自身の「予約演奏会」のために 12曲ものピアノ協奏曲を量産したウィーンでの人気絶頂期(1784〜1786年)が過ぎて、1年以上経って完成した作品。
自作目録には 1788年 2月24日に記入されているが、1787年初め頃から作曲されていたという説もあるようだ。演奏機会が来るまで途中で放置されていたのかも…(^^;)?
「戴冠式」という「愛称」が付いているせいもあると思うが、モーツァルトのピアノ協奏曲の中では人気曲ということになっている。私も何度も聴いていると思う ♪
…のだが、実はあまり評価しない人も多い。とくに専門家やモーツァルト愛好家にはあまり評判が良くないようだ。
例えば、「他の協奏曲に比べて深みがなく単純平明で工夫が感じられない」とか、「昔の自分のヒット曲を真似してモーツァルトらしく作っただけ」とか…。
でも、素直に考えると、モーツァルトの良さが分かりやすく表現されている曲とも言えるんじゃないか?…と単純に自分の感性だけを頼りに聴いている私には思える。とくに第2楽章の愛らしいメロディーは好きだ ♪
それから、この作品には未完成の(書かれてない)部分が多い。とくにピアノの左手は省略されているところが多く、第2楽章などは右手しか書かれていない。
モーツァルト自らが演奏する場合には必要がなかったから…という説もあるようだ。実際、省略されているのはアルベルティ・バスや和音など単純な伴奏音型が多いそうだ。
現在演奏されるものは、初版(1794)を出版したヨハン・アンドレが補筆したものがほとんどだが、この補筆も「ラルゲット主題の伴奏などは非常に拙劣」(アインシュタイン)という意見もあれば、久元祐子さん(↓)のように一定の評価をしている人もいる。
「アンドレ版は長く演奏されてきたためか、人々の耳になじんでおり、演奏者もあまり意識しないでこの版を使うことが多いようだ。 アンドレ版がかなりの程度『モーツァルト流』として成功しているからだろう」
なお、「戴冠式」という呼び名は、1790年のレオポルド 2世の戴冠式で演奏されたことに由来しているが、この式典のために作曲されたものではない。
同じ式典で演奏された第19番 K.459 も「第2戴冠式」と呼ばれることがある。
録音はそれほど多くないと言われている第26番だが、名演奏を聴き比べるには十分なほどの録音がある。その中からとくに気に入ったものを順不同で 4つほど並べてみる。
内田光子さん(1948 - )の演奏はこの作品に一番合っている感じがした ♪
ただ、ご本人の中では「モーツァルトのピアノコンチェルトというと、たいてい〝戴冠式〟を弾いてくれと言われるが、全曲の中で一番弾きたくない曲」なのだそうだ…(^^;)。それにしてはとても素晴らしい演奏だと思う。1987年の録音で、カデンツァは内田光子作。
マリア・ジョアン・ピリス(Maria João Pires、ポルトガル、1944 - )の演奏も、内田光子さんに負けず劣らず素晴らしく、この作品の良さをこれ以上なく表現していると思う。ピアノの音色が本当に魅力的だ。カデンツァはパウル・バドゥラ=スコダ作。
(トラックNo. 4-6)
ダニエル・バレンボイム(Daniel Barenboim、アルゼンチン、1942 - )の丁寧で安定感のある、そしてやや骨太の演奏もいい ♪ 1989年の録音。
(トラックNo. 7-9)
フリードリヒ・グルダ(Friedrich Gulda、オーストリア、1930 - 2000)とニコラウス・アーノンクール指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏(1983)。「名盤」として挙げている記事が多いので聴いてみた。
愛らしいピアノを「お姫様のよう」と評している人もいたが、ちょっと(グルダにしては?)可愛らし過ぎて軽過ぎて…というのもあるが、まぁ、嫌いではない…(^^;)♪
オーケストラのみの演奏部分で軽くピアノを入れたりもして、グルダ自身が楽しんでいる様子(ジャケット写真みたいに?)が感じられる演奏でもある。
番外編:小林愛実、神童だった 11歳のときの演奏。さすがだ ♪
参考:
✏️モーツァルト :ピアノ協奏曲 第26番「戴冠式」 ニ長調 K.537(PTNAピアノ曲事典)
✏️ピアノ協奏曲第26番 (モーツァルト)(Wikipedia)
✏️ピアノ協奏曲 第26番 ニ長調 「戴冠式」 K.537(Mozart con grazia)
【関連記事】
0 件のコメント:
コメントを投稿