の変化を狙っているものと考えられるようだ。
ピアノ作品を聴いてみた。まずは前回もご紹介した「悲しみの音楽、時に悲劇的な」という曲をもう一度聴いた。
出だしはわりといい感じだが、その後はいま一つまとまり感がなく、ミニマル的ないろんなフレーズが次々に出てくるだけ?という印象。和音連打とアルペジオ的な部分が印象に残るが、アルペジオ的な部分は個人的には好きだ。
次に "Mana" を HJ Lim が演奏している動画を聴いてみたが、なんだか妙な舞台だ。ピアノの前に瞑想?しているお坊さんがじっと座っている。曲は、無窮動(常動曲?)というのか、心地よい音響の流れがたえず変化しながら続いていく。これはなかなかいい。
動画の最初に表示される解説を読むと、"Mana" というのは、マオリ、メラネシア、ポリネシアなどの文化でカリスマ性のある人物から出る "psychic energy"(精神力?)の強力な流れを指す言葉らしい。
…で、「お坊さん」の謎は次の関連動画でとけた。上の "Mana" は、2015年7月27日に行われた「ダブリン国際ピアノフェスティバル」でのコンサート(↓)の一部(最後の曲)だったようだ。
♪ HJ Lim and Venerable Seongdam, Live in Dublin - Full concert -
※追記@2023/09/12:「非公開動画」になっている
これは1時間半ほどあるのであとで聴くとして…、お坊さんは Seongdam という名前の高僧らしく、最初に木魚を使いながら歌のようなお祈り?をしたり…という「共演者」だったのだ。ちなみに他のピアノ曲としては、プロコフィエフとシューベルトとスクリャービンのソナタが入っている。
もう一つ、ラビノヴィチ本人の演奏(↓)もあった。 "amplified piano" のようだ。
次に、アルゲリッチとのデュオ(ピアニストとしてのラビノヴィチ)を聴いてみた。
最初に聴いたのは、モーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448」の第2楽章。初めて聴く(たぶん)曲だが、曲自体も演奏も実に優しい感じで素晴らしい。弟子と一緒に弾くために作曲された、「モーツァルトを聴くと頭が良くなる」効果の検証に使われた、などの説明が納得できる。
♪ Martha Argerich & Alexandre Rabinovitch, Sonate pour deux pianos en ré majeur K.448 - 2
※追記@2023/09/12:再生できません…
それから、ラヴェル「ラ・ヴァルス」の2台ピアノ版。これも実にいい感じの演奏だ。
この二人のデュオは、この「ラ・ヴァルス」でさえどこか優しさを感じる。アルゲリッチの気性を考えると、これはラビノヴィチの性格から来ているのかも…(^^;)?
このデュオの出した「数々の名盤」が気になったので、活動期間などを調べてみた。
"MARTHA ARGERICH RECORDINGS" というアルゲリッチの録音を整理したサイトで見ると、一番古いのが 1987年10月25日(ジュネーヴ live)の「ラヴェル マ・メール・ロア」で、一番新しいのが 2005年3月5日(コペンハーゲン live)のブラームスとラフマニノフ(↓)となっている。少なくとも18年間は組んでいたことになる。
- ブラームス:2台のピアノのためのソナタ ヘ短調 Op.34b (Piano 1: ラビノヴィチ)
- ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 Op.56b (Piano 2: ラビノヴィチ)
- ラフマニノフ:組曲第1番 Op.5「幻想的絵画」 (Piano 1: ラビノヴィチ)
- ラフマニノフ:組曲第2番 Op.17(2台のピアノのための) (Piano 2: ラビノヴィチ)
おまけ:Amazon で見つけた「数々の名盤」の一部。
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