「暗譜力」のようなものはあるのだろうか?
「暗譜力」とは?
暗譜するときによく言われるのは「指で覚えなさい」、つまり何も考えなくても弾けるようになるまで弾き込みなさい、ということではないだろうか。いわゆる「自動化」である。これは基本だと思われる。
しかし暗譜のメカニズムとしては、人間はいくつかの覚え方を組み合わせている、というのが実態のようである。「指で覚える」ことに加えて、「音で覚える」と「楽譜(のイメージ)で覚える」というあわせて3つの能力(運動・聴覚・視覚)を使っているらしいのだ。絵にするとこんな感じになる。
これ以外に「頭で覚える」(頭脳・分析的)をあげる人もいる。(→『ピアニストは指先で考える』:青柳いづみこ著) 楽典の知識や曲の分析によって「理屈」で覚えるのである。私自身は、この「頭で覚える」ことが中心になっているかもしれない。
また、図の中に両方向の矢印で示したように、これらは相互に影響しあっていると考えられている。
「暗譜力」を強化するには?
暗譜することが上記のようなことであると分かったとして、ではその能力を高めるにはどうすればよいのだろうか。
二つのアプローチが考えられる。ひとつは運動・聴覚・視覚のそれぞれを鍛えること。もうひとつは上の図の「矢印」(聴覚から運動など)の能力、たとえば音を聴いて指が自然に動くような部分を鍛えることである。
個別の能力を鍛えるのはむずかしそうである。「運動」の部分は毎日のピアノの練習そのものだと思われる。とくにハノンなどの機械的練習になるので、頑張るとしても時間はかかる。
視覚を鍛える。いちど見たら忘れない、という特殊能力をもつ人を除いて、これもむずかしい。同じように、聴覚を鍛えるのもむずかしそうである。やるとすればたくさん音楽を聴く、ということになるのだろう。
ということで「矢印」の部分に着目してみたい。
統合力で「暗譜力」を強化する
まず、「視覚(楽譜)⇔聴覚(音)」である。「楽譜⇒音(イメージ)」というのは、読譜力ということになる。ということは、この能力を高めるというのは「ソルフェージュ」の訓練ということになるだろう。また、「音⇒楽譜」の方は聴音ということになる。
「視覚(楽譜)⇔運動(指)」はどうだろう。「楽譜⇒指」は、楽譜を見たら自然に指使いや動かすイメージが浮かんですぐ弾ける能力、だとするとこれは「初見」力? ふつうの練習でも楽譜を見ながら弾くので、これも普段の練習でやるしかないのかも知れない。
「指⇒楽譜」はあまりないのかも知れない。運指のイメージから楽譜を思い浮かべることにはあまり意味がないようにも思える。
「聴覚(音)⇔運動(指)」については面白い話を読んだことがある。一流のピアニストになると、ピアノの音(音楽)を聴くと自然に指が動く、あるいは指を動かす神経が活動するらしいのだ。また逆に、指の形や動きをイメージすると、自然に頭の中に音が流れるのだそうだ。つまり、音と指とが自然につながっているということである。
そこまでの境地に達するのは無理としても、少しでも近づきたいとは思う。しかし、いろんな曲を大量に練習して弾けるようになること以外に、訓練の方法が思い浮かばない。
それぞれの「矢印」の能力を鍛えることは無駄ではないと思うが、結局は、基本の(機械的)練習、いろんな曲の練習、ソルフェージュ、聴音、などの普通にやるべきことをがんばるしかなさそうである。
とりあえずの練習方法
ここでめげては「大人の効率的な練習方法」の模索もくじけてしまうので、とりあえずの練習方法を考えてみた。
①楽典的な勉強をする
私自身は「頭で覚える」部分が多いと思うので、楽典的知識を増やす。
②音のパターンの経験値を上げる
いまやっている簡単な曲をたくさん弾く、伴奏などのパターンを勉強する。
③楽譜を見ながら音楽を聴く
効果のほどは不明だが「楽譜⇔音」のリンクが強化されそうである。
④ソルフェージュ、聴音(そのうち)
あまり得意な分野ではないので後回し?
こういう努力もしながら、とりあえずプレリュードを1週間以内に暗譜することを目標としたい。
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