これは、下記の記事から引用させていただいたものだが、ダニール・トリフォノフが髪を振り乱して、プロコフィエフのコンチェルト第3番を弾いているところらしい。
✏️Big hair: Classical pianism meets show business(by Michael Johnson)
※追記@2023/03/21:記事は表示されるがイラストは非表示?
記事の内容も面白かったので、ちょっと引用しながら(英語なので意訳&よく分からないところは省略…)の感想など…。
「最近の若いピアニストは、注目されるために、ますます派手になってきているようだ。音楽の解釈もそうだが、ほとんどは行き過ぎたオーバーアクションによるものだ。みんな、ラン・ランになりたいのか?」
この筆者の判断は「ラン・ランはやり過ぎ、明らかに一線を超えている」ということのようだ。私もそう思う。
「それで聴衆は反応することもあるだろうし、高いチケットを買うこともあるだろう。だが、それは本気で(まじめに)コンサートを聴こうという人たちから、本来あるべき音楽体験を奪っている。」
「音楽評論家は、もうそろそろ、その辺りを咎めて本人の弁明を求める必要があるのでは?音楽で表現してほしいとはっきり言う必要があるのではないか?」
個人的に思うのは、とくに日本の「評論家」たちは、業界迎合的な「ヨイショ」記事が多いような気がする。音楽雑誌のコンサートやCDの評論はどれも同じような褒め言葉のオンパレードだ。ダメなものはダメとはっきり言って欲しい…。
「最近、ダニール・トリフォノフがプロコフィエフのコンチェルト第3番を弾くのを聴いた。椅子の上で飛び跳ね、髪を振り乱し、興奮しひきつけを起こすような弾き方…。それらがなければ、本来は5つ星の名演であったはずなのに…。」
上の絵はこのときの絵のようだ。同じような例として、カティア・ブニアティシヴィリもやり玉に挙がっている。
ただし、ピアニストの表情やアクションをまったく否定しているわけではない。微妙な問題だ、とも言っている。
チャールズ・ローゼン(アメリカのピアニスト、1927-2012)の書いた本『ピアノ・ノート』では、
“The gestures of the pianist are inevitably a visual translation of the musical sense.”
(ピアニストのジェスチャーは、音楽的な意味を視覚的に表したものにならざるをえない)
と、やや肯定的に書いてあるそうだ…。
…と書いて、たしかこの本は読んだはずだが…と思い出した。そんなこと書いてあったっけ?
で、その時の「読書メモ」を探してみると、「ピアノの身体性」のところにあった(↓)。
「また、ピアニストの身振りや顔の表情に対して、わざとらしいものに対しては批判的ではあるが、一方で『身振りは演奏の一部である』とも言っている。腕などの『優雅な動き』が直接音に影響することはないと言いながらも、間接的には(例えば脱力を促進することにより)いい弾き方を導き出している可能性は否定していない。」
でも、「わざとらしいもの」には批判的だったわけだ。
また、グレン・グールドの独特の弾き方についても触れてある。
「その奇行・奇癖にも関わらず成功したピアニスト」として…。重要なのは「にも関わらず」のところだ。あの独特な弾き方「ゆえに」賞賛されたわけではない。
それから、Alessandro Deljavan(読み方不明)というピアニストが紹介されている。前回のクライバーン・コンクールのセミファイナリストらしいが、その過剰な顔の表情(「顔芸」?)で話題になったようだ。
なぜそうするのか?と本人に聞いたところ、「そうしないと、自分の自然な感情を損なってしまうから…。音楽は私を泣かせたり絶叫させたりするものだから」と答えたらしい。
試しに "Alessandro Deljavan" で画像検索すると、最初の3つの写真がこれ(↓)。個人的には、彼の演奏を聴こうという気にはなれない、この写真を見ただけで…(^^;)。
この筆者も、ジェスチャー、というか聴衆とのコミュニケーションは必要だと言っている。例として、ブレンデルがあげられているが、文章だけではどんなコミュニケーションなのかはよく分からないが、聴いた(見た)人の印象として、次のような言葉が紹介されている。
「ピアニストと聴衆が一緒にその場にいて音楽に(演奏者にではなく)敬意を感じている」
…なんかいい感じだ ♪
まぁ、こういうことは人によって感じ方が違うのだとは思う。しかし、やはり基本的にはこの筆者に共感する。最後の一文(↓)がいい。
Great piano music works best in an atmosphere of quiet respect.
(偉大なピアノ音楽は静かな敬意の中で最高のものとなる)
トリフォノフはわりと好きなピアニストなので、ショービジネスのパフォーマーにはならないで欲しいと祈るばかりである。
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