昔、ちょっとナマ意気にも 《ピアノは生演奏を聴くべき5つの理由》 などという記事を書いたこともある。
でも、その「生演奏」はホントに「ナマ」なの?と思うような記事(↓)があった。
✏️The New Battle Over Acoustics in Performing Arts Venues
(演奏会場の音響に関する新たなバトル)
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この記事で初めて知ったのだが、10年ほど前からホールに電気的な音響設備を備えることが始まっているらしいのだ。音響設備とはマイクロホンとスピーカーのこと。
といっても、アナウンスのためのスピーカーとか、ロックミュージックなどで使う電気的な楽器や音響機器とは別物だ。
ホールの音響設計は基本的に「アコースティック」つまり電子装置を使わないものである(あった?)。音の伝わり方や反射・吸収・残響などを考慮して、ステージや観客席の天井や壁の形状・材質を決めたり、反射板などの設計をする。
ところがこの記事に出ているシステムは、会場のあちこちに沢山のマイクやスピーカーを埋め込み、それをコンピューターで制御するというものらしい。
基本的な原理は、この絵(↓)が分かりやすかった。ヤマハの「音場支援」というページからお借りしたもの。つまり、ナマの音とマイクで拾ってスピーカーから流す音をブレンド?して全体の音響を改善しようとするもの…のようだ。
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関連する記事を見ていたら、こんな成功例(↓)も見つかった。
✏️最新の音響テクノロジーで、魅力ゼロの施設が「人気のコンサートホール」に生まれ変わった
サンフランシスコ交響楽団などのリハーサルに使用されていた場所がとてもひどい音響だったのだが、電子的な音響システムによって素晴らしい演奏空間に生まれ変わった♪ という話である。
使われているのは「メイヤー・サウンド・ラボラトリーズ」の "Constellation" という音響システム。最初に紹介した記事にも出ていた名前だ。
ここでは、28個のマイクと85個のスピーカーによって「音を拾い→デジタル信号処理をし→スピーカーから音を出し→その音を再びマイクで拾い…」ということが行われる。
それにより、例えば「中世の大聖堂で演奏されていた曲」をあたかもその大聖堂で演奏しているような響きにすることができる。
サンフランシスコ交響楽団のコンサートでは、曲ごとに音響の設定を変え、曲と音響の多彩な組み合わせによってプログラムを構成している。それがすごい人気だそうだ。
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こうなると、元「理工学系」の興味が湧いてきて、もう少し調べたくなる…(^^)♪
具体例がないか探していたら、エストニアのタリン(Tallinn)にある Nordea Concert Hall(作られた当時は "NOKIA Hall" だったようだ…)の例( CASE STUDY )が見つかった。説明は難しそうなので、いくつかの絵だけ紹介する。
これ(↓)は、マイクとスピーカーの配置図(1階と天井)。小さい赤い丸がマイク、他は各種スピーカー。けっこう沢山ある。
これ(↓)は横から見た図。マイクが天井から吊り下げられている。
基本的には周波数(音の高さ)ごとの残響時間を調整するようだ。下の図はそのいろんな設定の例。室内楽はピンク色のゾーンが適しているらしい。
で、記事の最初に載せた写真は、実はこのホールの1階後方座席のもの。天井にスピーカーが見えている。おそらく埋め込みのマイクとスピーカーもありそうだ。
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Meyer Sound 社の "Constellation" については、日本の代理店サイトに日本語記事がある。もっと詳しいことはこちらをどうぞ。導入事例に日本のホールは載っていない。
✏️Constellation
なお、映画館用のシステムもあって、こちらは東京都立川市のシネマシティに導入されているようだ。
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さて、実際にはどうなんだろう? 確かに、オーケストラとか合唱なんかで「大聖堂」の響きを楽しむのはいいかも知れない。でも、ピアノには必要ないのかな…(^^;)?
最初に紹介した記事には、演奏家や指揮者、建築家や施工主からの根強い反対意見があると書いてある。ただ、デジタル写真だって結局受け容れられたんだから、この「デジタル音響」もいずれは…というのが記事を書いた人の意見のようだ。果たして…?
おまけ(私の意見):ピアノを弾いている人に、観客席に届いているのと同じような音が聴こえるようにすることには意味があると思う。3度ほど「ホールでグランドピアノ」を試弾した経験(↓)から…(^^)♪
→《ベヒシュタインの弾き心地 ♪》
→《「ホールで練習」してきた…(^^;)♪》
→《初スタインウェイの感想…幸せでした ♪》
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