①静けさの中から: ピアニストの四季(Susan Tomes/小川典子 訳)
題名どおり「静かな」本である。変に誇張したりせずに、ピアニストの本当の姿・生活を真摯に語ってくれる日記風エッセイだ。その中に、音楽と正面から向き合う芯の強さのようなものを感じた。いくつかの言葉を拾ってみる。
「音楽の美しさ」は「音の美しさ」だけをさすのではない。…音そのものがどんなに美しく壮麗に響いたとしても、その演奏が人生のあらゆる感情を表現しようとするものでない限り、それ(美しい音)だけでは無意味なのだ。
ただ大きな音で弾いているのでは、一つ一つの音にあるべき光と影の微妙な色彩、遠近感など出せるわけがなく…。ピアノの演奏にあるべき、優美さ、美しさ、人間らしさ、そしてユーモア…。
音楽家は、原子=粒子(一つ一つの音符)と、フレーズ(波長=波)が同時に理解できてなければならない。
②感動をつくれますか?(久石譲)
ジブリの映画が好きなので、久石譲さんの名前だけ見て読んでみた。音楽に真剣に関わる人のいろんな思いが垣間見られて、とても面白かった。
ミニマル・ミュージックとナイマンのことを知ったことは収穫であった。内容は下記の読書メモ参照。
③ピアノはなぜ黒いのか(斎藤信哉)
ピアノという楽器そのものに目を開かされた本である。スタインウェイなどの名前や調律というものの存在は知っていたが、これほど奥深いものとは知らなかった。
著者の言うような「木目調・軽量・小音量で音色にこだわったグランド・ピアノ」があったら本当にいいと思う。
④世界最高のピアニスト(許光俊)
ファジル・サイとかマリア・ジョアン・ピリスとかのお気に入りピアニストを発見するきっかけになった本である。ピアニストによって音楽がこんなにも変わるのだ、ということにも改めて気づかせてくれた。
⑤我が偏愛のピアニスト(青柳いづみこ)
色んなお気に入りピアニストを発見するなかで、日本人がほとんどいないことを残念に思っていた。で、日本人のピアニストを見つけ出すために読んだ本がこの本である。
YouTubeで聴ける範囲ではまだお気に入りが見つかってない。海老彰子さんとアルゲリッチの共演はよかったが…。
今年一年、思ったよりたくさんの本(ピアノ関連)を読んできた。
奏法・技術・練習方法についてはまだまだ知りたいことがある。いい音楽・演奏とは何か、という問題意識に関する考えも、あまり深まったとは言えない。来年も、引き続き同じ方向での勉強・思索を続けていきたいと考えている。
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