ここで使われている主題は、ベートーヴェンのお気に入りだったようで、4つの作品で使われている。一番有名なのが交響曲第3番《英雄》の終楽章だろう。
Op.35
🎼 List of works by Ludwig van Beethoven
この主題が使われている作品を時代順に並べるとこうなる(↓)。
- 12のコントルダンスWoO14の第7曲(1791-1802)
- バレエ音楽『プロメテウスの創造物』Op.43のフィナーレ(1800-01)
- エロイカ変奏曲 Op.35(1802)
- 交響曲第3番 Op.55《英雄》の終楽章(1803)
ちょっと紛らわしいのは、この主題は「バス声部+上声部(旋律)」でできているのだが、最初に登場するのは「バス声部」だけ(これが交響曲《英雄》の主題)で、上声部はあとで登場する。しかも、変奏曲の中では「バス声部」の方が目立っている。
つまり、2つの声部があたかも独立した 2つの主題のように扱われているのだ。
「エロイカ変奏曲」はこの「バス声部」のユニゾンで始まる(↓)。Wikipedia にならって、これを便宜上「エロイカ主題」と呼ぶことにする。
このあと、「エロイカ主題」は 2声・3声・4声と声部を増やしながら短く変奏されていく(序奏部)。そのあとに「プロメテウス主題」が上声部に登場する(↓)。このときバスの声部に「エロイカ主題」があるのが分かる。
そのあと 15の変奏曲が登場し、最後にフーガ風フィナーレが置かれている。これらは、
「…性格変奏であり、プロメテウス主題は原型をとどめないほどに自由に変奏されるが、序奏で提示されたエロイカ主題は一貫しており、最後に置かれたフーガの主題もこのエロイカ主題からとられている」(出典:Wikipedia)
…ということで、「『プロメテウスの創造物』の主題による…」という呼び方のほうが、作曲年代順で考えると正しいのだろうが、聴き慣れた《英雄》交響曲の主題のほうが前面に出ているように思えるので、「エロイカ変奏曲」でいいのではないかと思う。
以下、参考までに YouTube の音源を載せておく。
①12のコントルダンスWoO14の第7曲(1791-1802)
♪ Beethoven: 12 Contredanses, WoO 14 - No. 7
②バレエ音楽『プロメテウスの創造物』作品43のフィナーレ(1800-01)
♪ Beethoven ‐ Die Geschöpfe des Prometheus, Op 43∶ Finale Allegretto ‐ Allegro molto presto
③交響曲第3番《英雄》の終楽章(1803)
♪ Beethoven - Symphony No. 3 in E flat major, Op. 55 "Eroica" - IV. Finale: Allegro Molto
ちなみに、シプリアン・カツァリスがピアノ版の②と③を録音している。②はベートーヴェン自身の編曲、③はリストの編曲にカツァリスが手を入れたもののようだ。
♪ Beethoven - The Creatures of Prometheus (Finale), Op. 43 - Cyprien Katsaris Piano
♪ Cyprien Katsaris - Beethoven/Liszt/Katsaris: Symphony No. 3, Op. 55 “Eroica” (IV. Finale)
…ということで、やっとお気に入り演奏の紹介であるが、この曲に関してはこのピエール=ローラン・エマールさんの演奏(↓)しかない…(^^)♪
以前この演奏を聴いて「いい曲だなぁ ♪」と思ったことがあるが、今回何人かのピアニストの演奏を聴き比べてみて、改めてこの「演奏」の素晴らしさを実感することができた ♪
♪ Beethoven: 15 Variationen Es-Dur op. 35 (»Eroica-Variationen«) ∙ Pierre-Laurent Aimard
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