久しぶりに音楽とは関係のない『2100年の科学ライフ』という本を読んでいる。もともと近未来のサイエンスとかが好きなので、実に面白い。読みながら「ピアノを弾くロボット」についての妄想が湧いてきた。
■ ヴァイオリンを弾くロボット
ご存知かも知れないが、トヨタがヴァイオリンを弾くロボットを6年以上前の2007年に発表している。
このロボットのすごいのは、本物のヴァイオリンを、人間が弦を押さえ弓を操るように弾くことだ。工作機械のようなメカ特有の動きではなく、人間のヴァイオリニストらしい動きをしているのである。ただ曲自体は、あらかじめプログラムされているようなので、楽譜は読めないのだろう。
この話を読んでいるときにふと思ったのが、ピアノを弾くロボットはないのだろうか、ということ。ヴァイオリンの次はピアノだろう。そして、ヴァイオリン・ソナタのピアノ伴奏もロボットが弾いていてもいいはずだ。
■ ピアノを弾くロボット?
しかし残念ながら、ネットで調べたかぎり、トヨタのヴァイオリニスト・ロボットのようなものはまだないようである。「テオトロニカ(TEOTRONICA)」というイタリアで作られたものはあるのだが、人間のような弾き方をするわけではない。指も19本もあるようだ…。
人間のような10本の指で、人間が弾くような動作をするロボットは難しいのだろうか?
ペダルも含めると両手両足を使い、88鍵の幅を自在に移動し、腕と手首と指と指先とをコントロールして、強弱やスピードの異なる微妙なタッチで弾き分ける。しかも10本の指は独立しているので、和音の中のそれぞれの音のタッチを変えるのも簡単にこなしてしまう。
…と、説明を書いているうちに、ピアノを弾くって大変なことなのだなぁ、とあらためて思い始めた。これらとそれ以上のことを世のピアニストはやっているわけだ。ピアノを習っている小学生でさえ、きっとすごいことをやっているのだろう。
ロボットにピアノを弾かせるのは、思ったよりむずかしいのかも知れない。
■ 未来のピアノ演奏は?
しかし、たとえば2100年にはどうなっているのだろうか。今は無理かもしれないが、80年もすればおそらくピアノを弾くロボットもできているに違いない。もちろん、それを作る価値を人間が認めれば、であるが…。
しかも、そのロボットは最高レベルの演奏技術を持っているはずである。アシュケナージやバレンボイムやシフや内田光子さん(すみません、私の好みのピアニストです…)などの音楽やテクニックを分析した結果がプログラムされているはずなので…。
そうすると、「人間が」ピアノを演奏することの意味は、現在と違ったものになっているのだろうか? 四苦八苦しながら、長い時間をかけてピアノを練習することに、未来の時代の人間は意味を見出すのだろうか? いい演奏を聴きたければ、お気に入りの曲をお気に入りのスタイルで(たとえばアシュケナージ風に)ロボットに弾かせればすむのだから。
いやいや、人間がピアノを弾くのは「弾きたいから、表現したいから」なのではないか。自分自身が弾くことに意味があるのではないだろうか。
考えてみれば、現代でも、聴くほうは好きなピアニストの演奏を選んで聴けばいいのだから。聴いて楽しむのと弾いて楽しむことは、(今さらながらですが…)違う楽しみなのである。
ということで、下手は下手なりに「弾くこと」自体を楽しむことにしたいと思う、のであった。(暖かくなってきた春の朝、日向ぼっこしながらの妄想でした…)
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