●「序文にかえて」からの抜き書き
1.音楽を学ぶ人は、まず学び始める前に、精神的な意味ですでに音楽と言えるものを思いのままに操ってなければなりません。…音楽を頭の中にはっきりと捉えて保ち、心にそれを秘め、自分の耳にそれが聞こえている…。
2.演奏の3つの基本要素:演奏されるもの(音楽)、演奏する人、演奏を実現させてくれる楽器→これを完全に掌握すること
3.技術について。目的(内容、音楽、演奏の完璧さ)が明確であるほど、それだけ的確に、目的そのものが手段を教えてくれる。「何をするのか」が「どのようにするのか」を決定してくれる。
4.前もって作品に目を通し、大まかにでも弾けるようにしてから、できるだけすばやく〈音楽的イメージ〉(内容、意義、詩的本質)を自分自身にはっきりさせること。
5.残念ながら多くのピアノ演奏家たちが、技術という言葉のもとで、ただただ指の敏捷性、動きの早さ、粒ぞろいの音、勇壮な活発さといったことがらばかりを念頭において…、つまり、技術の個々の要素にのみ目を向けて、…本物の芸術家たちが捉えているような〈本質を包含した技術〉を念頭に置いてはいない…。
6.「継続は勉学の母である」
リストは特別に難しい箇所を100回ずつ練習した。
リヒテルは非常に難しいフレーズ(プロコフィエフのソナタ9番)を休みなく2時間練習した。
7.作品を演奏として仕上げていく秘訣が身につくかどうか…
→まっすぐに突き進む決意と時間を無駄にせず突き進む能力にかかっている。
8.自分にとって重要なのはまずなによりも、その人が人間として大きいこと、その人の芸術を介して人間としての偉大さが見られること…。
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●考察
〈音楽的イメージ〉というのがポイント。弾く前から「音楽」を心の中に持っていること、作品にとりかかったらできるだけ早く〈音楽的イメージ〉を明確にすること。なかなか難しい。
すでにCDなどで聴き覚えている曲の場合はどうなのか?その、他のピアニストが表現している音楽のイメージがどうしても心に(耳に)残ってしまう。自分自身の〈音楽的イメージ〉を作り上げることは非常に難しいことに思える。
上記5.の「残念ながら…」は、最近の日本のピアニストがあまり魅力的でないことの、ひとつの理由かもしれない。アマチュアの場合には、「敏捷性、粒ぞろいの音」は本当に羨ましい限りなのだが…。
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