この作品は、1785年2月11日にウィーン市の集会所「メールグルーベ」での予約演奏会で初演されることになっていたが、完成したのはその前日。ほとんどぶっつけ本番での演奏だったようだが、結果は大成功 ♪
前作の第19番までが、貴族や社交界の聴衆が期待する華やかな作品だったのに対し、初めての短調の曲であり、暗く不安げな旋律、激しい情熱の劇的な展開など、当時としてはかなり革新的なものであった。間違いなく時代を大きく進めた作品である。
貴族趣味?から一気に「ベートーヴェン」に近づいた名曲とも言えるが、当時の聴衆がよく理解してくれたものだ…とも思う。第19番と第20番との間で、モーツァルトの心中に何が起きたのか?…知りたいものだ。
第20番が初演から大成功を収め、このあとも 19世紀を通じて広く愛され演奏された数少ない協奏曲の 1つになったことから考えると、時代の流れ・雰囲気が変わろうとしていて、モーツァルトはその兆しを先んじて感知した…ということなのかも知れない…?
この曲はベートーヴェンやブラームスもよく弾いて(研究して)いたようで、カデンツァを残している。ベートーヴェンのカデンツァは今でもよく使われている。
他にもアルカン、クララ・シューマン、ブゾーニなどがカデンツァを作っている。モーツァルトのカデンツァもあったはずだが、残念ながら残っていない。
有名な曲なので、本当に沢山のピアニストが素晴らしい演奏を録音していて、聴き比べだけでも大変…(^^;)? でも、好きな曲なので何度聴いても大丈夫 ♪
ネットで「名盤」を検索すると、クララ・ハスキルとかフリードリヒ・グルダとか色々出てくるのだが、今回はもう少し新しい演奏・録音の中から、私の好きなピアニストを中心にご紹介したいと思う。
聴いた中で一番気に入ったのはピリスさん、マリア・ジョアン・ピリス(Maria João Pires、ポルトガル、1944 - )の演奏。ピアノの最初の音を聴いただけで惹き込まれる魅力がある。美しい音に加えて細かいニュアンスの表現力が凄いのだろう ♪
YouTube では二つの音源を見つけた。どちらも素晴らしいが、個人的には映像があるダニエル・ハーディング指揮スウェーデン放送交響楽団との演奏の方が好みだ。演奏自体はクラウディオ・アバド指揮モーツァルト管弦楽団との共演の方が整っている気はする。
(トラックNo. 4-6)
藤田真央くん(1998 - )の本当に美しいピアノの響きが楽しめる演奏もいい。本人作らしいカデンツァも素晴らしい ♪ オーケストラは Gurgen Petrosyan 指揮 Mariinsky Orchestra。2020年 2月の演奏。
ピョートル・アンデルシェフスキ(Piotr Anderszewski、ポーランド、1969 - )が Scottish Chamber Orchestra を 2005年に弾き振りしたものも、キレのある素晴らしい演奏だ ♪
(トラックNo. 1-3)
マルタ・アルゲリッチ(Martha Argerich、アルゼンチン、1941 - )が 2013年 3月にルツェルンで、クラウディオ・アバド指揮モーツァルト管弦楽団と共演した CD がある。これも、どっしりと落ち着いた風格があって、さすがアルゲリッチと思わせる ♪
ちなみに、アルゲリッチは日本でもこの第20番を演奏していて、BS放送の映像が YouTube にある。オケは Christian Arming が指揮する新日本フィル。2005年 1月27日。
私のお気に入りピアニストの一人であるヤン・リシエツキ(Jan Lisiecki、カナダ、1995 - )も、ややおとなしい感じはするが、いい演奏を聴かせてくれる。
♪ モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番・第21番:アルバム
(トラックNo. 1-3)
…と、お気に入りピアニストや気になるピアニスト、そして定評のある演奏はまだまだあってキリがないので、ご紹介するのはこの辺で終わりにしたい。
内田光子、バレンボイム、ブレンデル、ペライア、シフなどは、じっくり聴きたい演奏だ。
…と言いつつ、どうしても気になる演奏をあと二つほど聴いて(書いて)おきたい…(^^;)。
一つは、アルゲリッチをして「彼(師であるグルダ)の演奏がある限り私は(モーツァルトを)弾かない」と言わしめたフリードリヒ・グルダ(Friedrich Gulda、オーストリア、1930 - 2000)の演奏。これは聴いておかない訳にはいかない。
20番・21番・25番・27番が収録されているアルバムの音源があった。ピアノの音が明快で旋律の歌い方も素晴らしく心地良い。さすがの演奏だと思うが、今のアルゲリッチであればそこまで遠慮?する必要はないと思うのだが…。
(トラックNo. 1-3)
もう一人、「名盤」記事には必ずと言っていいほど登場するのに、私にとっては初めて聞く名前のピアニスト、クリフォード・カーゾン(Clifford Curzon、英、1907 - 1982)。これも一度は聴いておきたい。
第20番と第27番を収録したアルバムがあった。
(トラックNo. 1-3)
オーケストラも含めて全体的にアーティキュレーションがややまろやか、というのか角がない感じなのだが、拍やリズムの存在感はきちんとあって、心地よい響きがする。カーゾンのピアノの音も柔らかさを感じるが芯はしっかりあってとても魅力的である。さすが、歴史に残る名演奏だ ♪
ベンジャミン・ブリテンが指揮するイギリス室内管弦楽団との共演で、元は 1970年録音の LP(アナログ)レコードのようだ。
参考:
✏️モーツァルト :ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 K.466(PTNAピアノ曲事典)
✏️ピアノ協奏曲第20番 (モーツァルト)(Wikipedia)
✏️ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 K.466(Mozart con grazia)
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