人前で弾くつもりのない(機会もない…)私にとって関係ないとも思ったが、せっかく借りたので一応読んでみた。そしたら、結構参考になりそうなことが書いてあった。
大場ゆかり 著(音楽之友社 2017/11/7)
*
著者の大場ゆかり氏は人間環境学の博士で、スポーツ選手・音楽家等を対象とした心理的スキルトレーニングやストレスマネジメントが専門。武蔵野音楽大学では「メンタルトレーニング入門」等の講義を担当しておられるとのこと。
この本は「ムジカノーヴァ」の記事などが元になっていて、80ページもない薄い本なのだが、中身は濃い。心理学などの専門的なことが、とても分かりやすく説明してある。
ピアノを一生懸命練習して、いよいよ本番!となったときに、本番で成功する(失敗しない)ためにはどうすればよいか?
そのためには、曲が弾けるようになるという技術的な練習だけではダメで、本番で成功するために心身のコンディションを整える準備、つまり「心理スキルトレーニング」(メンタルトレーニング)も必要だということが書いてある。
*
この本は「しくみ解説」「5つの基本スキル」「実践」という3つのパートからなる。5つの基本スキルは下記。「実践」には練習力・本番力・演奏力について書かれている。
- イメージの活用
- 緊張のコントロール
- ストレスマネジメント
- 注意のコントロール
- 目標設定
これらすべてを解説する能力も気力?もないので、とくに参考になった「注意のコントロール」と「練習力」という話について少し書いてみることにする。
*
「注意のコントロール」というのは「集中力」のこと。最近「ミスをせず止まらずに弾き通す」ためには集中力を持続することが大事なのでは、と思い始めている。でも、集中力を持続するにはどうすればよいのかがよく分からない。
ヒントになりそうなのは「集中が途切れるのは?」に書いてあったいくつかの阻害要因。
- 他のことに気をとられたとき
- 疲れてきたとき
- 終わりが見え始めたとき
- うまくいかないとき
- 自他に対する不満・不安があるとき
- 環境要因(暑さ、寒さなど)
逆に「注意をコントロールする」つまり集中を切らさないための方法としては、これといった特効薬はなく、訓練するしかないようであるが、いくつかのヒント(↓)はある。
- 自分が今すべきことだけを考える
- ひとつひとつ…
- ポーカーフェイスを装い続ける
- 自動操縦(自動化)は必要だが意識しないこと
- 注意はあまり高まりすぎてもいけない
*
次に、「練習力」のところで、まずハッとさせられたのは「練習のための練習」と「本番のための練習」という言葉。
私にとっては人前で弾く「本番」というものは存在しないのだが、それでも自分なりにその曲にOKを出す瞬間というのがある(自己満足・自己判断ではあるが…)。
通し練習の「最後の仕上げ」みたいなことなのだが、これまでの練習ではそこに向けて仕上げるという意識があまりなくて「練習のための練習」あるいは「上達のための練習」みたいなことになっていたと反省…(^^;)。
それから練習方法の話で、「全習法」と「分習法」というのがちょっと参考になった。ある課題があったとき、その全体をひとまとめにして取り組むのが「全習法」、課題をいくつかに分けて練習するのが「分習法」である。
「分習法」では、例えば ABC という3つの課題があるときに、どういう順番で練習するかということで3つの方法(↓)があるとのこと。これは、ABCを曲を構成するブロックと考えれば、1つの曲を練習する順番に応用できそうだ。
完全分習法
A → B → C → ABC
累進分習法
A → B → AB → C → ABC
反復分習法
A → AB → ABC
私が今やってるのは一番目。それぞれのブロックを練習してから、最後に通し練習をしている。他の方法も一度試してみるかな…。
*
おまけ。練習量のところに書いてあった次の話は興味深かった。ピアニストになるってやはり大変なんだ…と改めて感心?した。
「国際的なコンクールで本戦進出の域に達するには、13歳までに2,500時間以上、17歳までに6,500時間以上、21歳までに1万時間以上を要すると言われています」
いわゆる「1万時間ルール」などと言われている話だが、5歳で習い始めた場合の練習時間を試算したグラフ(↓)が載っていた。ご参考まで…。
0 件のコメント:
コメントを投稿