今日(5月5日)のラフォルジュルネはエマールさんの「鳥のカタログ」を堪能させてもらった。素晴らしかった ♪
一応の予習はしたのだが(→《メシアン「鳥のカタログ」(ラフォルジュルネ予習)》)、どこまで分かるか、というか楽しめるかという不安も少しあった。
行きの電車のなかで、予習のときに見つけた、ピアニストの中川賢一さんのブログ「鳥のカタログについて~ヨーロッパヨシキリ(2)」にあった楽譜の写真を眺めたりしたものの、それで分かるはずもなく…。
で、とにかく期待と少しの不安を抱えながら本番の時間を迎えた。
最初に、エマールさんから今日の演目についての丁寧な説明があった。もちろんフランス語なので通訳付き。
「モリヒバリ」「モリフクロウ」「ヨーロッパヨシキリ」の3曲を続けて演奏するが、それぞれの曲の前に鳥の声を使った音源「プレリュード」が流されるとのこと。
「プレリュード」は、エマールさんがベルナール・フォールという作曲家に依頼して作ってもらった「エレクトロ・アコースティック音楽」というものらしい。
鳥のさえずりや虫の音のような音、森の中のざわめきなどを合わせたような音源であったが、導入としてなかなかいい雰囲気を作り出していたと思う。
ピアノの演奏自体は、事前の不安のようなものはまったく忘れるほど魅力的な(引き込まれる)ものだった。やはり、ナマで聴くピアノの音は YouTube とはまったく違う音楽「体験」であり音響空間であるということを再認識した。
一番良かったのは最後の「ヨーロッパヨシキリ」。もっとも長い(30分ほどの)曲だが、様々な音響がピアノから次々と溢れ出て、最後まで飽きさせない。…というより、終わってからももっと聴いていたいと思うような時間の流れであった。
そう、聴いたのは「時間の流れ」であった。
ピアノの持つ多彩な音響にはあらためて驚いた。高音のトリルによるかすかな響きから、重低音による大地がうなるような響きが作り出す「空間」と、その中で活き活きと響きわたる様々な鳥の声…。その立体的な音響にも驚いたのだが…。
何よりも感じたのは、その多彩な音響により刻まれる「時間の流れ」であったように思う。
具体的に説明するのは、なかなか難しいが、古典派とかロマン派とかの音楽とは、根本的に作り方とか考え方が違うのではないかと思う。
まず、音楽の素材である「動機」や「主題」が、楽音(音符)の組み合わせではなく、鳥の声や自然のなかにある音を模倣したものである。しかし、単なる模倣ではなく、言ってみれば鳥の声にインスパイアされて紡ぎだした音響(連続した音群)みたいなもの。
その素材で、音楽は組み立てられていくのだが、その枠組みは3拍子とか4拍子とかではなく、Allegro とか Maestoso とかではなく…。表現も、rit. とか accel. でもなく、cresc. とか dim. でもなく…。といって、単なる効果音のようなものをつないだものでもなく…。
あえて言えば、邦楽のなかに近いものがあるのかも知れない。例えば、西洋音楽の形式には当てはまらない尺八の曲など…。
全体としては、「自然」の中にある「オーガニック」?な音やリズム感や時間の流れを、ピアノという楽器で最大限表現しようとした音楽、とでも言うのだろうか…。
まぁ、言葉で説明してもしょうがないのかも知れない。とにかく、十分にその良さが分かったかどうかは別として、メシアンの「鳥のカタログ」に、何かこれまで聴いてきたピアノ音楽にはない新しい魅力を感じた、ということは確かだと思う。
エマールさんに感謝 ♪!である。いい一日でした…。
【おまけ】
ねもねもさんのブログ(↓)で知ったのだが、エマールさんは6月にイギリスで行われる「オールドバラ音楽祭(Aldeburgh Festival)」(エマールさんがディレクター)でも「鳥のカタログ」を演奏するようだ。
その企画内容がすごい。早朝から真夜中まで、自然の中で自然を感じながら(鳥の声を聴くセッションや2時間以上のウォーキングなどもある…)、それぞれの時間帯にふさわしい「鳥のカタログ」を聴く、という感じなのだ。
場所などの知識がないので、全体像はよく分からないが、エマールさんの演奏は4回、次のような感じで行われる。
Sunday 19 June, sunrise to midnight
Catalogue d’Oiseaux
03:30〜Dawn Chorus(自然の鳥の声を聴く)
04:30〜鳥のカタログⅠ:Sunrise(40分)
(フィルム上映や礼拝など)
13:00〜鳥のカタログⅡ:Afternoon(50分)
(ウォーキング、コーラス、トーク)
19:30〜鳥のカタログⅢ:Dusk(40分)
(トーク)
23:00〜鳥のカタログⅣ:Night(40分)
なんだかすごそうだ。最後の"Night"では、ピアノの周りの床の上のクッションに座って、暗闇の中で(in darkness)で聴くようなことが書いてある…。
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