《鍵盤音楽史:現代》 10人目の作曲家は、ヴィトルト・ルトスワフスキ(Witold Lutosławski, ポーランド, 1913-1994)。
実は、5年以上前にルトスワフスキのピアノソナタに遭遇していて、とても気に入った作曲家だった ♪…のだが、それ以来そんなには聴いていない…(^^;)。
ヴィトルト・ルトスワフスキは、20世紀ポーランドを代表する作曲家、ピアニスト。ワルシャワ音楽院でピアノと作曲でディプロマを取得している。
第二次世界大戦後の「スターリン時代」から脱却するために、西側の前衛音楽の吸収を積極的に行う中で、1950年代後半からポーランド出身の作曲家が次々と頭角を現していく。
その先鞭をつけたのがルトスワフスキであり、「ポーランド楽派」とも呼ばれて、のちのペンデレツキ、グレツキなどにつながる。
作風は、第二次大戦前には新古典主義的、大戦後は民族主義的な傾向にあり、そして1960年代には偶然性を取り入れた前衛の旗手として見なされる。また1970年代以降は円熟した管弦楽の語法によって緊張感と優美さを兼ね備えた音楽を実現する。
十二音技法、偶然性などの前衛的手法も取り入れながら、実験音楽というレベルにとどまらず、音楽性豊かな作品を作り上げているのは素晴らしいと思う。
代表作品としては、「管弦楽のための協奏曲」「葬送音楽」「交響曲第2番」「チェロ協奏曲」などの管弦楽作品が挙げられることが多いが、ピアノ作品も充実している。
とくに「ピアノソナタ」は、美しいピアノの響きの充実度が素晴らしく、代表作と言ってもいいのではないかと思われる。
ザルツブルク音楽祭からの委嘱により書かれ、クリスティアン・ツィメルマンに献呈された「ピアノ協奏曲」も、なかなか聴きごたえがある ♪ 作曲家自身が指揮するオーストリア放送交響楽団とツィメルマンの独奏で 1988年8月19日に初演された。
また 2台ピアノの「パガニーニの主題による変奏曲」も、アルゲリッチなどによってよく演奏されているようだ。
ちなみに、ハ長調の連弾曲「思い出のメロディー」は「ピティナ・コンペ課題曲2022:連弾中B級」になっているようだ。『ヤマハピアノライブラリー こどものための現代ポーランド ピアノ連弾曲集』に収録されている。
PTNA では「思い出のメロディー」(A Tune I Once Heard)だが、「ふと耳にした調べ」(An Overheard Tune)と呼ばれることもある。原題は "Zasłyszana melodyjka"。
ピアノ関連作品を年代順に並べてみた。Wikipedia をベースにしているが、抜けている作品(★印)もいくつかあるようなので、補足している。
- 前奏曲:1922
- 子守歌 ホ長調:1926
- 3つの前奏曲:1927
- 詩曲:1928
- 変奏曲:1929
- キメラの踊り:1930
- ピアノソナタ:1934
- 前奏曲とアリア:1936
- 2つの練習曲(2 Studies):1941-2
- パガニーニの主題による変奏曲:1941(2pf)
- ★民謡集(Melodie Ludowe):1945
- 牧歌集(Bukoliki):1952
- ミニアチュア:1953(2pf)
- 3つの若者のための小品:1953
- An Overheard Tune:1957(4手)
- インヴェンション:1968
- ピアノ協奏曲:1987
- ★ロクサーヌの口づけ(Pocałunek Roksany):?
- ★冬のワルツ(Zimowy Walc):?
「ピアノ作品全集」の CD では、次の二つがよく登場する。
ピアノ:Giorgio Koukl、Virginia Rossetti
収録曲は下記。
- ピアノソナタ
- 牧歌
- 若い人たちのための3つの小品
- ロクサーヌの口づけ(Pocałunek Roksany)★
- 冬のワルツ(Zimowy Walc)★
- 民謡集(Melodie Ludowe)
- 2つの練習曲
- インヴェンション(2つの版)
- ふと耳にした調べ(4手)
- 小品(Miniatura)(4手)
ピアノ:Corinna Simon
収録曲は下記。
- 牧歌集(全5曲)(1952)
- 2つの練習曲(1941)
- 民族のメロディ(全12曲)(1945)
- 若者のための3つの小品(1953)
- インヴェンション(1968)
- 思い出のメロディ(連弾)(1957)
- ピアノ・ソナタ(1934)
以下、YouTube で聴いた音源の主なもの。
上記二つの CD のプレイリストは下記。
♪ Lutosławski: Complete Piano Music(Giorgio Koukl)
♪ Witold Lutoslawski: Complete Piano Works(Corinna Simon)
これ(↓)は 2台ピアノの「パガニーニの主題による変奏曲」。アルゲリッチとネルソン・フレイレの共演。「Tokyo, October 2003」とある。
この曲にはオーケストラ版(ピアノ協奏曲的…)もある。スティーヴン・ハフの演奏。
ピアノ協奏曲はツィメルマンの演奏で…。
ピアノソナタを最初に聴いたのはたぶんこの演奏(↓)。弾いているのはポーランドの若手ピアニスト Julia Kociuban。2015年チャイコフスキーコンクールのセミファイナリスト。
主な参考記事は下記。
✏️ヴィトルト・ルトスワフスキ(Wikipedia)
✏️ルトスワフスキの楽曲一覧(Wikipedia)
✏️ポーランドの現代音楽(Wikipedia)
✏️ヴィトルト・ルトスワフスキ(京都賞 1993年受賞)
✏️ルトスワフスキ 1913-1994(PTNAピアノ曲事典)
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