《鍵盤音楽史:現代》 4人目は、ドミートリイ・ショスタコーヴィチ(Dmitrii Shostakovich, 露, 1906-1975)。
一般的には、マーラー以降最大の交響曲(15曲)作曲家であり、15曲の弦楽四重奏曲も高く評価され「芸術音楽における20世紀最大の作曲家の一人」とされている。
…が、とりあえず今回はピアノ作品を中心に聴くことにする。多様なピアノ曲があって、お気に入りもいくつか見つかった。一方、好みでない曲も…(^^;)。
ドミートリイ・ショスタコーヴィチは、ピアニストであった母親からピアノの手ほどきを受け、1919年、革命直後のペトログラート音楽院でピアノと作曲を学んだ。「交響曲第1番 Op.10」は卒業作品。
芸術音楽作品を多数作曲しながらも、多くの映画音楽、バレエ音楽、劇付随音楽なども残している。
ピアニストとしても活動し、1927年の第1回のショパン国際コンクールで「名誉賞」のようなものを受賞している。このときの優勝者はレフ・オボーリン。
「シベリウス、プロコフィエフと共に、マーラー以降の最大の交響曲作曲家」「弦楽四重奏曲においても秀逸な曲を残し、芸術音楽における20世紀最大の作曲家の一人」という「巨匠」的な評価がされることが多い。
一方で、「社会主義政権のもと、作曲の技法を柔軟に扱いながら、当局への迎合とも反駁とも言い切ることのできない作品を創作し続けた」とか、「ソ連のプロパガンダ作曲家」、そしてのちには「自らが求める音楽と体制が求める音楽との乖離に葛藤した、悲劇の作曲家」などと…。どうも、一筋縄ではいかない作曲家のようだ。
ショスタコーヴィチの作風は多様である。彼は、ストラヴィンスキーの原始主義やベルクの表現主義の影響を受けた「現代音楽」的なところから出発し、「社会主義リアリズム」に転じていったとされてきた。
ユダヤ音楽の影響も指摘されており、ピアノ協奏曲第2番(1957年)第2楽章などにもユダヤ音楽が引用されているとのこと。
暗く重い雰囲気のものが多いとされており、諧謔性なども指摘されているが、バレエ音楽などにみられる抒情性や美しいメロディー、軽妙な舞踏音楽のような部分も忘れてはならないと思う。ポピュラー音楽も愛し、ジャズ風の軽妙な作品も少なからず残している。
一般的な代表作としては、交響曲第5番、第7番、第10番と弦楽四重奏曲第8番が挙げられる。また、歌劇『ムツェンスク郡のマクベス夫人』 はオペラの傑作の一つとされる。
ピアノ作品の代表作としては、「24の前奏曲とフーガ Op.87」「3つの幻想的舞曲 Op.5」「24の前奏曲 Op.34」「子供のノート Op.69」などが挙げられることが多い。
ちなみに、ウラディーミル・アシュケナージの CD『ショスタコーヴィチ:ピアノ作品集』には、「ピアノソナタ第2番 Op.61」「5つの前奏曲(1920年)」「格言集 Op.13」なども取り上げられている。
YouTube で聴いた範囲で私の個人的な好みを言わせて戴ければ、「24の前奏曲 Op.34」「24の前奏曲とフーガ Op.87」と二つのピアノ協奏曲(とくに第1番)…かな? あと、小品の中にもいくつか気に入ったものがあった。
ピアノ作品を年代順に並べてみた(出典:Wikipedia)。
- 5つの前奏曲 :1921
- ピアノ三重奏曲第1番 ハ短調 Op.8 :1923
- 3つの幻想的な舞曲 Op.5 :1925
- 2台のピアノのための組曲 嬰ヘ短調 Op.6 :1925
- ピアノソナタ第1番 Op.12 :1926
- 10の格言集 Op.13 :1927
- 24の前奏曲 Op.34 :1933
- ピアノ協奏曲第1番 ハ短調 Op.35 :1933
- ピアノ五重奏曲 ト短調 Op.57 :1940
- ピアノソナタ第2番 Op.61 :1943
- ピアノ三重奏曲第2番 ホ短調 Op.67 :1944
- 子供のノート Op.69 :1944
- 陽気な行進曲 Op.81 :1949
- 人形の踊り :1952
- ピアノ協奏曲第2番 ヘ長調 Op.102 :1957
- 24の前奏曲とフーガ Op.87 :1952
- 2台のピアノのための小協奏曲 Op.94 :1954
- グリンカの主題による変奏曲 :1957
以下、YouTube で聴いた音源(の一部)とその感想など。
二つのピアノ協奏曲はどちらも好きだ。ピアノとトランペットのための第1番は(たぶん)有名でアルゲリッチやトリフォノフなども弾いている。第2番は、もしかすると初めて聴いたのだがなかなか面白くていい。第2楽章も美しい ♪
ソロ曲で一番気に入ったのが「24の前奏曲 Op.34」(ピアノ協奏曲第1番と同じ 1933年、ショスタコーヴィチ 27歳のときの作品)。エリソ・ヴィルサラーゼさんの演奏いい ♪
有名な「24の前奏曲とフーガ Op.87」の方は、中にはいい曲もあるのだが、全体的にはそれほど面白いとは思えない。
1950年にライプツィヒで開催された第1回国際バッハ・コンクールの審査員を務めたショスタコーヴィチが、優勝したタチアナ・ニコラーエワの演奏に感銘を受けたことが、この作品を作るきっかけになったそうだ。当時初演もしたニコラーエワの演奏(↓)。
ちなみに務川くんが、2021年のエリザベート王妃コンクールでこの15番を弾いている。曲も演奏もなかなかいい ♪
ピアノソナタは 2曲あるのだが、どちらもあまり好みではない。とくに第1番はちょっと「現代音楽」的な印象?
ピアノ編曲版では「バレエ組曲第3番」からの "Elegy" という曲が美しい ♪ チャイコフスキーコンクールで優勝したマスレーエフが弾いている。
あと、アシュケナージが CD で取り上げている「3つの幻想的舞曲 Op.5」「格言集 Op.13」も少し聴いてみたが、私にはどこがいいのかよく分からなかった…(^^;)。
そして、代表曲に挙げられることもある「子供のノート(音楽帳) Op.69」も聴いてみたが、これも…(^^;)?
おまけ1。ショスタコーヴィチは編曲作品もたくさん残しているが、この(↓)ベートーヴェンのピアノソナタ第8番「悲愴」の第2楽章をオーケストラ版に編曲したものは、ちょっといい感じだ ♪ 管弦楽によく合う曲だと思った。
おまけ2。自分で弾く(練習する)とすれば、「24の前奏曲 Op.34」(第3番、第4番あたり?)、「24の前奏曲とフーガ Op.87」の中から選ぶことになるのかな…(^^)?
あと、家にある楽譜を探したら『ショスタコービッチ ピアノ作品集』(全音)があって、下記の作品が入っているので、いずれ試し弾きでもしてみようと思う ♪
- 人形の舞曲
- こどもの音楽帳作品69
- 3つの幻想的舞曲作品5
- アフォリズム作品13
- 5つのプレリュード
- 3つの小品
- ムルズィルカ
- 陽気なマーチ作品81(2台のピアノのための)
以上の主な出典は下記。
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