記憶の仕組みとは
記憶の仕組みの考え方にはいくつかあるが、ここでは「短期記憶ー中期記憶ー長期記憶」という3階層の記憶場所があるとしている。
「短期記憶」はワーキングメモリとも言われるように、作業用のメモリであり、通常その記憶は1分以内に消えてしまう。また、一度に7項目程度しか覚えられないので、「かたまり」(チャンク)として覚えることが重要になる。
「中期記憶」は「長期記憶」にしまわれる前の一時的な貯蔵庫である。記憶の継続期間は1時間〜1カ月ほど。
「長期記憶」に入れられた記憶は数時間から一生涯の期間、保たれる。
記憶(情報)は短期記憶に一旦入り、そこで「覚えた」状態になったものは中期記憶に保存される。さらに、長期記憶に入れられるかどうかは、その情報に対する興味や理解度、あるいは覚えようとする努力(「リハーサル」と呼ぶ、図では「R」)によって決まる。
ピアノで「暗譜」するというのは、中期記憶ないし長期記憶にその曲の情報が入り、いつでも取り出せる状態だと思われる。
記憶を確かなものにする
記憶を確かな(いつでも思い出せる)ものにするというのは、情報を「短期→中期→長期」と移していくことと考えることができる。
そのためには、その情報に興味があり、自分なりに理解していることが前提となるが、それに加えて「リハーサル」と呼ばれる「覚える努力」が重要な役割を果たす。
リハーサルには「維持リハーサル」と「精緻化リハーサル」がある。
「維持リハーサル」とは単純に繰り返すこと。ピアノで言えば、単純に何度も弾くことに当たる。
「精緻化リハーサル」とは、意味を深く理解したり、関連情報と結びつけたり、利用シーンを想定したりと、周辺・関連情報によって記憶を強化し、その情報をより深く理解することだ。
ピアノで言えば、そのフレーズの造り(音楽語法など)や曲の中での位置付け(例えば「第2主題の転調された再現部」とか)を理解したり、音楽が表現するものをイメージしたり、といったことが考えられる。
したがって、「暗譜」の強化のためには、この「精緻化リハーサル」のやり方を見つけることが重要になってくるだろう。
暗譜における精緻化リハーサルとは
ピアノ曲の暗譜のための「精緻化リハーサル」を考えてみる。おおまかには次の3種類くらいがありそうだ。
また、暗譜には「視覚、聴覚、運動感覚、頭脳/分析」という4つの感覚・能力を使っているので、それを組み合わせることも意識した方が効果があがると思われる。
①反復練習における工夫
- 強弱、アーティキュレーション等を変化させる
- 指使いを意識する
- 自分の指の感覚を意識する(運動感覚)
- 大事な「拍」の和音を意識する
- チャンク(まとまり)やパターンを意識する
- 意識できるくらいゆっくり弾く
②理解を深めるための分析や練習(頭脳/分析)
- 楽曲分析(曲の構成、時代、様式など)
- 音楽の流れを感じとる(序、山谷、遷移、終結、…)
- 伴奏、声部(和声)など縦の構造を意識する
- どう弾きたいか音楽のイメージを考える
③関連情報を増やす
- 楽譜をよく読む(視覚)
- 聴きながら楽譜を見る(聴覚+視覚)
…と書きながら、ひとつ重大なことに気がついた。私のこれまでの「暗譜」は「中期記憶」までにしか入っていなかった!ということに…。
これまでに「レパートリー化」、つまりいつでも楽譜なしで弾ける曲をいくつか持ちたい、という願望をもち、今年も最低1曲を目標として頑張ってみたのだが…。すでに挫折している…(^^;)。
プロのピアニストは「長期記憶」に何曲ものレパートリーが入っているんだろうな〜。中期記憶から長期記憶に移すための方法も考えたいが、今のところまったく思いつかない…。
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