✏️British vs Russian piano education: What’s the difference?
この記事を書いたのは Alec Coles-Aldridge という人で、イギリスの Royal College of Music を卒業して、今はロシアの International School of Moscow で管楽器の主任?(Head)を務めている人。イギリスではピアノを教えた経験もあるそうだ。
内容は本人の経験に基づくもので、軽い読み物風のものだ。以下、意訳。
同じことをやるにしても、そのアプローチは国によって千差万別。食べ物や言語を見れば分かる。なので「ピアノの最善の学び方」に対するやり方・考え方が国によって違うのは驚くに当たらない。
すべての国の比較はできないが、まったく違うタイプのイギリスとロシアを比べてみよう。その両方を経験した者として、その違いに毎日のように驚いているので…。
以下に述べることは「平均の」学校の学生についての話である。いくつかの大きな違いを見てみよう。
1. 初見 vs 暗譜
最も大きな違いは譜読み(reading)に対する考え方だ。イギリスのピアノ教育では初見演奏(sight reading)を重んじる。私もそうだったが、ピアノ教師は一つの曲が完全に仕上がる前に次の曲に移る。
その目的は学生に楽譜を読むこと(to read the music)を学ばせること。なので、学生が暗譜で弾き始めたらそれは次の曲に移るときだということを示している。
一方、ロシアのピアノ教師はもっと少ない曲、しかも難しい曲に集中させる。曲は暗譜させられ、教え方としては教師のデモンストレーション(弾いてみせること)を通して行われることが多い。
ラフマニノフは並外れた記憶力を持っていたが、たぶんそれは、子どもの頃にピアノを学ぶ過程で身につけたものだろう。
2. ソルフェージュ
ソルフェージュとは "sight-singing" と呼ばれることもあるように、基本的には、初見で楽譜を見て歌うことである。「ドレミ…」がその手助けとなる。
ロシアのピアノ教授法には、ソルフェージュが含まれることが多い。そして「固定ド」が使われる。
イギリスでは、ピアノ教授法としてソルフェージュはあまり使われない。そして、使うときは「移動ド」である。
3. 態度(Attitude)
イギリスでは、多くのピアノ教師は学生にピアノの面白さ、楽しさを理解させようとする。
ロシアでは(全部がそうとは言わないが)、その方法は厳格さ、訓練、議論(strictness, discipline and controversy)で知られる。
ロシアの方法はピアノを学ぶことをより大変なものにしているのではないか?という疑問が残る。私と一緒に働いているロシアのピアノ教師はときどき、若い頃に習った先生の厳しさを冗談まじりで語る。
イギリスとロシアは同じゴール(excellence in piano playing)を目指しているはずなのだが、激励と訓練の使い方にはかなりの温度差がある。
もちろん、スケールを学ぶことを重視するなど、共通することも多い。
ベストな方法は両者の組み合わせにあるのだろう。ハードワークと楽しみ、テクニックと芸術的な感情表現、などの健全なバランス…。
読んでみて、ふ〜ん、そうなんだ…というレベルの感想しかないが、例えば、世界で活躍しているピアニストやコンクールで上位入賞するコンペチタなどを見ていると、結果としてはロシアの教育方法の方が成功しているように見える。
ところで、日本のピアノ教授法はどちらに近いのだろう…?
【関連記事】
《英国ピアノ教師の現状:生徒のモチベーションアップに苦労?》
《「ロシア・ピアニズムの贈り物」ノート0:紹介》
2 件のコメント:
こんにちは。ぷりんです。
ロシアのピアノ教授法。以前こちらでも紹介されていた浜松国際ピアノコンクールのテレビ番組で、牛田くんが倉敷の大学でロシア人の先生に教わっているシーンがあったのですが、そのあとの昭和音大の先生と比べても表現に重きを置かれているのが印象的でした。そのときからロシアのピアノ教育が気になっていたのですが、楽譜を買いに楽器店に行くと目に付くところに「ロシア ピアニズム」(大野眞嗣著・ヤマハミュージックメディア)があり購入しました。読んでみて、日頃不思議だったことが氷解しました。面白くて勉強になりました。もし、まだお読みでないようならいかがでしょうか。
娘は今、シューベルトの即興曲142-4を練習中です。シューベルトは地味ですが、意外に面白いようです。
ぷりんさん、こんにちは。
ずいぶん前に「ロシア・ピアニズムの贈り物」(原田英代著)という本は読みました。その前にネイガウスさんの「ピアノ演奏芸術―ある教育者の手記」という本も…。この辺りの本はとても役に立ちました。知識として(自分の弾き方に適用するなんて夢のまた夢…)ですが…(^^;)。
「ロシア ピアニズム」(大野眞嗣著)という本は知りませんでした。目次を見ると、けっこう具体的で面白そうですね。ご紹介、ありがとうございます。
シューベルトは、聴くのも好きですが、弾いてもけっこう面白いです。即興曲Op.142では一番やさしい142-2は練習したことがありますが、142-4は私にはたぶん無理ですね…。と言いながら、今練習しているソナタ14番の第3楽章は、私にとってはかなりのチャレンジですが…(^^;)。でも、今日の記事にも書いたように、練習は楽しいです ♪
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