チャイコン(チャイコフスキー国際コンクール)ピアノ部門を毎日のように medici.tv 特設サイト で楽しんでいる。ピアノの国際コンクールを(主に)ライブ映像で見るのは初めてであるが、予想以上に面白い。
最初は日高さんだけ聴くつもりだったのだが、試しに見たのがとても面白くて、毎夜7時〜9時はチャイコン鑑賞の時間となった。そのあとも見ると寝不足になりそうだったので、原則9時までにしてある。
カミさんと二人して、リアルタイムであーだこーだ論評しながら楽しんでいるのだが、「いい演奏」を考えるいい機会になっている。
いいと思うピアニストは、まず音が違う。音が立っているというのか、一つ一つの音がきちんと鳴った上で、和音やメロディになっている。音質の違いは当然あるが、柔らかい音にしろ硬質な音にしろ、まずは楽器から音が立ち上がりこちらに伝わって来る。
逆に、あまり感心しない演奏の印象としては、音が浮ついているというか表面的な感じがする。とくに弱音の部分で、聞こえなくなる場合が多い。本人は気持ちを込めて弾いているつもりなのかもしれないが、音に芯がなくて伝わって来るものがない。
いずれも、画面やスピーカーを通してのことなので(現場で聴いていないので)、本当のところは分からないが、少なくとも違いは感じる。
演奏のレベルについても、技術の高低や上手・下手はそんなに分かるわけではないが、明らかに違いを感じる。
大まかに言うと、「リサイタル」レベルと「発表会」レベルである。まるでそのピアニストのリサイタルを聴いているような気分になる演奏と、コンクールで審査してもらうために弾いている(と感じる)演奏。
何が違うかといっても、言葉ではなかなか説明できないが、一つ思ったのは「音楽が聴こえてくるかどうか」ということ。物理的には「音」を聴いていることに変わりはないのだが、その音の向こうに「音楽」が聴こえる演奏とそうでない演奏とがある。
音楽が聴こえてくる演奏は、例えばベートーヴェンのソナタであれば、そのソナタの曲の中身?を聴いている。その上で、その演奏(解釈)が自分のイメージに合ったり、それ以上のものであれば感動する。
音楽が聴こえてこない演奏は、いつまでたっても「音」が聞こえている。というか、その音が気になって音楽を聴かせてくれない。音が乱暴すぎたり、弱すぎたり、…その原因はいろいろありそうであるが。
それと関連するのが、音楽全体の「構築」のようなこと。音楽が流れていく中で、その部分の弾き方がしっくりくる場合と、違和感を感じる場合とがある。後者の場合、当然そこで音楽の流れがとだえてしまう。
少し短いレンジでも同じようなことがある。わかりやすい例はベートーヴェンの後期ソナタかもしれない。
明らかに旋律が存在するのだが、音符は必ずしも連続して存在するわけではない。管弦楽のような作りなので、その流れの中で、いくつかの楽器が突然のフォルテで響いたり、旋律が別の楽器に移ったり、ピアニッシモの中で緊張感が継続して次に続いたり…。
そういう音楽が、短いフレーズごとにバラバラにされてしまうと、音は聞こえるが、大きなうねりのような音楽がまったく聴こえなくなってしまう。残念ながら、そういう演奏もいくつかあったと思う。
…などと、素人の勝手な解釈をしながら、競馬の予想ではないが「下馬評」を楽しんでもいる。
「音楽が聴こえる演奏」だと感じたのは、Lucas Debargue、Dmitry Masleev、Sergey Redkin、Ilya Rashkovsky の4人である。
私のイチオシは Lucas Debargue(ルカ・ドゥバルグ)。私の好きな作曲家、メトネルのソナタとラヴェルの「夜のガスパール」という選曲も気に入った。が、なんといっても、思わず引き込まれるような演奏に、論評も忘れて聴き入ってしまった。
Ilya Rashkovsky は "Round 1" で落ちると思っていたのだが、なぜか残り、しかも "Round 2" では見違えるような演奏を聴かせてくれた。いま思うと、 "Round 1" では相当あがっていたのかもしれない(音がうわついていた)。
ちなみに、本命と言われているらしい ゲニューシャス(Lukas Geniusas)は、私の印象ではあまりいいとは思わなかった。
まぁ、 "Round 1" での予想はほとんど外れたので、今回もあまり自信はないが…。
今夜(日本時間明日4時半)は、いよいよファイナリストが決まる。もうしばらく楽しませてもらえそうだ。短い期間に、レベルの高いいろんなピアニストのいろんな曲を聴けるのは本当に幸せだと思う。
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