午後の部でちょっとよかったのは、ユン・ギルジュン(韓国)の「ラ・ヴァルス」。ゲルマン・キトキンのロシア風「ラ・ヴァルス」とは違って、フランス風のラヴェルらしいワルツを聴かせてくれた。でも、その前のモーツァルトのソナタは、テンポの揺れがちょっとやり過ぎ?でいただけなかった。(ラヴェルを聴いて何となく理由が分かったような気もした…)
夜の部で、印象的だったのはロシアのタチアナ・ドロホワ。プロフィール写真が、眼光鋭いちょっとこわそうな女性だったので、どんな人かと思っていたら普通のいい感じの人だった…。
演奏の方は、少しまろやかな音でハイドンのソナタを実に魅力的に弾いてみせた。バラキレフの「イスラメイ」では、音のまろやかさはそのまま、包容力のある迫力というか、ある意味で女性らしい?「イスラメイ」を聴かせてくれた。中間部の静かな箇所の音色はとても美しく響いた。
もう一人強い印象を残したのが、休憩を挟んで次に登場したシモン・ラリヴィール(カナダ)。大きな体で大きな手で、にこやかに自由にピアノを楽しんでいる感じ。
自由すぎて(大きな手を持て余して)?彼にとっては簡単なはずのモーツァルトのソナタでミスタッチをしたりしていた。が、何となく大目に見てやりたい雰囲気を漂わせている。
そして、スクリャービンの「ピアノ・ソナタ 第5番」が素晴らしかった。これまでにあまり聴いたことのない曲だったが、見事にスクリャービンの音楽を表現していたと思う。十分な迫力と音楽性で引き込まれた。同じ曲を3人前の今田篤くんの演奏でも聴いていたのだが、残念ながら差は歴然としていた。
ピアノコンクールの楽しみの一つは、同じ曲を違う演奏、しかも若くて活きのいい発展途上のピアニストで聴き比べができることだ。出来上がったプロのピアニストと違って、努力の跡が感じられたり、こう弾きたいという意思と出てくる音楽の差が感じられたり…、面白い。
それにしても、「イスラメイ」も「ラ・ヴァルス」も、そしてこのスクリャービンも、演奏でまったく違った音楽に聴こえるのは驚きだ。
この2人で、とりあえず「今日は満足♪」と思っていたら、そのあとの2人もなかなかであった。
ちょっと若乃花を思わせる?(カミさん評)小柄なジン・ウェンビン(中国)は、豊かな音楽性の持ち主だと思う。モーツァルトのソナタ第13番という、ソナタアルバムに載っているようなやさしい曲を、実に見事に芸術作品として聴かせてくれた。
そして、たぶん初めて聴くショパンの「マズルカ風ロンド ヘ長調 Op.5」も、新鮮で美しい音楽を楽しませてくれた。
で、最後に登場したノ・イェジン(韓国)。聴いているこちらもちょっと疲れて、またモーツァルトか、と思っていたのだが、これがジン・ウェンビンくんとはまた違った魅力的なモーツァルトだったのだ。音もよく響いていた。
で、私の好きな曲の一つであるラヴェルの「夜のガスパール」(からスカルボ)をどう弾くのかと注目していたら、これがまた堂々としたラヴェルだった。高音のキラキラも低音の響きも申し分ない。欲を言えば、もう少し「うねり」感があると私としては大満足だったと思う。が、十分に楽しめたスカルボであった。
昨日は暇だったので、ちょっと聴きすぎて疲れたが、最後の4人のおかげで快い疲れであった。面白かった♪
ちなみに、知らない作曲家のL.アウエルバッハ(24の前奏曲 Op. 41)はいまひとつ好みではなかったが、まあ他の曲も聴いてみないとまだ分からない。
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