作曲されたのはピアノ協奏曲第20番の 1カ月後。そして前作同様、今回も初演前日の完成…。この短い期間に、しかも多忙な時期に、革新的でかつ完成後の高い 2つの協奏曲を立て続けに作れるモーツァルトはやはり天才…(^^;)!
この第21番は、ニ短調の第20番とは対照的にハ長調という明るい響きをもち、とくに緩徐楽章の美しさは比類ない素晴らしいものである。
この有名な(映画音楽でも何度か使われている)第2楽章は、メシアンが「モーツァルトの音楽の、全音楽の最も美しいページの一つ」と評したと言われている。
長調でありながら哀しいというモーツァルト音楽の典型例と言えるかも知れない。モーツァルト自身の言葉にある「悲しくもなければ嬉しくもない」を表現しているのかも…。
もう一つ、個人的なお気に入りポイントは第1楽章のト長調の第2主題(↓)である。
…なのだが、この記事(↓)によると、第1楽章の第2主題は実は二つあるようなのだ。
✏️モーツァルトは第2主題で遊ぶ―ピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467 第1楽章(音楽の深い森へ)
「協奏風ソナタ形式」では、(ピアノソナタなどと違って)提示部に「オーケストラ提示部」と「ソロ提示部」の二つがあり、オーケストラが第1主題・第2主題を提示したあとに、ピアノが加わって同じ第1・第2主題を提示することになっている。
ところが、この曲ではピアノソロが提示する第2主題(上の楽譜)はオーケストラが提示した第2主題と違うもので、ここで初めて登場する。だから新鮮な印象を受ける ♪
ちなみに、第20番ではオーケストラ提示部で第2主題を出さずにソロ提示部で初めて第2主題を出すということをやっているようだ。詳しくは上記の記事を参照。
それから、この作品はカデンツァを聴き比べるのも楽しい。モーツァルト自身のカデンツァが残されていないので、多くのピアニストが自作のカデンツァを披露している。
今回ご紹介する演奏でも、ラルス・フォークト、ファジル・サイ、藤田真央が自作カデンツァを弾いている。ピリスさんはルドルフ・ゼルキン作のもの。
この第21番も有名な曲なので、多くの名演奏がある。
ネットで検索しても、ディヌ・リパッティ、ロベール・カザドシュ、ゲザ・アンダ、アンネローゼ・ シュミット、バレンボイム、内田光子、ポリーニ、グルダ、ゼルキン、アルゲリッチ、ペライア、ブッフビンダー、リシエツキ…等々とキリがない…(^^;)。
なので、今回も個人的な好みを優先していくつかの演奏をご紹介したい。
聴いた中で一番気に入ったのはラルス・フォークト(Lars Vogt、独、1970 - 2022)の演奏。美しいピアノの音色とニュアンスに富んだ歌い方で、モーツァルトの「長調でありながら哀しい」という感じを実によく出していると思う。
(トラックNo. 1-3)
マリア・ジョアン・ピリス(Maria João Pires、ポルトガル、1944 - )とクラウディオ・アバドの演奏も定番と言えるほどの名演だと思う。
(トラックNo. 4-6)
ファジル・サイ(Fazıl Say、トルコ、1970 - )の演奏は(カデンツァやアインガングも含めて)独特なところがあるが、その「変化球」の部分も含めて本格的な音楽という感じがして、本当に素晴らしいピアニストだと思う。このモーツァルト、好きだ ♪
そしてこの曲に関しては、以前から気に入っている演奏がある。CD やリサイタルではなく、2011年のチャイコフスキー・コンクールでのソン・ヨルム(Yeol Eum Son、韓国、1986 - )の演奏。改めて聴いてみたが、やはりいいと思う ♪
私のお気に入りピアニストの一人であり、モーツァルトに定評のある藤田真央くん(1998 - )だが、この演奏に関しては実はあまり好みではなかった。TV放送の録画なので音質の問題もあるかも知れないが、なぜかいつもの精彩が感じられない…。
本人作のカデンツァも面白いのだが、少しやりすぎの感も否めない…かも…(^^;)?
参考:
✏️モーツァルト :ピアノ協奏曲 第21番 ハ長調 K.467(PTNAピアノ曲事典)
✏️ピアノ協奏曲第21番 (モーツァルト)(Wikipedia)
✏️ピアノ協奏曲 第21番 ハ長調 K.467(Mozart con grazia)
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