1. 『マルタアルゲリッチ 子供と魔法』
面白すぎて一気に読んでしまった本である。
(音楽之友社、2011年、オリヴィエ・ベラミー著、藤本優子訳)
波乱万丈のアルゲリッチの半生記(2009年まで)であるが、感想文《アルゲリッチの本、一気読み! ♪》にも書いたように、簡単には紹介できないほど盛りだくさんの内容が語られている。感想文から少し引用すると…。
「本人の生い立ちや生き様から家族模様、ピアニストとしての興味の尽きないエピソードの数々、なぜあのように弾けるのかという謎を解き明かすヒントになりそうなこと、登場する『キラ星』のような多くの音楽家たち、彼らとの関わり方、などなど…」
…という感じの本である。
一つだけ、アルゲリッチのあの素晴らしい奏法の秘密を感じさせるスカラムッツァ先生の言葉をご紹介しておく。
「一つの音の成立には三つの段階がある…。まず筋肉を弛める。その状態から瞬間的に指先の肉を通じて重さが伝わる。次に跳ね返り(バウンド)。屈筋の収縮を受けながら弾んでくる。最後が動きの中断による休み。」
アルゲリッチのファンには必読の書と言ってもいいかもしれない。
2. 『楽譜を読むチカラ』
チェロ奏者ゲルハルト・マンテルという人の書いた本であるが、ピアノにも関係することや参考になることがたくさんあり、ピアニストとは視点が異なるだけに結構面白かった。
(音楽之友社、2011年、ゲルハルト・マンテル著、久保田慶一訳)
色々と参考になることがあったので、感想記事を3本も書いている。
《『楽譜を読むチカラ』チェロ奏者からピアノ練習のヒント ♪》
《『楽譜を読むチカラ』からピアノ練習のヒント♪その2》
《『楽譜を読むチカラ』から「いい演奏」のヒント ♪》
このブログの前身『ぴあの研究ノート』というタイトルのときに、抜き書きメモも作っている。相当気に入っていたようだ。
《「楽譜を読むチカラ」読書メモ1》
《「楽譜を読むチカラ」読書メモ2》
《「楽譜を読むチカラ」読書メモ3》
《「楽譜を読むチカラ」読書メモ4》
《「楽譜を読むチカラ」読書メモ5》
で、内容紹介であるが、ピアニストの今井顕氏による『書評』がとても分かりやすいので、そちらにお任せしたい…(^^;)…が、その中からちょっとだけ引用しておく。
「久保田のアレンジによってピアノの譜例もたくさん盛り込まれ、ピアニストにも魅力的な本として仕上がった」
「私がこの本を手に取ったときまず思ったのは『これはすばらしい、自分の授業で使いたい』ということだった」
3. 『ピアノ奏法―音楽を表現する喜び』
少し古い本であるが、ピアノの練習を考えるときにとても役に立つ。私の座右の書 ♪
(春秋社、1998年、井上直幸著)
ピアノ奏法に関して、技術的なことを丁寧に説明してある本である。その説明も分かりやすくてありがたいのだが、そのベースにある考え方にとても共感した。
第1章から「良い演奏とは?」というタイトルで始まることも、我が意を得たり!という感じだったのだが、その中に書いてある「『ピアノを弾くことが楽しい』と感じられるようになること」 という部分を読んだときには本当に嬉しかった。
私のような「下手の横好き」でもピアノを練習する意味があるのだと思えるメッセージだと感じられたからである…(^^)♪
技術的な内容の紹介は私の手には余るので、本書を読んでいただくしかないのだが、一応感想文を書いてあるので(↓)ご参考まで…。
《井上直幸氏の『ピアノ奏法』いい!座右の書にしよう♪》
4. 『バイエルの謎: 日本文化になったピアノ教則本』
ピアノ教則本「バイエル」の話なのだが、私の感想は「良質なミステリー小説」のような謎解きの面白さ!であった。
(音楽之友社、2012年、安田寛著)
この本の出発点は、日本文化に根付いた「バイエル」のことが実はほとんど分かっていない、という不可解な状況にあった。なぜ「バイエル」だったのか、誰が日本に持って来たのか、日本に伝わって以来140年近く使われてきたのはなぜか、初版本は残っているのか、そもそもフェルディナント・バイエルとは実在の人物か?などなど…。
これらの謎に挑んだ著者の波乱に満ちた探索の記録が、読者をどんどん引き込む魅力的な物語として展開されていく。なぜ急に「バイエルは古い」「日本以外では使われていない」ということになったか、という理由を探っていくあたりは実に興味深い。
もちろん、音楽的な観点からの、例えば「初版本」の成り立ちや、教則本としての構成などについても解き明かされる。「静かにした手」("Die stillstehende Hand"=ポジション移動・指の交差のない運指)などの意義についてはなるほどと思った。
その他、面白いと思ったトピックスのいくつかは私の感想文《『バイエルの謎』面白い!最高のミステリー ♪》に書いた。
下記はこの本からお借りした「バイエル」初版本の表紙。
5. 『蜜蜂と遠雷』
あまりに有名なので、ご紹介の必要もないかも知れないが…。
(幻冬舎、2016年、恩田陸著)
一応書いておくと、この小説は浜松国際ピアノコンクールをモデルにしており、コンクールに参加するピアニストの様々な物語を描いたもので、第156回直木賞(2017.1.19)、2017年本屋大賞(2017.4.11)を受賞している。
私自身、2015年の浜松国際ピアノコンクールをネット配信で楽しませてもらったので、この小説もとても興味深く、面白く読んだ。下記は、ピアノ音楽の視点から書いた私の感想文、ご参考まで…。
《『蜜蜂と遠雷』風変わりな感想文?》
以上、個人的な「ベスト5」でした。そのほかに今年読んだ本の一覧表は下記記事(感想文などの記事へのリンク付き)にまとめてあるので、興味のある方はどうぞ…(^^)♪
《ピアノの本棚 2017》
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