2026年9月21日月曜日

本『ピアノ曲名盤鑑定百科』「クラシック」の概観?やや古いかも…

図書館で久しぶりにピアノに関する比較的新しい本を見つけたので、借りてみた(↓)。

といっても、読み通すような本ではなく、事典みたいな本である。興味のあるところをパラパラめくる範囲ではそれなりに面白い。「名盤」の判定などで意見が合わないところもあるが、まぁ、それはそういうものだろう…(^^;)。

📗ピアノ曲 名盤鑑定百科(吉井 亜彦 著)



著者は 1944年旧満州生まれなので、中村紘子さんと同年代…というやや高齢の方。かなり以前から「名盤百科 ◯◯篇」という本を何冊も出されている。この本も 2001年刊行の「名盤百科 ピアノ篇」が元になっている。

もともと、「音楽評論家」による「名盤」に関する情報はあまり信じていないのだが、どんな曲が選ばれているのか(この本では「究極の名曲 100曲」が選ばれている)、どんなピアニスト(の演奏)が評価されているのか…ということに興味があって見てみた。


私自身、いい(好みの)ピアノ曲や演奏を見つけるために 1500年代から現在に至るまでの作曲家の作品を「探索」している(→《鍵盤音楽史》)ので、その参考になるのでは…という期待も少しあった。

以下、パラパラと拾い読みした範囲で興味を惹かれたことや気になったことのメモ…。


まず、目次(文末参照)を見て思ったこと。

スカルラッティ(1685-1757)、J.S.バッハから始まって、メシアン、武満徹(1930-1996)までの 34人が取り上げられている。100曲と書いてあるが、「作品集」などもあるので、実際にはもっと多くの曲が含まれていると思われる。

「クラシック」音楽のピアノ(独奏)曲を概観するのにはいいのだろうが、ピアノ音楽のファンにとっては少し物足りないかも知れない。


「百科」と謳う割にはカバー範囲(年代、作曲家)が狭いような気がする。とくに現代が武満徹で終わっているのは、そろそろ時代遅れなのではないかと思う。

武満徹が亡くなってからすでに 30年。その間には優れた作曲家たちが沢山いて、多くの素晴らしいピアノ曲が生まれているはずなのだが…。

私の好みで言うと、ソフィア・グバイドゥーリナ(Sofia Gubaidulina, 露, 1931-2025)、アルヴォ・ペルト(Arvo Pärt, エストニア, 1935-)、ニコライ・カプースチン(Nikolai Kapustin, ウクライナ, 1937-2020)、フレデリック・ジェフスキー(Frederic Rzewski, 米、1938-2021)、トーマス・アデス(Thomas Adès, 英, 1971-)等々…。

武満徹より少し前のリゲティ・ジェルジュ(Ligeti György, 墺, 1923-2006)やピエール・ブーレーズ(Pierre Boulez, 仏, 1925-2016)などがいないのも気になる。


《鍵盤音楽史》の探索で次に聴こうと思っているモーツァルトの項を少し見てみた。

取り上げられている曲は、ピアノソナタの 8番、11番、14番/ 幻想曲ハ短調、15番、幻想曲ニ短調、2台のピアノのためのソナタニ長調。

それぞれの曲に 2ページ程度の解説文?がある。ソナタ第8番だけ読んでみたが、モーツァルトは悲しいから短調で作曲したのだろうか?よく分からない…ということが引き伸ばされて書いてあるだけであまり面白いとは思わなかった…(^^;)。


で、肝心の「名盤鑑定」の表を見てみる。第8番については何と! 67もの「盤」(録音)が並んでいる。1935?年のシュナーベルから 2023年のユンディ・リまで…。よくこれだけ聴けたものだと感心する。しかも、短文ながらすべてにコメントが付いている!

最初に気になったのは、個人的な好みもあるが 2022年の藤田真央が入ってないこと。モーツァルトのピアノソナタで真央くんを除外するなんて私には考えられない。

一方であまり有名ではないのでは?というピアニストも散見される。

この一覧表には、著者が「◎推薦 ◯準推薦 ☆個性的」のマークを付けているのだが、◎はリパッティ、ギーゼキング、ギレリス、ピリス、リヒテルということになっている。ちょっと古いピアニストが多いかな?…という印象(最新がリヒテルの 1989年)。

内田光子がノーマークなのはどうなのかな?と思う。ファジル・サイに☆が付いているのは納得できる ♪


モーツァルトの他の曲についても同じような傾向だ。

一言で(私の独断と偏見で)言うと、やや古いタイプの音楽評論家による「鑑定」に見える。LP 時代から「クラシック音楽」を立派なオーディオ装置で楽しんでいて、「巨匠」や「定番(確立した評判)」が好み…という。

それが悪いと言っている訳ではない。そういう「古典芸能」的な楽しみ方や感覚もありだと思うし、そういうものが「クラシック音楽」界を支えて来たという事実もあると思う。

ただ、私の考え方や好みとは少し違うな…と感じる…ということである。


個人的には、「定番」のピアノ曲にこだわらずに、むしろもっと新しい(できれば現在の作曲家の)音楽を知りたいと思っているし、古い「巨匠」などのカリスマピアニストより、活きのいい若手のワクワクするような演奏が聴きたいと思っている。

以前書いた記事を思い出したので引用しておく。



なお、この本自体は色々と参考になることが載っていそうなので、少なくとも図書館の貸出期間の 2週間ほどはパラパラと読んでみようと思っている。

知らない作曲家も一人いたので(↓)…。

スコット・ジョプリン(Scott Joplin, 1867 or 1868 - 1917)はラグタイムで有名らしいのだが、他の作曲家と並べるような人なのか?…あとで調べてみよう…(^^;)。


【参考】この本の目次(抜粋)

■D・スカルラッティ……ソナタ集
■J・S・バッハ
 ・平均律クラヴィーア曲集
 ・インヴェンションとシンフォニア
 ・イギリス組曲
 ・フランス組曲
 ・パルティータ
 ・ゴルトベルク変奏曲
■J・ハイドン……ソナタ第52番変ホ長調
■モーツァルト
 ・ソナタ第8番イ短調
 ・ソナタ第11番イ長調
 ・ソナタ第14番ハ短調/幻想曲ハ短調
 ・ソナタ第15番ハ長調
 ・幻想曲ニ短調
 ・2台のピアノのためのソナタニ長調
■ベートーヴェン
 ・ソナタ第1番へ短調
 ・ソナタ第8番ハ短調《悲愴》
 ・ソナタ第14番嬰ハ短調《月光》
 ・ソナタ第17 番ニ短調《テンペスト》
 ・ソナタ第18番変ホ長調
 ・ソナタ第21番ハ長調《ヴァルトシュタイン》
 ・ソナタ第23番へ短調《熱情》
 ・ソナタ第29番変ロ長調《ハンマークラヴィーア》
 ・ソナタ第30番ホ長調
 ・ソナタ第31番変イ長調
 ・ソナタ第32番ハ短調
 ・ディアベリ変奏曲ハ長調
■シューベルト
 ・ソナタ第13番イ長調
 ・ソナタ第18番ト長調
 ・ソナタ第21番変ロ長調
 ・さすらい人幻想曲ハ長調
 ・即興曲集
 ・楽興の時
 ・幻想曲へ短調
■シューマン
 ・謝肉祭
 ・幻想小曲集
 ・交響的練習曲
 ・子供の情景
 ・クライスレリアーナ
 ・幻想曲ハ長調
 ・森の情景
 ・フモレスケ変ロ長調
■ショパン
 ・ソナタ第2番変ロ短調
 ・ソナタ第3番ロ短調
 ・前奏曲集
 ・練習曲集
 ・バラード集
 ・即興曲集
 ・スケルツォ集
 ・夜想曲集
 ・ポロネーズ集
 ・ワルツ集
 ・マズルカ集
 ・舟歌/幻想曲/子守歌
■メンデルスゾーン……無言歌集
■リスト
 ・ソナタロ短調
 ・超絶技巧練習曲集
 ・巡礼の年
 ・ハンガリー狂詩曲集
 ・演奏会用パラフレーズ
■ブラームス
 ・ソナタ第3番へ短調
 ・ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ
 ・バラード集
 ・後期のピアノ小品集
■チャイコフスキー……四季
■ムソルグスキー……組曲《展覧会の絵》
■ヤナーチェク……組曲《草かげの小径にて》
■フランク……前奏曲、コラールとフーガ
■スクリャービン
 ・ソナタ第5番
 ・詩曲集
■フォーレ
 ・夜想曲集
 ・舟歌
 ・組曲《ドリー》
■シャブリエ……10の絵画的小品
■グリーグ……抒情小曲集
■アルベニス……ピアノ作品集
■グラナドス……組曲《ゴイェスカス》
■ドビュッシー
 ・ベルガマスク組曲
 ・版画
 ・映像 第一集、第二集
 ・子供の領分
 ・前奏曲集
 ・練習曲集
■ラヴェル
 ・ソナチネ
 ・鏡
 ・夜のガスパール
 ・高雅で感傷的なワルツ
■サティ……ピアノ作品集
■ジョプリン……ラグタイム集
■ラフマニノフ
 ・前奏曲集
 ・音の絵
■プロコフィエフ
 ・ソナタ第7番変ロ長調
 ・束の間の幻影
■ストラヴィンスキー……《ペトルーシュカ》からの3楽章
■シェーンベルク……ピアノ作品集
■ベルク……ソナタ作品1
■ヴェーベルン……ピアノのための変奏曲
■バルトーク
 ・ソナタ
 ・ソナチネ
■メシアン……幼児イエズスに注ぐ20のまなざし
■武満徹……ピアノ作品集



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