2016年8月20日土曜日

ピアノ音楽に求められる「プラスアルファ」とは?

少し前に読んだ本『コンクールでお会いしましょう―名演に飽きた時代の原点』(中村紘子著)の中に出てくる「豊かな社会」とか「名演に飽きた時代」といった言葉にいろいろ考えさせられた。





ピアニストに求められる演奏は変わる


録音技術のなかった時代、音楽は生で聴くしかなかった。まさに一期一会のライブ。そこでの演奏は、聴衆へのアピール(演奏以外でも…)やコミュニケーションがあり、自由で即興的なものであった。

それが、レコードやラジオの発明により、どこにいても、どういう環境でも、音源だけを繰り返し聴くことのできるものになった。

そのため「即興性には富んでいるもののミスやかすり傷の多い演奏は遠ざけられ、ミスのない無難なものが好まれる傾向」となり、演奏家も「まずはミスのない『機械的』な技術を磨き上げること」になる。

さらに「豊かな社会」となり、「その情報洪水のなかで芸術文化が質量ともに増えて多様化し、その価値も多元化」したことにより、演奏家には単なる「名演」以上のものが求められるようになる。


ピアノ演奏への「プラスアルファ」とは?


では「名演」以上のものとするための「プラスアルファ」とは何なのか? この本に書いてあることを要約してみる。


音楽には「商品」としてのニーズがあるのだが、情報化社会では、純粋な音楽的感動とは別に、メディアよって増幅される「音楽的感動」というものが増えていく。

それは、例えば感動を呼ぶ「人間ドラマ」などの「プラスアルファ」で増幅されたものだが、単純にニセモノということはできない。

しかし「プラスアルファ付き商品としての演奏」は大量消費の対象であり、長続きはしない。それに対して、クラシック音楽そのもののもたらす音楽的感動は、決して変わることがない。


ここには、著者、中村紘子さんの葛藤みたいなものを感じる。

「クラシック音楽そのもののもたらす音楽的感動」を大事にしたいし、それで音楽が盛んになってほしい。しかし、時代に合わせた「プラスアルファ付き商品」も、ピアノ音楽業界?が活性化するためには必要だ。

なんとなくスッキリしない…。


新しい時代のピアノ音楽?(思考実験)


…とここでいきなり、じゃあ「プラスアルファ」には何が考えられるのか、「新しい時代のピアノ音楽」とはどんなものなのか等、乏しい知識と経験をもとに?「思考実験」みたいなことをやってみたい。


最初に、自分自身がどんなピアノ演奏を聴きたいのか考えてみる。

本当に聴きたいのは、感動できる「新曲」である。いわゆる「現代音楽」の嫌なところ(不快な音、もったいぶった節回し、時間の無駄使い、等々)は聴きたくない。

従来の曲であれば、まるで新しい解釈による演奏。おっ!そんな解釈が、演奏があったか!と、嬉しい驚きを届けてくれるような演奏。

それから、エマールさんがオールドバラ音楽祭でやった「鳥のカタログ」のような演奏もいい。自然の中での演奏+演出。

「プラスアルファ」という意味では、新しい曲、新しい解釈、新しい演出、ということになるだろうか。


演出ということで、アイデア出しをしてみると…。

冬季五輪で「生ピアノ+フィギュアスケート」を競技種目に追加するというのはどうだろう? 採点の対象は、もちろんピアノ演奏も含まれる。ブニアティシヴィリがアイスショーでやってたものを、真面目な競技にするわけだ。

ピアノ版「シルクドソレイユ」みたいなものはありえないだろうか? ピアノの素晴らしい音響を立体的に構成し、ヴィルトゥオーゾたちが競演し、美しいダンスと組み合わせる、みたいな…。


そこまでいかなくても、ピアノ・リサイタルももう少し「プラスアルファ」を考えてもいいのではないだろうか?

例えば、リサイタルの後、ピアニストを囲んだカジュアルな話ができる場を作るとか。作曲者による解説付きの新作発表会(新作でなくても演奏機会の少ない曲でもいい…)とか。トークショー付きリサイタルとか(はすでにあるようだが、もっと普通にあってもいいのでは…)。


それから、リサイタルで弾かれる曲が偏っているのは何とかならないものか? 名曲・定番曲もいいのだが、あまり知られてないピアノの名曲もたくさんあるはずだ。

一般のピアノファンから曲をリクエストできると面白いかも…。

例えば、1年くらい前から、リサイタルで弾く曲のリクエストを募集して、その間、ピアニストは自分が弾きたい曲を YouTube にあげるなどの手段で「提案」して、それに対してファンの方は投票するなどして、実際のリサイタルで演奏する曲目を決める…とか…。

何となくではあるが、音源を聴くという楽しみ方はそれなりに残るとしても、今後の音楽の楽しみ方は「リアルでの体験」に戻っていくのでは?という気がする。なので、リサイタルの充実は重要だと思う。


話は「プラスアルファ」から脱線するのだが、メディアに期待したいのは「クラシック音楽そのもののもたらす音楽的感動」を軸に据えた番組を作ってほしい、ということだ。「人間ドラマ」で増幅された「音楽的感動」はそろそろウンザリである。

たとえば、スーパーピアノレッスンのような、一般のピアノファンが見ても面白いものとか、マルカンドレ・アムランの特集みたいなものとか、「ピアノマニア」みたいなドキュメンタリーとか…。



✏️ピアノマニア(Wikipedia)



あと、ピアノコンクールの取材も、日本人がショパンコンクールに高位入賞でもすれば、あとでドキュメンタリーがまとめられるのであろうが、そうではなく、最初からときどきニュースで流すくらいはやってもいいのでは、と思う。


…と話がだんだん発散してきたので、今日の「随想」はこの辺りで終わりにしよう…。



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