昨日はラフォルジュルネで、ネルソン・ゲルナー(Nelson Goerner)を初めて聴いた。
ネルソン・ゲルナーはこんなピアニスト(↓ LFJサイトから引用、写真も)。
1969年アルゼンチン生まれ。ブエノスアイレスのリスト・コンクールで優勝し、アルゲリッチに才能を見出されて渡欧。1990年、ジュネーヴ国際コンクール第1位。クリヴィヌ、N.ヤルヴィ、ルイージ、ロンドン・フィル、スイス・ロマンド管、ドイツ・カンマー・フィル、アルゲリッチ、イッサーリスらと共演。
曲目は以下。私の好みからするとドビュッシー以外はそれほどではないが、こういうプログラムもたまには面白いだろうと思ってでかけた。
- ショパン:ポロネーズ第5番 嬰ヘ短調 op.44
- アルベニス:「イベリア」から エボカシオン、港、トゥリアーナ
- ドビュッシー:「版画」から グラナダの夕べ
- リスト:スペイン狂詩曲
先行抽選予約でゲットしたチケットだったので座席が心配だったが、なんと!前から2番目の中央左。ピアニストの手も見えるし、結果的には音響も悪くなかったし最高の席だった ♪
1曲目、ショパンの最初では、低音が、よく響くのだがややこもって聴こえて来たので、音が頭の上を通り過ぎているのかと心配した。が、途中からそんなこともなくなったので、ゲルナーさん、ちょっと緊張していたのかも知れない。
そのあとの演奏での音(音色・音響)の素晴らしさを考えると、緊張で「音が響きにくいタッチ」になっていたのかも知れない。なので、演奏の印象としてはやや硬めのポロネーズであった。
音質も(たぶん)解釈も、よくある「ショパンらしい」演奏とはちょっと違っていたので、もう少し弾力性があってこなれてくれば面白いショパンになったような気がする。
このプログラムで一番気に入ったのがアルベニス。
私としてはよく聴く曲ではないが、とても面白く心地よく聴かせてもらった。とくに、音色・タッチの多彩さと、その使い方・組み合わせの妙味が素晴らしかった。
右手の旋律と左手の伴奏、とはっきり分かれているような作りでは(たぶん)ないのだけれど、明快に響く右手と何とも言えないタッチで絡む左手と、まさに「織りなす」とか「紡ぎ出される」といった印象。それは、旋律が左手に移っても、両手での和音が混じり合っても立体的に響いてくる。豊かな色彩さえ感じられる演奏だった。
こんな風に弾けたら気持ちいいだろうな…♪ と思いながら聴いた。
ドビュッシーは一番期待した曲だったのだが、残念ながら私の好みの演奏ではなかった。1曲だけだったので、もう少し聴いてみたい気もした。
もう少し細い、というか研ぎ澄まされた感じの緊張感のある音が欲しかった。あるいは、ゲルナーさんの音色にあった曲の作り方?もあったのかも知れない…。聴いている方が最後まで「乗り切れず」?何となくどっちつかずの印象だった。
最後のリストは、あの小さな手でよく弾くな〜、よくリストの和音がつかめるな〜と感心するほどの熱演♪
リストの曲、とくにこの「スペイン狂詩曲」のように派手な曲はあまり好みではないのだけれど、面白かった。アルベニスと同様、音色やタッチがダイナミックに変化して、音楽の流れもドライヴ感があってどんどん進んでいくのは痛快でもあった。
ただ、途中からゲルナーさんの顔が、どことなくサーカスの熟練の芸人のように見えて来た…(^^;)。でも、終わったときの会場の「ブラボー」に珍しく共感できた演奏であった ♪
それにしても、やっぱりナマのピアノの音はいい♪
少し前にスタインウェイの本を読んでいたので(→《スタインウェイを買うなら1900年〜1967年もの?》)、気のせいか、響板とフレームと弦が響きあって楽器がよく鳴っているような気がした。
ゲルナーさんの印象は、舞台に出てくるところは、どこにでもいそうな「人のいいおじさん」という感じ…。思ったより小柄で手も小さい感じ。それで、これだけエネルギッシュな演奏ができるのだから、驚きである。
ピアノを弾く姿は、音楽に集中して、とても誠実な印象を受けた。私の「お気に入り」度で言えば、曲によっていろいろだが、全体としてはとても好感度が高かった。
わずか45分間のプログラムなのだが、なかなか充実していて楽しめた ♪
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《LFJ:ネルソン・ゲルナー》
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