2024年6月10日月曜日

Bach.KB.BWV1080「フーガの技法」現代ピアノによる名盤ベスト10、定番から最新盤まで

「J.S.バッハの全鍵盤作品を聴く」プロジェクト、次の作品は「フーガの技法」。バッハの鍵盤音楽、最後の大作。作品の概要は下記記事に書いたので、今日は現代ピアノによる演奏の聴き比べが中心。お気に入りを選んだら、定番から最新盤までちょうど10になった ♪





「フーガの技法」で使われる基本テーマは、コントラプンクトゥス 1 の冒頭で聴こえてくるもの(↓)。この作品はこの一つのテーマを元に「フーガ」という技法を駆使して、どれだけの素晴らしい音楽が創造できるかという挑戦なのかも知れない。


テーマ自体も様々に編曲して使われる上に、各曲で様々な「フーガの技法」(↓)が使われている。Cp.=コントラプンクトゥス。

  • 単純フーガ:Cp.1〜5
  • 反行ストレッタフーガ:Cp.6, 7
  • 二重フーガ:Cp.9, 10
  • 三重フーガ:Cp.8, 11
  • 鏡像フーガ:Cp.12, 13
  • カノン:BWV1080/14〜17


この作品を現代ピアノで弾いているピアニストは 30人ほど見つかった(文末参照)。

この大作を全曲聴くのは大変なので、聴き比べと言っても全曲聴いたのは 10人程度。他は「スクリーニング」みたいな聴き方で、失礼ながら途中で終わりにさせてもらった…(^^;)。


10人のお気に入りピアニスト(演奏)が見つかったが、その中で順位をつけるほど聴き込んでいないので、3つの録音時期に分けて新しい順に並べてみようと思う。

最近(ここ 10年くらい)、21世紀初め(〜2010)、2000年以前に分けると、それぞれ 3〜4 のお気に入り演奏があることになる…(^^)♪ 西暦年は録音(or リリース)年。

  1. Andrzej Ślązak 2024
  2. Daniil Trifonov 2021
  3. Konstantin Lifschitz 2015
  4. Zhu Xiao-Mei 2014

  5. Alice Ader 2008
  6. Pierre-Laurent Aimard 2007
  7. Grigory Sokolov 2002

  8. Evgeni Koroliov 1990
  9. Glenn Gould 1962〜1981 オルガン/ピアノ
  10. Tatiana Nikolayeva 1967

あえて一つお気に入りを挙げると、現時点ではピエール=ロラン・エマールさんの素晴らしい演奏が私にとっての決定版みたいなものになりそうだ。


以下、音源・CD 情報と簡単なコメント。


アンジェイ・シュロンザク (Andrzej Ślązak、ポーランド、1985 - )の新しい CD は 2024年 6月下旬リリース予定という最新のもの。録音は 2023年 8月。





このピアニスト、初めて聞く名前だが、2017年からポーランド現代音楽協会のメンバーになって、古楽と現代音楽の両方で活動している人で、ヤン・コハノフスキ大学の教授でもあるようだ。この CD はポーランド教育科学省が助成するプロジェクトによるもの。

演奏は、この作品が最初から現代ピアノ向けに書かれたのでは?…と思うくらいピアノの豊かな響きが印象的で、バッハにしてはやや賑やか過ぎる?…という感想を持たれる方もおられるかも知れない。でも、個人的にはちょっと気に入ってしまった ♪


ダニール・トリフォノフ(Daniil Trifonov、露、1991 - )は、実はこの作品の魅力を初めて教えてくれたピアニストである。コロナ禍の中でのオンライン・ヴェルビエ音楽祭でマスクをしたトリフォノフが弾いていたのが「フーガの技法」。これを聴くまではあまり面白い作品だとは思ってなかった…(^^;)。





この CD は 2023年のグラミー賞にノミネートされている。演奏は、ややロマン派的な起伏のある感じかな?こういうの嫌いじゃない…(^^;)。



コンスタンチン・リフシッツ(Konstantin Lifschitz、ウクライナ、1976 - )も、バッハに定評があるピアニストらしくいい感じの演奏を聴かせてくれる。




シュ・シャオメイ(Zhu Xiao-Mei、中、1949 - )の演奏は、軽やかに響く高音と太めの低音の響きのバランスがダイナミックでいい感じ ♪(ただ、ずっと聴いていると少し低音が耳につくかも…(^^;)?…)対位法の構成を明確にする効果もあるようだ。




アリス・アデール(Alice Ader、仏、1945年 - )というピアニストも初めてお目(耳)にかかる。今年の 2月に 78歳にして初来日している。メシアンなどとも交流のあった人のようだが、日本ではほとんど知られていないのかも。アマゾンに CD もない…。



静かな淡々とした演奏だが、妙に説得力がある…というか、最後まで聴いてしまった ♪ 


ピエール=ロラン・エマール(Pierre-Laurent Aimard、仏、1957 - )は元々尊敬するお気に入りピアニストの一人。現代曲を聴くことが多かったが、今回聴いたバッハはまさに絶品 ♪




特殊な調律をほどこしたスタインウェイによる演奏で、その録音の模様はドキュメンタリー映画『ピアノマニア』で撮影され話題となった…とのこと。


グリゴリー・ソコロフ(Grigory Sokolov、露、1950 - )が「フーガの技法」を録音していることを知ってすぐに聴いた。間違いなくいい演奏なのだが、やや情緒過多かも…(^^;)?ちょっとペダルが多いような感じも…?




エフゲニー・コロリオフ(Evgeni Koroliov、露、1949 - )の「フーガの技法」は、今や定番の一つになっている。リゲティの「無人島にただ一つ持っていくとしたらコロリオフのバッハ」という言葉の影響もあるかも知れないが、この対位法と和声のバランスのとれたゆったりした演奏は、それ自体が素晴らしい ♪




グレン・グールド(Glenn Gould、カナダ、1932 - 1982)には全曲通しての録音はない。それでも、定番として確たる位置を占めているようだ。

オルガンでコントラプンクトゥス 1〜9番を、ピアノでコントラプンクトゥス 1, 2, 4, 9, 11, 13, 14番を弾いている。オルガンの方は「重みに欠ける」などという意見もあるようだが、個人的にはピアノよりオルガンの方が好きだ ♪(人の好みは色々…(^^;)…)

♪ Bach Art of fugue gould:アルバム




タチアナ・ニコラーエワ(Tatiana Nikolayeva、露、1924 - 1993)の演奏も間違いなく定番。静かに品格を持って奏でられる最初のテーマを聴くだけで、このあと素晴らしい演奏が展開されることを確信する。

(フーガの技法:トラックNo.7〜)




以下、現代ピアノによる録音(演奏)をしているピアニスト 30人。太字は今回私が勝手に選んだベスト10。西暦年は録音(or リリース?)年。

  1. Andrzej Ślązak 2024
  2. Marta Czech 2022
  3. Daniil Trifonov 2021
  4. Geoffrey Douglas Madge 2021
  5. Filippo Gorini 2020
  6. Craig Sheppard 2018
  7. Duo Stephanie and Saar 2017
  8. Christian Kälberer 2017
  9. Konstantin Lifschitz 2015
  10. Schaghajegh Nosrati 2015
  11. Roberto Giordano 2015
  12. Zhu Xiao-Mei 2014
  13. Ann-Helena Schlüter 2014
  14. Angela Hewitt 2013
  15. Célimène Daudet 2012
  16. Andrew Rangell 2011
  17. Alice Ader 2008
  18. Pierre-Laurent Aimard 2007
  19. Ivo Janssen 2007
  20. Diana Boyle 2007
  21. Ramin Bahrami 2006
  22. Piotr Słopecki 2005
  23. Hans Petermandl 2004
  24. Pi-hsien Chen 2003
  25. Grigory Sokolov 2002
  26. Joanna MacGregor 1995(リリース2011)
  27. Andrei Vieru 1994live
  28. Evgeni Koroliov 1990
  29. Glenn Gould 1962〜1981 オルガン/ピアノ
  30. Tatiana Nikolayeva 1967


出典:

📘『バッハの鍵盤音楽』(小学館、2001年、デイヴィッド・シューレンバーグ 著)

✏️「フーガの技法」の概要(フーガの技法 研究所)

✏️バッハ :フーガの技法 BWV 1080(PTNAピアノ曲事典)

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