✏️Why more and more pianists are opting for instruments costing $200,000
(なぜ多くのピアニストが20万ドルもする楽器を選びたがるのか?)
Fazioli(ファツィオリ)といえば、Steinway(スタインウェイ)がほぼ独占する "high-end piano"(いちばん高価なピアノ)の市場に、ドンキホーテのように挑み、1980年のプロトタイプ完成から短い期間で、そのブランドを確立したグランドピアノ専業メーカー。
グランドピアノを年間 140台ほど生産している。そのほとんどがヨーロッパをはじめアメリカ、カナダ、中国、日本などに輸出されている。
最近の人気で需要が高まっていて、生産規模を年間 160〜170台にする予定であるが、オーダーメイドなので 4〜8カ月待ちとのこと。
とはいえ、自らを "a boutique instrument-maker" と位置付けるファツィオリ社は、年間2,000〜2,500台のグランドピアノを生産するスタインウェイ($63,000〜)を目指しているわけではなさそうだ。
では、Fazioli とはどんなピアノなのか? ジュリアード音楽院の主任ピアノ技師である Stephen Carver 氏はこう語る。
「Fazioli は非常にきちんと作られていて、クリアなベルのような音(bell-like presence)と "line of sound"(音の伸び、歌う音?)を持っている」
「Steinways はどちらかというと暗い音、人によってはより豊かな(richer)と表現するサウンドを持っている。Fazioli と比べると、やや品質にばらつきがあり、弾きこなすのが若干難しい」
ちなみに、ジュリアード音楽院は 275台のピアノを持っているが、そのほとんど(97%)が Steinway で、Steinway グランドピアノの最大のオーナーである。他には数台のYAMAHAなど。Fazioli は5年前に1台購入し、今年追加の2台を発注しているという。
Fazioli を愛してやまないアンジェラ・ヒューイット(Angela Hewitt)の評価はこんな感じ…。
「(ピアノの)アクションが信じられないくらいタッチに反応してくれる(responsive to every variation in touch)。自分が思い描いた音を自分の指で生み出すことができる。他のピアノの音も美しいけど、あまり興味をひかれない。Fazioli ほど多彩な音が出せないから…」
Fazioli にとって一番重要な顧客はプロのピアニストだ。顧客の数より「誰が弾くか」が重要なのだ。ところが、未だにつきまとう「成金」的な印象のせいか、ファツィオリ社が期待するほどプロのピアニストやコンサートホールには受け入れられていないようだ。もちろん、増えてはいるのだが…。
先ほどの Carver 氏の意見は…。
「心理的な問題もある。人は変化には抵抗するものだから。それに、Steinway 社のブランド力、マーケティング力にはなかなか太刀打ちできないだろう」
社長のFazioli 氏は、有名ピアニストに頭を下げて「使ってくれ」と頼み込むつもりはないと語る。「品質で分かってもらいたい」(convince only through quality)そうだ。
しかし、そうは言っても、手をこまねいているわけでもない。Fazioli の良さを分かってもらうためのツールを最近開発したらしいのだ。
それが、昔の有名ピアニスト音源から「もし Fazioli で弾いたらどうなるか」を再現するソフトウェアである。例えば、グレン・グールドの録音から、その演奏で使うピアノを Fazioli に変えるとこうなる、という音源を作り出すもののようだ。
これは面白い ♪! ぜひ聴いてみたいと思ってネットを探してみたが見つからない。もう少し探してみるか…。(知っている人がいれば是非教えてください♪)
最後におまけ。意外なことに、ピアノ市場は伸びているという話。
この記事によると、例えばアメリカのピアノ市場(アコースティックのみ)は、2013年の 2.93億ドルから 3.04億ドルに 4%ほど増えている。最盛期には及ばないが、2009年から連続増加中だそうである。
急速に伸びているらしいのが中国市場。この 10年右肩上がりで、2005年に 2,000台未満だったグランドピアノの輸入台数が、2014年には 6,000台になったらしい。
市場が伸びて、Fazioli の生産台数が増えても、我が家に Fazioli が置かれることはまずないだろうなぁ…(^^;)。
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