この作品はモーツァルトのピアノ協奏曲としては珍しい短調の曲(第20番 ニ短調 K.466 とこの第24番だけ)。第20番よりさらに激しさ・悲壮感を増したものになっていて、当時の聴衆(貴族など)の社交的な趣味からは遠ざかっている。
ただ、現在では人気作品の一つになっている(録音回数 5位、上演回数 1位)。
作曲時期は、第23番とほぼ同時期の 1786年 3月 24日、オペラ「フィガロの結婚」が完成する直前である。予約演奏会用として書かれ、4月にブルク劇場で演奏されたと思われる。
モーツァルトのピアノ協奏曲の中では最大の編成である。オーボエとクラリネットの両方を採用し、ティンパニも入っている。
モーツァルトのカデンツァは残っていないが、モーツァルトの弟子であるヨハン・ネポムク・フンメル(Johann Nepomuk Hummel、ハンガリー、1778 - 1837)が作ったものが使われることが多いようだ。
この作品の解説には、必ずと言っていいほど「激しい」とか「暗い」などの形容詞が付くが、ベートーヴェン以降の協奏曲や交響曲を聴いている現代人(の私)の耳には、それほど激しい音楽には聴こえない。
私の好きなベートーヴェンに近づいた感じがして、その雰囲気だけでなく、シンフォニックな響きや曲の作りも気に入っている。
モーツァルトがこういう作品を作り始めた理由に興味があるが、はっきりしたことは分かっていないようだ。モーツァルト自身の個人的な環境や心境の変化なのか、芸術家としてこのままでは(流行りの貴族趣味に合わせるだけでは?)ダメだと思ったのか…?
この第24番も有名なので、9つのお気に入り演奏を並べた第23番ほどではないが、YouTube には多くの名演奏がある。
直感的に「いい!」と思った演奏 5つを選んでみたが、どの演奏もそれぞれ個性があって気に入ったので、順不同で聴いた順に並べてある。
ピョートル・アンデルシェフスキ(Piotr Anderszewski、ポーランド、1969 - )、2018年サントリーホールでの読響(指揮:Sylvain Cambreling)との共演。このピアニストは、私のお気に入りの一人で、期待を裏切られることはほとんどない ♪
ヴィキングル・オラフソン(Víkingur Ólafsson、アイスランド、1984 - )のモーツァルトは初めて聴いたような気がするが、なかなかいい ♪ パーヴォ・ヤルヴィもお気に入りの指揮者の一人。
グレン・グールド(Glenn Gould、カナダ、1932 - 1982)は、意外に真面目に(正統派的に?)弾いている印象。それでも、やはり素晴らしい ♪
(トラックNo.1〜3)
ゲザ・アンダ(Anda Géza、ハンガリー、1921 - 1976)は、褒めている記事があって、試しに聴いてみたのだが、すぐに気に入ってしまった。自由に感情を乗せて弾いているような感じなのだが、とても惹きつけるものがある。Camerata Academica of the Salzburg Mozarteum を弾き振りしている。
内田光子さん(1948 - )は、同じアルバムに入っている 23番ではオケとのバランスがやや気になったのだが、この 24番についてははそんな感じはまったくなく、素晴らしい演奏 ♪ カデンツァは内田光子作らしい。
第53回グラミー賞「最優秀インストゥルメンタル・ソリスト演奏賞」受賞アルバム。
♪ モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番/第24番 内田光子:アルバム
(トラックNo.1〜3)
おまけ。カデンツァのことを調べているときに、国会図書館の「レファレンス協同データベース」というサイトで、第24番のカデンツァに関する質問をたまたま見つけた。
国会図書館が所蔵しているカデンツァの楽譜には下記のものがあるようだ。
✏️モーツァルトのピアノ協奏曲K.491(第24番)のカデンツァ(国会図書館/ レファ協)
「アンドラーシュ・シフ、サルヴァトーレ・シャリーノ、アルトゥール・シュナーベル、レオポルド・ゴドフスキー、フェルッチョ・ブゾーニ、ヨハン・ネポムク・フンメル、アルフレート・シュニトケ、アンドレ・プレヴィン、ヴィルヘルム・ケンプ、ゲザ・アンダ、リリー・クラウス、パウル・バドゥーラ=スコダ、エドウィン・フィッシャー、ヨハネス・ブラームス、ガブリエル・フォーレ、エリック・ハイドシェックなど多数の楽譜を所蔵している」
参考:
✏️モーツァルト :ピアノ協奏曲 第24番 ハ短調 K.491(PTNAピアノ曲事典)
✏️ピアノ協奏曲第24番 (モーツァルト)(Wikipedia)
✏️ピアノ協奏曲 第24番 ハ短調 K.491(Mozart con grazia)
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