来日は2回目で、1回目は2013年に大阪のいずみホールで室内楽に出演したとのこと。ただこのときは、エレーヌ・メルシエというピアニストの代役だったようだ。なので、日本でのリサイタルは今回が初めて。
そのリサイタルの案内サイトには、「品格をにじませ絶妙な音色を紡ぎ出す若きピアノの詩人」と紹介してあってちょっと期待したくなるような表現ではある…。
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パヴェル・コレスニコフ(Pavel Kolesnikov, ロシア, 1989〜)は、2012年カナダのホーネンス国際ピアノコンクールで優勝したあと、各地で活躍している若手(28歳)ピアニストだそうだが、プロフィールなどの情報はそれほど多くはない(↓)。
✏️ホーネンス国際ピアノコンクールのプロフィール
✏️本人のサイト
✏️ピアノ・エトワール・シリーズ Vol.33(27日のリサイタル案内)
"BBC Radio 3"の"New Generation Artists" にノミネート?されたこともあるようだ。2016年には「ディアパソン・ドール年間賞」というのを受賞している(↓)。
✏️ディアパソン・ドール年間賞の受賞者が発表ですよ発表ですよ
この賞の対象となったのが 『Chopin: Mazurkas』というCD(↓)。ハイペリオンのサイトでサンプル試聴はできるが、これだけではよく分からない。
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で、とりあえず YouYube で音源を探していくつか聴いてみた。音源の数はそれなりにある。まずは、2012年のホーネンス国際ピアノコンクールでのセミファイナル。
♪ '12 HONENS SEMIFINALS: Pavel Kolesnikov | Solo Recital
ベートーヴェンの「月光」ソナタ。第1楽章、なかなかいい。粘りすぎずちょうどいいバランスでクリアな音が冴える。第2楽章もいい。ところが、第3楽章がちょっときつい感じ、無理やり弾いているような印象。
シューマンの「子供の情景」はまずまず…。
ショパンのソナタ第3番も好演。第3楽章 Largo の美しさは絶品…と思って聴いていたのだが、なぜだかここでも最終楽章がどうもいただけない。リズム感などが私の感覚と合わない…(彼の個性なのかもしれないが…)。コンクールなので少し緊張している…?
コンクールで優勝したとき、BBCミュージック・マガジン誌が「とてつもない透明感、確固たる音楽性、きわめて美しい」と称賛したそうで、たしかに音色はクリアで美しい。
次に聴いたのがシューマンの幻想曲。
♪ Pavel Kolesnikov: R. Schumann Fantasia in do maggiore, op. 17, I
♪ Pavel Kolesnikov: R. Schumann Fantasia in do maggiore, op. 17, II
♪ Pavel Kolesnikov: R. Schumann Fantasia in do maggiore, op. 17, III
悪くはないのだが、1曲のなかで微妙に印象が変わる。なので、全曲通して聴いたあとの「満足感」が微妙。つかみきれない印象…とも言える…?
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その他、YouTube にあったバッハ、モーツァルト、ショパン、スカルラッティなどを一通り聴いてみたのだが、やはりよく分からない…というのが正直な感想。
不思議な印象だ。私にはよく分からないが、たぶんとても上手いんだと思う。音もクリアで、私の好みの音に近い。なので、曲によってはとてもいい。
なのに、何というか、今ひとつ引き込まれる感じがない。大雑把に言ってしまうと、全体的に軽い印象。あっさりしていて、味わい深さのようなもの?があまり感じられない。
なので、残念ながら今回は「お気に入り」にはならなかった。ただ、まだ若いのでこの先「化ける」または成熟する可能性は十分にあると思う。それだけの力は感じさせる。
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おまけ。コレスニコフの演奏を聴いて感じたことを何とかうまく表現できないものか?といろいろ考えて、一つ思いついたたとえが下記。
NHKとかのアナウンサーがとても「正しい」日本語で、例えば宮沢賢治の童話を朗読している。とてもいい声だし、イントネーションなども正しく、非の打ち所のない語り口なのだが、ちっとも面白くも味わい深くもない。
ちょっと言い過ぎかもしれないが、ピアノの演奏にもそういうものがあるような気がする。
これと対象的なものとして思い出したのが、学生時代のころ聞いていた、たぶん NHKラジオ の「朗読の時間」。主に俳優の人がとても味のある語りを聞かせてくれていた。今でもやっているのだろうか?
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