2019年10月25日金曜日

どんな楽曲でもグレン・グールド!Dear Glenn ♪

ヤマハが研究開発中の「AIピアノ」"Dear Glenn" のお披露目が、9月7日にオーストリアのリンツ市で開催された世界最大規模のメディアアートの祭典「アルスエレクトロニカ・フェスティバル」で行われた。

その時のコンサートの一部が 3日ほど前に YouTube にアップされたので聴いてみた。




詳しいことは、下記の記事や公式サイトに譲るとして、感想などを書いてみたい。

✏️ヤマハ、伝説的ピアニストのグレン・グールドらしい音楽表現で演奏するAIシステムを初公開(2019.8.30 13:14)



YouTube で公開された「演奏」は、バッハの《ゴルトベルク変奏曲》のアリアと《フーガの技法 2台チェンバロのための鏡像フーガ》。鏡像フーガはフランチェスコ・トリスターノとの「共演」で、グールドは演奏したことはないそうだ。

リンツ・ブルックナー管弦楽団のメンバーとの《トリオ・ソナタ》(BWV1038)は、残念ながら YouTube の動画(↓)には含まれていない。

 Dear Glenn - Concert Film


聴いた感想は…録音のせいもあるのだろうが、音にツヤがなく、ややぶっきらぼうな、グレン・グールドを真似たピアニストが弾いている…といった印象。

トリスターノとのアンサンブルは面白いのだが、気のせいか、どことなく機械的な感じがしないでもない。

自動演奏でここまで出来ることには驚くが、個人的にはまだ「鑑賞」の対象とは思えない。AIや自動演奏の技術の進化を見る面白さはあるし、「共演」はエンターテインメントとしてはいいと思うが…。


ヤマハの公式サイトに Bruce Brubaker というピアニストのインタビュー記事が載っている。ちょっと興味をひかれた部分を抜き書きしておく。


「今でも身体を使って音楽を奏でている私たちが、自分たちがやっていることの意味をより微細に理解する上で、こうした知識が役に立つのは興味深いと思います」

「個人的にDear Glennが特に素晴らしいと思うのは、プロジェクト自体ではなく、未来に私たちを待ち受けているものについて大いに語ってくれる点です。AIは、人間のプレーヤーの芸術的感性や精神をとらえるために活用できるのです」

「AIが録音だけではなく、あるテーマの微妙なニュアンスの理解を追求してあらゆる芸術作品を生み出せる未来が容易に想像できます。人による演奏の世界が急速に変化し続け、録音が20世紀に普及した後の頃のように、ある時点では、人間が演奏することの価値や意味が再び問い直される時が来るのではないでしょうか」

「このプロジェクトで私たちが聞く演奏は、機械的ではなく、どこか人間味を強く感じさせる表現力豊かなものだという感覚をもたらしてくれます。もちろん、私たちはこれまで、人間がある感情やアイデア、思想といったものを抱いて音のパターンに置き換えて、それを別の人が受け取ることで、初めの人と類似の体験をすると考えてきたわけですから、表現力とは何か、というそもそもの問題は残ります」


AI技術やそれによる演奏が、人間によるピアノ演奏の「意味をより微細に理解する」上で役に立つ、「人間のプレーヤーの芸術的感性や精神をとらえるために活用できる」といった意見にはまったく賛成である。

名ピアニストの演奏がなぜ素晴らしいかということが、こういう技術で解き明かされていくとすれば、それはとてもワクワクすることだし、大いに期待したいと思う。

また、こういうものの進化により「人間が演奏することの価値や意味」や「表現力とは何か」など、芸術の本質的な意味があらためて問い直されるようにもなるのだろう。


作られるピアノ曲自体も変わっていくのかも知れない。

紙ロールを使った第1世代自動ピアノ?が発明されたときに、自動ピアノでしか演奏できない、つまり人間の10本指を超える声部があったり、人間業ではとても弾けないリズムやテンポを使った作品を作ったコンロン・ナンカロウという作曲家がいた。

今回は、紙ロールにたくさんの穴を開けるだけではなく、もっと細かい演奏の指定もできるし、「グレン・グールド風に」みたいな「演奏スタイル」を楽譜に書き込むことさえできるようになったわけだ…。


で、久しぶりに本物の(…といっても録音ですが…)グールドのゴルトベルクが聴きたくなって、コレ(↓)を聴きながら本稿を書いているところ…(^^)♪





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