一昨日に続いて、昨日のラフォルジュルネでは、フランソワ=フレデリック・ギィ(François-Frédéric Guy)を初めて聴いた。
フランソワ=フレデリック・ギィはこんな風貌(プロフィール)のピアニスト(↓ LFJサイトから引用、写真も)。
ドイツ音楽の名手として知られ、ベートーヴェンの全32曲のピアノ・ソナタと全ピアノ協奏曲(指揮:ジョルダン)を録音している。これまで、サヴァリッシュ、ハイティンク、ハーディング、サロネン、ナガノらと共演。多くの現代作品の初演を任されており、近年はオーケストラの弾き振りにも積極的に取り組んでいる。
実は、このピアニストの名前を初めて知ったのは、ねもねも舎の次の記事。
ドイツ音楽(ベートーヴェン)が得意なフランス人というのがちょっと気になっていた。上の記事によると、フランス人のドイツ音楽は日本人にあまり評判がよくないらしいのだ。
それが、ラフォルジュルネでベートーヴェンのソナタだけのプログラムをやるというので、迷いなくチケットを購入した。のだが、やや「期待と不安」という感じではあった。曲は、第2番 イ長調 op.2-2 と第17番 ニ短調 op.31-2「テンペスト」。
で、結果から言うと「期待と不安」がそのまま「いいなぁ♪」と「う〜m?」になった。というか、前者は私、後者はカミさんの感想。…というように珍しく意見・感想が分かれた。
まぁ、私の中でも諸手を挙げて賛成!という感じではないのだが、分かりやすく意見の相違をまとめてみると…。
「いいなぁ♪」の中身は…。
①音が固まりとして気持ちよく響いて「音楽」が伝わった ♪
②勢いがあるというのか音楽の「ノリ」が気持ち良かった ♪
③グールドのように所々で歌いながら弾くのは面白かった ♪
一方、「う〜m?」の中身は…。
①音が団子になってクリアじゃないところがあった…
②指が回り切れずに破綻しそうな(ニア)ミスも結構あった…
③うなり声のような「歌」はやっぱり邪魔…
まぁ、カミさんの意見「う〜m?」の方も分からないではない。
①については、音楽の解釈というか、どういうベートーヴェンに仕上げたいのか、表現したいのかということにもよるのだと思う。
ギィさん(なんか「爺さん」みたいで語呂が悪いが…)の音は、ちょっと太めで、まろやかではあるがちゃんと芯はあるという感じ。私はベートーヴェンにはあっていると思った。
ただ、ややペダルが多すぎる感じで、おそらく本人がそういう響き・音質を出そうとしているのだと思うが、全曲をそういう感じでグイグイ来られると、ちょっと疲れるところもある。もう少しメリハリが、とくに緩むところや効果的なノンペダルの箇所があってもいいかも知れない。(ここはカミさんも同じ意見)
余談ではあるが、この辺り、音符の一つ一つが見えずに「音楽」が前面に出てくる演奏と、逆に音符の一つ一つはしっかり弾けているのだが「音楽」が聴こえてこない演奏、みたいなとらえ方もあるかもしれないと思った。(一度考えてみたい…)
②については、実は私もハラハラしながら聴いていた。ただ「ハラハラ」の内容が私とカミさんでは違っていたようだ。
私は、この気持ち良い「ノリ」(音楽の流れ)が途切れませんように、という感じ。ハラハラしながらも勢いのある音楽を楽しめた。とくに最後、テンペストの最終楽章は聴きなれた曲なのに、活き活きとした音響に新鮮ささえ感じていた。よかった ♪
対してカミさんの方は「元ピアノ科の音大生」の聴き方とでもいうのか、指がもつれるたびにヒヤヒヤしていたようだ。まぁ、私の方はミスに気づくほど曲を熟知していない、というのもあるかもしれない…(^^;)。
③については、私もない方がいいとは思う。…のだが、グレン・グールドをナマで聴いたことがないので、目の前で(4列目の席で)、実際に歌いながら弾くピアニストを聴くというのは初めての体験だったので、単純に面白がっていただけである…(^^)♪
ギィさんの演奏スタイルは「没入型」かも知れない。演奏が始まると、ほとんど鍵盤とにらめっこをするような姿勢で弾きまくる印象。
座席が右のほうだったので、残念ながら手の動きは見えなかったが、わざとらしい動きは感じられず、全体としては今演奏している作品に真摯に向かい合っている雰囲気を醸し出している。そのあたりは好感が持てる。
音楽の聴き方・楽しみ方は人によって違っていて当たり前だと思う。どんな音楽・演奏が好きか、あるいは嫌いかというのも人それぞれだ。ただ、自分自身の感じ方には素直でありたいと思うし、自信を持ちたいと思っている。
昨日聴いたフランソワ=フレデリック・ギィのベートーヴェンは、とても面白かったし楽しめた。都合によりマスタークラスを聞けなかったのは残念であるが、今年のラフォルジュルネも行って良かったと思う…(^^)♪
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《LFJ:フランソワ=フレデリック・ギィ ♪》
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