2013年12月30日月曜日

本「ピアノ演奏芸術」:第3章(1/2) 音について

●「第3章 音について」からの抜書き(1/2)

音の探求に関するいくつかの助言。


1.「音」に関する過ちの傾向、一つは音への過小評価、もう一つは過大評価である。前者は、ピアノのもつ途方もないディナミーク的豊富さや音の多様性に関する無関心であり、狭義の技術(指の敏捷性や音のなめらかさなど)にばかり注意が向いている。後者は音を、つまり感覚的な音の美しさを愛するあまり、音楽を全体として把握してない傾向を持つ。


2.最高の音とは、与えられた内容を最良の方法で表現しているものである。そこではコンテキスト(前後関係)が重要。切り離された音としては美しくない音も、あるコンテキスト(音楽の流れ、フレーズ)の中では必要な、最も表現豊かな音になりうる。


3.音をマスターすることは、最初に手がけるべき、最も重要な課題である。(レッスンの3/4は音の探求に向けられている)


4.学習のヒエラルキーは、第1には〈芸術的イメージ〉の修得、第2には〈芸術的イメージ〉の実体化・具象化、第3に芸術的課題を解決するために必要な技術全般、である。


5.ピアノで出せる、ゼロ(ゆっくり鍵盤を押す)からffff ・・(最高の音の限界)までを体験すること。音の強さは、指のF(力)、m(量)、v(速さ)、h(高さ)で決まる。


6.それぞれの音を、先行する音の減衰の結果の音量で弾く練習(下記)。これは聴覚のためにも、鍵盤を触知するためにも有益。



7.音の練習の一つ。美しいメロディーの(例えばショパン作品の)パッセージをおおいにテンポを遅くして弾くこと。その美しさを拡大鏡で素晴らしい絵を見るように精緻に味わうこと。


8.一つないし数音の音を同時に一定の力で押さえ、耳が弦の振動を完全に聴き終えるまで押さえ続けること。この〈持続音〉は最初の〈打鍵音〉よりはるかに美しい。これは「音の遠近感」を作り出すために必要なもの(感覚?)である。


9.立派な巨匠の演奏は、深遠な背景と様々な構図を持った絵画を連想させる。


10.ピアノはオーケストラのように100の音色を持つ。と同時に、ピアノは独自の音色を持つ。


11.運動器官に関する〈良い〉音の道連れは、①完全な柔軟性、②筋肉の力を抜いた腕の重量、③速い軽やかな動きから身体全体を使う巨大な押す力までの重量の調整、の三つ。これらにより、「音を引き出す技術」が得られる。


12.(大事なのは、)深みのある完全な音、垂直的にも水平的にも限りない音の濃淡を持ち、どのような違いも表現できる豊穣な音色を創出できること。


13.素晴らしい音として強い印象を与えるのは、音そのもの(単独の)よりも、演奏者の表現力、つまり作品を演奏する過程での「音の組織性」である。→〈良い音〉の創造とは、様々な力のかけ方、様々な長さ等々、全体的な意味で音を連結したり、音の相関的釣り合いを生み出したりする、最も難しいプロセスのことである。


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●考察

美しい「音色」を出したい気持ちは強いのだが、なかなか高度な技術が要求される分野である。ただ、5.6.7.のような練習を試してみようと思う。そのときに大事なのが13.の「脱力」と「重力奏法」ということになるわけだ。


考え方としては、1.や2.や13.の話はよく分かる(少なくとも頭では)。音楽鑑賞の場面では、こういう概念は助けになると思う。



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