2018年6月20日水曜日

ジェルジュ・リゲティ György Ligeti のエチュードは音楽的?

リーズ国際ピアノコンクールは、ポール・ルイス等の改革で今年から模様替えされた。例えば、ラウンド 1 は 4月に行われ、ラウンド 2 以降は 9月に行われる。

ラウンド 3 で現代曲が課題曲に含まれているというのも興味深い。その作曲家 9人の探索をボチボチと進めているが、今日はジェルジュ・リゲティである。

《リーズコンクールの課題曲:ピアノ曲探索はここから ♪》
《リーズ国際ピアノコンクールにベレゾフスキーの娘が ♪》


東京藝大 リゲティ没後10年記念コンサートより


ジェルジュ・リゲティ(György Ligeti、1923〜2006)はハンガリーの作曲家。スタンリー・キューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」の中で使われた現代音楽「アトモスフェール」「レクイエム」「ルクス・エテルナ」などの作曲家としても有名である。

なので、プロフィールは「Wikipedia:リゲティ・ジェルジュ」「京都賞:リゲティ」などをご覧いただくことにして、今回は「ピアノのためのエチュード」を中心に。


その前に一つだけ面白い記事(↓)を見つけたのでご紹介。

✏️リゲティの時代がきた! メジャーへ躍り出た孤高の作曲家

2013年の記事だが、

リゲティもマーラーやベルク、ストラビンスキー、ショスタコービチ、バルトークらに続いてクラシック音楽の定番(メジャー)入りを果たし、広く聴かれる時代が訪れた

と書いてある。その根拠(例)としてあげられているのが以下。私自身、ピアノ以外はあまり興味がないのでよく分からないが「クラシック界」ではそうなのかも知れない。

  • 2012年、東京フィルハーモニーによるオール・リゲティの定期演奏会が盛況
  • 東京室内歌劇場が2009年に日本初演したオペラ「ル・グラン・マカーブル(大いなる死)」の上演が世界で相次ぐ
  • トーマス・ヘルによる「ピアノのためのエチュード」初の完全全曲録音の発売


さて「ピアノのためのエチュード」であるが、YouTube に全18曲入った音源があったので聴いてみた。楽譜が表示されるので面白い。

 György Ligeti - Études for Piano (1985-2001, audio+score)

ピアニストはスウェーデンの精神科医(!)・ピアニストのフレドリク・ウレーン(Fredrik Ullén、1968〜)という人。この人、ソラブジの《超絶技巧練習曲集》を録音中だったり、シュニトケ、ペルト、アイヴズのピアノ曲全集を録音する計画もあるそうなので、一度、ちゃんと聴いてみようと思う。


それはさておき「エチュード」である。以前聴いたときには普通に「現代音楽」だなぁ〜という印象しかなかったのだが、今回改めて聴いていて何となく「いいなぁ ♪」とか「意外と音楽的だなぁ」と思うことが多かった。「音楽的」?…そうなのだ。

現代的な音楽に、私の耳が少しは慣れてきたせいなのか?どうかは分からないが…。目で追っている「とても弾けそうもない(数式のような?)楽譜」と「聴こえてくる豊かな音の響き」にギャップのようなものを感じた。

2回目、楽譜を見ないで聴いたが印象は同じ。リゲティのエチュード、いいかも…(^^)♪


ただ、どの曲がどういいのか説明できるほど分かってはいないようだ。どの曲も、これまでにあまり聴いたことのない魅力を持っているように感じた。18曲のタイトルは下記。


ピアノのための練習曲集 第1巻
  1. Désorde 無秩序
  2. Cordes à vide 開放弦
  3. Touches bloquées 妨げられた打鍵
  4. Fanfares ファンファーレ
  5. Arc-en ciel 虹
  6. Automne à Varsovie ワルシャワの秋

ピアノのための練習曲集 第2巻
  1. Galamb Borong 悲しい鳩
  2. Fém 鋼鉄
  3. Vertige 眩暈
  4. Der Zauberlehrling 魔法使いの弟子
  5. En Suspens 不安定なままに
  6. Entrelacs 組み合わせ模様
  7. L'escalier du diable 悪魔の階段
  8. Columna infinită 無限柱

ピアノのための練習曲集 第3巻
  1. White on White 白の上の白
  2. Pour Irina イリーナのために
  3. À bout de souffle 息を切らして
  4. Canon カノン

ちなみに、ユジャ・ワンが弾いている動画があったので聴いてみた。…が、こちらは、ユジャ・ワンにしてはやや大人しく面白くなかった。

 Yuja Wang plays Ligeti : Études pour piano Livre 1 - "Fanfares"

 Yuja Wang plays Ligeti : Études pour piano Livre 2 - "Der Zauberlehrling"


曲ごとの感想を書けないので、作品解説として参考になったものをいくつかあげておく。

✏️PTNAピアノ曲事典(解説・分析)


トーマス・ヘルによる曲の解説(↓)が面白い。

✏️"息を切らして" -リゲティのピアノのためのエチュードへの誘い-【前編】

これらを読んで思ったことを少し。

リゲティがエチュードを書くきっかけが面白い。それは、コンロン・ナンカロウ(Conlon Nancarrow, 1912~1997)が作曲した「自動ピアノ作品」(人間では演奏不可能な複雑なリズム構造等…)を聴いて触発されたこと。

で、人間向けに同じような曲を作ろうと思った?そりゃ、難しいはずだ…(^^;)!


リゲティのエチュードを理解するのに役立つかもしれないことをいくつか…。

世界音楽に対する熱い眼差し」を持っていた。ジャズや数学への関心も…。

例えば、アフリカ(自然崇拝、呪術信仰に伴う儀礼、仮面舞踊、打楽器音楽、ポリリズム、非均整なリズム構造、狩猟採集民族ピグミーの複雑な声楽ポリフォニー等)やアジア(タイの山岳民族の冠婚葬祭に伴う儀礼音楽、グルジアの多声合唱音楽やクリマンチュリ、ミャンマーの複雑なヘテロフォニー、インドネシア・バリ島のガムラン音楽やケチャ、影絵芝居等)の音楽に対する興味。


彼は、自動ピアノが実行する完璧な演奏に驚嘆し魅了されたが、機械的で非人間的な演奏を望んだわけではない。…システマティックに構築されているのに情感的な連想を引き起こす、生きている人間のエラーこそが、感動的かつ魅力的なリゲティ音楽の核…

非常にシンプルな基本アイデアで始まり、それが常に複雑化していく

多層性、ポリフォニック、ポリリズム、ポリテンポ、ポリメトリック(多拍節法)、カノン的(8分音符 1個だけずらす…等)、立体的効果、…

なお、「リゲティは…複雑なポリリズムや新たなリズムの周期性を把握するために、赤・黄・緑・青・紫・黒色などの鉛筆で、五線譜に縦線を引いている」らしい。そのカラフルな自筆譜をぜひ見てみたいものだ。自分でも混乱しそうだったのか…(^^;)?


なお、NAXOS にトーマス・ヘル、ピエール=ロラン・エマール、フレドリク・ウレーンの CD があったので聴いてみた。それぞれが違っているのだが、今の私にはどれも面白く感じられる。少し時間をおいて、また聴いてみようと思っている。


G. リゲティ : ピアノのためのエチュード[輸入盤]
(トーマス・ヘル)


リゲティ・エディション3 ピアノのための作品集
(ピエール=ロラン・エマール)


リゲティ:ピアノ曲全集 (2CD) [Import]
(フレドリク・ウレーン)



なお、楽譜はショット社から出ている。第3巻はアマゾンには見当たらず、ショット社の販売サイトにある。→第3巻

リゲティ: ピアノのための練習曲集 第1巻 (最終稿) /ショット社

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