リーズ国際ピアノコンクールのことを調べていたら、ピティナのサイトに前回(2012年)のレポート連載記事を見つけた。
その中で、「審査員R・レヴィン先生:リスクから生まれる創造性」という記事の冒頭に、
「アーティストのような演奏」と「生徒のような演奏」
という言葉があった。チャイコンを聴いているときに感じたことであった(↓)ので、ちょっと嬉しかった。といっても、「国際コンクールでよく囁かれる言葉」らしいが…。
自分自身の理解のために、気になる部分のメモを作ってみた。
●「アーティストの演奏」とは「自ら考えて創造する演奏」
(インタビューワー 菅野恵理子さんの言葉)
●テクニックや正確に弾く能力には脱帽しますが、あまり心は動かされません。「最高難度のテクニックを要する曲を弾かなければならない」という考え方は芸術性を損なうものだ。
●レパートリーとはそのピアニスト自身の反映。
それぞれ違った個性とピアニズム。
●(審査に臨んで…)
ピアニストがステージに出てくるたびに、私は自分の心をオープンにし、彼らが私の心に語りかけ、自然に涙をもたらしてくれる瞬間を待っているのです。「この人こそ私が待っていたピアニストだ」と。そのピアニストが心から愛している曲を弾き、そこから愛情と高揚感が自然に溢れ出て、我々もそれを愛さずにはいられない、それはまさに魔法の瞬間です。
●(審査の考え方)
・「もう一度聴いてみたいピアニスト」を選ぶようにしています。
・最も尊敬するのは、想像力豊かな演奏ですね。
・アイディアがあると思ったピアニスト。
●(優勝したフェデリコ・コッリさんについて…)
・自分の視点を持っていました。
・誰よりも幅広く興味深い音のパレットを持ち、…洗練された…。
・以前『リスクを取れ』と助言したが、彼は次のように解釈した。
「自分のためでもなく、自分のキャリアのためでもなく、審査員のためでもなく、聴衆のために弾くこと、極限まで表現すること」
●ファニー・ウォーターマン先生の言葉
アーティストにとって大切なものは「インテグリティ(integrity)、誠実さ(honesty)、知識(knowledge)」である。
※ファニー・ウォーターマン先生は、リーズ国際ピアノコンクールの創設者・審査委員長である。95歳の高齢のため、2015年を最後に引退を表明されている。
なお、演奏を映画に例えた次のくだりは面白いと思った。
たとえば映画『ミッション・インポッシブル』では主人公が最後には無事に危機を乗り越えることが分かっていても、彼が危険な状況に陥り、それが解決されるまで我々は手に汗を握りながら展開を見守るわけです。音楽も同様です。演奏の場合には、そこにコミットメント、ドラマ、色彩感、畏怖、官能・・等があるはずです。
それだけでなく、モラル、つまり誠実さも大事です。演奏に聴衆の感情を変える力があるとすれば、それは正しい理由で行われなければなりません。聴衆が何より大事であり、彼らに理解してもらえるようにするべき。そして聴衆はそのメッセージが目の前に差し出された大きな鏡であることに気づき、例えばベートーヴェンの熱情ソナタの中に彼ら自身を見出すわけです。
ウォーターマン先生の言葉にもあった「誠実さ」が語られているのが、私としてもちょっと嬉しい。
ちなみに、PTNAの「音源提供ピアニスト」の中に出場者がいるかも、とふと思って調べたら、加藤大樹、北村朋幹、仲田みずほの3人が見つかった。
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《リーズ国際ピアノコンクール2015、8月26日から》
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