バッハに定評のある(個人的にも大好きな)コンスタンチン・リフシッツが、バッハのトッカータ全曲を新たに録音したようだ。
ところが、単純なトッカータ全集ではなく、ピーター・シーボーンという英国の現代作曲家の曲を織り交ぜた独特の構成の CD となっている。ちょっと面白い ♪
✏️コンスタンチン・リフシッツの新録音はJ.S.バッハ:トッカータ(全曲)、シーボーン:トッカータとファンタジア、他(2枚組)(Tower Records)
YouTube にプレイリスト(↓)があったので、通して聴いてみた。
何だか不思議な感覚だった。バッハのトッカータはとてもいいのだけれど、リフシッツにしてはややおとなしい印象かな?…と思ったのは、シーボーンの(よりメリハリのある)現代曲に挟まれていたからなのか?…どうかはよく分からない…。
シーボーンの曲は、ほどほどの「現代音楽」感で、いい感じのところもあるが、個人的にはまだ十分には消化できていない…。
ただ、バッハのトッカータとシーボーンの「トッカータ・ファンタジア+形容詞付きファンタジア」という組み合わせが交互に演奏されることに、思ったより違和感がなく、これはこれで面白いプログラムになっているような気もする。
このシーボーンの作品はリフシッツが依頼したもののようで、もともと、この CD の曲順のようにバッハのトッカータと織り交ぜて演奏することを意図したもののようだ。
リフシッツは 5月30日にトッパンホールでバッハを弾いているが、このときはバッハだけのプログラム(トッカータ BWV910~916、音楽の捧げもの BWV1079)になっている。
ピーター・シーボーン(Peter Seabourne、英、1960.7.9-)という作曲家は初めて知ったが、ちょっと面白そうなので、《鍵盤音楽史:現代》に追加しようと思っている。
プロフィールなど詳しいことはいずれ調べるとして、今回は私が個人的に気に入ったポイントをいくつか…。
一つ目は、変な話かも知れないが、一度作曲をやめていること。1989年(29歳)から 12年間も。自分の作品だけでなくその当時の音楽世界(the wider contemporary music world)を嫌いになり、共通点を見いだせなくなったことが理由だったようだ。
そして二つ目は、作曲を再開したときのきっかけが友人のピアニスト、マイケル・ベル(Michael Bell)とその弟子で、それ以来 "STEPS" というピアノ作品集を書き続けていること。おそらく今後も…。下記は本人の言葉。
"My ongoing anthology entitled STEPS is projected to run throughout my life, as a sort of 'traveling companion' "
その "STEPS" はすでに第 9巻までできていて、最初の 5巻は CD も出ている。そして、第 6巻 "Steps Volume 6: Toccatas and Fantasias" が、今回のリフシッツの新 CD となる。
第 7巻以降もいずれ CD が出る予定のようだ。
ちなみに、これまでに 15枚の CD がリリースされているようで、現代作曲家としてはかなり多いのではないかと思われる。
そして三つ目が、本当に素晴らしいと思うのだが、本人が自身のサイトで作品を公開しているということ ♪
作品に関する解説や、mp3 音源、そして「楽譜」!が公開されているのだ。楽譜は、このまま製本できそうなほど美しく読みやすい(↓こんな感じ)♪
もちろん、著作権はリザーブされているので、個人的な評価の範囲で使う必要がある。ちゃんと注意書きも書いてあるので、使われる方はご注意を。
PLEASE READ: THESE ARE NOT PUBLIC DOMAIN WORKS. ALL RIGHTS ARE RESERVED. PRINTED COPIES ARE FOR EVALUATION PURPOSES ONLY
そして、リフシッツが初演するまでは公開の場での演奏はしないように…という注意書きも書いてある。ということは、それ以前にこの楽譜は公開されていたのか…🤔
Public performance of this work is not allowed until Konstantin Lifschitz has presented the premiere, probably in 2019. However, players are free to explore it privately before then.
現代ピアノ曲を知りたい、場合によっては弾きたいと思っても、著作権の問題があって、なかなか楽譜を見たり入手することができない。
現代音楽の普及を妨げている最大の原因だと思うのだが、こういうやり方もあるのか!…とちょっと感心してしまった。もちろん、使う人たちの良識・常識が必要になるが…。
ちなみに、ピアノ作品はこのページ(↓)から "STEPS" を見ることができる。怖いもの見たさ?で、ちょっと試し弾きをしてみようかな?…などと思ってはいるが、きっと楽譜を見るだけで終わりそうかな…(^^;)。
✏️PIANO MUSIC(本人公式サイト)
おまけ。ピアノ協奏曲が 3曲あるので、いずれ聴こうと思っていたのだが、偶然にも Vimeo に第2番(2楽章構成)の初演映像があるのを見つけてしまった ♪…ので、つい聴いてしまった…(^^;)。
第一印象としてはなかなかいい ♪ 好きかも知れない ♪ 下記が本人の Vimeo のページで、ここからこの映像やその他を見ることができる。
✏️peter seabourne(Vimeo)
その他、参考にしたサイトは下記。
✏️Peter Seabourne(Wikipedia/英文)
✏️Steps piano cycle series (Seabourne)(Wikipedia/英文)
✏️本人公式サイト
ちなみに、最初にご紹介した CD『J.S.バッハ&シーボーン:トッカータとファンタジア』は 7月14日にリリースされることになっているが、アマゾンではなぜか「在庫切れ」となっている(予約受付ではなく…)。
★追記@2022/06/14:「7月15日発売予定&予約受付中」に変わっている。
【関連記事】
《リフシッツのバッハ、パルティータ全曲リサイタル♪》
3 件のコメント:
Thank you for your kind comments on my work and I am glad it stimulated your interest! (There is more on www.youtube.com/user/seabournecomposer and, as you saw, on my website www.peterseabourne.com including the 2nd concerto and many performances from the Steps series.)
The CD version of Konstantin's Toccatas and Fantasies recording unfortunately had a small delay in manufacture, I am told, but it should be available from 14th July in Japan. If you want it before then you can order directly from www.willowhaynerecords.com who will have CDs in the next few days. They ship internationally.
Best regards, Peter Seabourne.
Dear Mr. Seabourne
Thank you for your comment. It's a great privilege for me and my wife to get a comment from the composer himself!
I'm only a piano music lover, and I myself started practicing the piano when I retired 10 years ago.
I always want to know and listen to the piano music by contemporary composers. But for me, most of them are "difficult" to listen to or to enjoy the beauty of music.
I found that your "STEPS" are quite different when I first listen to the new CD(YouTube) by Lifschitz. The sound of the music was very fresh and new, but it's not "difficult" at all. I just enjoyed the beauty of the piano music.
Now, I'm very happy to enjoy your CDs on Spotify. I found all(vol.1 to 6) of "STEPS" there. I look forward to the CDs of "STEPS" vol.7 to vol.9, and new "STEPS" series!
Best regards, Pia.
A lovely message, Pia. Very touching in fact! All joy to you in your musical discoveries and pleased to have been one of them! Peter
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